日向坂46からおひさまへの最高のプレゼント “約束の彼の地”東京ドーム公演を振り返って

 「2024年3月のデビュー5周年を目前にした日向坂46にとって、2023年後半はある種の“試練の期間”だったのかもしれない」1年前の今頃、筆者は当時の日向坂46をこのように表現した(※1)。では、実際にデビュー5周年という大きな節目を迎えた2024年の日向坂46は、その試練の期間を乗り越えられたのだろうか。正直なところ、その試練は年末まで続いていたように感じる。春から夏にかけて齊藤京子や高本彩花といった、けやき坂46時代からグループを牽引し続けた一期生が相次いで卒業し、5月発売の11thシングル『君はハニーデュー』から始まった選抜制とそれによる“ひなた坂46”の誕生、そして加藤史帆や東村芽依、丹生明里、濱岸ひよりの4人が12thシングル『絶対的第六感』での活動をもって卒業。秋にはグループ初の副キャプテン制が導入され、三期生の髙橋未来虹が就任し、さらにこの夏から展開中の新メンバーオーディションによる五期生加入も控えており、日向坂46は今も大きな変化に立ち向かいながら、グループを建て直そうとしている最中だ。

 その一方で、ひなた坂46による定期的なライブ展開や四期生による日本武道館3DAYS単独ライブ、さらには念願だった宮崎での主催フェス『ひなたフェス2024』開催、四期生総出演による映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』公開など、精力的な展開も多く、さまざまな形でグループとしての強さをより確かなものへと固め続けてきた。

 そんな日向坂46の2024年の集大成を見せる場となったのが、11月19日から始まった全国ツアー『Happy Magical Tour 2024』だった。兵庫を皮切りに、福岡、愛知と全国をまわり、最後にたどり着いたのがおひさま(日向坂46ファンの呼称)との“約束の彼の地”東京ドーム。1年前、キャプテンの佐々木久美は「四期生を含む今のメンバーで、もう一度東京ドームに立つ」と力強く宣言したが、その目標を早くも達成させる瞬間が来た。今回は12月25、26日の2日間にわたり行われ、25日公演は“加藤史帆 卒業セレモニー”として実施。涙の瞬間も多々あったが、最終的には彼女らしいハッピーさが伝わるセレモニーとなった。

 続く26日は、日向坂46にとって激動の2024年を締めくくる千秋楽公演。クリスマスから1日過ぎてしまったものの、この日の日向坂46は先のキャプテンの言葉にちなんだ最高のプレゼントを届けてくれた。本稿ではこの26日公演について記していく。

 『Happy Magical Tour 2024』というツアータイトルからも想像できるように、今回のライブは“おばけホテルで繰り広げられる魔法のショー”がテーマ。ファンタジー要素の強いテーマは、前進グループのけやき坂46時代から踏襲されてきたものであり、かつ「おばけホテル」というキーワードは2020年末のクリスマスライブ『ひなくり2020~おばけホテルと22人のサンタクロース~』(※3)ともリンクする。ある意味では、グループにとって原点回帰的な内容と捉えることもできる。

 実際、ライブの冒頭で展開された寸劇パートは過去のけやき坂46〜日向坂46のツアーやクリスマスライブを彷彿とさせるものがあり、物語は正源司陽子と藤嶌果歩を中心に展開。魔法使いの見習い的ポジションの藤嶌は高所でのワイヤーフライングにもチャレンジするなど、非常に見応えのある演出も多々用意されていた。そんな藤嶌が正源司に魔法をかけると、パジャマから日向坂46の衣装に早着替えしたメンバーが登場。そのまま「君はハニーデュー」でライブ本編がスタートするという構成も、実に日向坂46らしい。

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