Suspended 4th、過渡期をパッケージした変化の作品 新たなサスフォーの完成に向けた現在地を語る

 Suspended 4thが、11月20日に2ndミニアルバム『STORMED』をリリースした。今作はフルアルバム『Travel The Galaxy』以来2年ぶりの作品。ドラマーの正式メンバーが不在の中で作り上げたミニアルバムとなる。

 個人の表現を意識していた前作を経て、全員で一つの楽曲に対し、どうアプローチしていくかを考えたという今作で「ようやくバンドになったのかもしれない」とメンバーは語る。「今が一番、追いかけるなら面白い時期」だという新しいサスフォーについて、現体制に至った経緯や今作の制作過程で起きた変化など、Kazuki Washiyama(Gr/Vo)、Seiya Sawada(Gt)、Hiromu Fukuda(Ba)の3人にじっくり話を聞いた。(編集部)

新しいサスフォーを見つけるための一枚

一一2年ぶり、3人編成となって初の取材です。まずはどんな経緯でこの形になったのかを教えてもらえますか。

Seiya Sawada(以下、Sawada):どんな経緯で……えーと、まず(前任ドラムの)デニスが抜けて、(平)陸が入って、陸がサポートになって。

Hiromu Fukuda(以下、Fukuda):……雑じゃない(笑)?

Kazuki Washiyama(以下、Washiyama):俺が喋りますね。えーと、まずデニスが抜けた段階で、いったんサポートを探したんですけど、でも気持ちとしてはやっぱりバンドで、4人でやりたい気持ちがあって。かつ、我々は名古屋なんで、名古屋近辺で探していこうと。で、ずっと自分がチェックしてた平陸っていうドラマーが浜松に住んでいて、距離も近いし一緒にやっていこうぜって感じで、正規メンバーとしてお願いすることになったんですね。

一一はい。発表があったのは2023年の2月でした。

Washiyama:そこから半年ぐらい一緒に活動して、そのタイミングで「CULT SPEAKERS」って楽曲も録音して。ただ、そのリリースと同時に彼はサポートメンバーに戻ることが決まったんですね。他のドラムの仕事もあるし、バンド的に足並みを揃えるのが難しくて。

一一平さんはソロ作品も出してますね。いかにもバンドマンではない。

Washiyama:そうですね。しかも普段の仕事ではアリーナツアーとか回ってたりするので、ウチらの活動とはギャップもあって。で、陸がサポートに戻った時点で、誰かひとりにこだわるのはやめて。それで、Shun Hakogi、Kentaro Yoshimuraっていう二人のドラマーにも叩いてもらおうと。その体制で今はやってます。

Kazuki Washiyama

一一この出来事、わりとダメージが大きいことだったんでしょうか?

Washiyama:そうですね。やっぱり活動自体がしづらくなってた。曲はいっぱい作ってましたけど、スタンスとしては4人のメンバーがいる状態で出したい思いもあったので。ちょっと出し渋ってた。

Fukuda:ドラマーが安定してないと、リズム隊としてもやり方が毎回毎回変わってくるから、その難しさは感じてましたね。あとは音源出してない期間が長くなると「サスフォー、何してんだろうな?」みたいに思われてしまうなって考えたり。なんか動くに動けない、言うに言えない、もどかしい期間でしたね。

Sawada:うん。人が抜けたり、そこから今後のこと話し合ったりするのってけっこうエネルギーを使うから。単純に大変だった部分もありつつ。ただ、いろんなドラマーの方と演奏できる、ポジティヴに考えればいい機会でもあって。実際にこの数年で個々もスキルアップしてると思います。

一一なかなか辛い状況の時、誰がバンドを引っ張っていくんですか?

Sawada:なんかWashiyamaが、気づいたら動いてる。

Fukuda:うん。気づいたら新たなドラマーも「こいつがいいんじゃね?」って提案が来たり。デニスの時もそうだったし、今回もそう。

Washiyama:コロナの時もそうだったかもしれない。まだ誰もやってないタイミングで、おそらく一番最初に配信ライブをしたと思うし。

一一2020年の5月、ゲリラのように配信をやってましたね。

Sawada:いきなりWashiyamaから「とりあえずここの工場に来い」って言われて。そしたら撮影のチームとかも現場に集まってて。

Fukuda:俺らは詳細聞かされてない(笑)。

Washiyama:そういうことをやりがちかもしれないですね。でも別にバンドを引っ張る、みたいな気持ちじゃないかも。「俺がやりたいからやる!」って感じ。

Fukuda:それ聞いて俺らも「わかった!」ってなる(笑)。

Sawada:言葉足らずな部分もあるが、まぁ結局は俺らも納得する。そこまでを把握されてる感じがするのはちょっとムカつくんですけど(笑)。でもなんか、いろいろ考えて動いてくれるのはWashiyamaですね。すごくありがたいし頼もしいなって思ってます。

Seiya Sawada

一一いいことです。あの技術力とキャラクターを持つデニスが抜けるって、かなり大きいことだから。不安はやっぱりあったと思うんですよ。

Washiyama:うん。彼が抜けたことによって、存在の大きさに気づいたところもあるし。ずっと一緒にいると気づかなくなってくるんだけど、今はまぁデニスに感謝、リスペクトって感じで。ただ「デニスがいないと成り立たないのか? デニスがいないと俺らじゃないのか?」っていうふうにはならなかった。そういうところまで一回見つめ直す期間だったのかな。

一一今回の6曲はデニス脱退後の曲ですか?

Washiyama:はい。全部デニスが抜けてから書き始めた曲。

一一いろんな扉を開けてみようっていう意思を感じる曲ばかりです。

Washiyama:まさに。3人だからビートにあんまり囚われずに書ける。ソングライティングの幅が広がったし、それをとりあえず全部見せていく。「どれがいいですか?」ってビュッフェみたいに(笑)。そういう意気込みもありましたね。新しいサスフォーを見つけるための一枚というか。

一一いくつか曲を挙げていきますね。最初の「HARD GRAVITY」はストレートな歌もの。しかも3分足らずでスパッと終わる。新しかったです。

Sawada:初めてWashiyamaから送られてきた時、本人的にはちょっと様子を伺う感じだったんですけど。でもメンバー含め、チーム的に「めっちゃいいじゃん!」ってなって。その印象のまま、特にいじらず、そのまま完成したのかな? これがたぶんデニスが抜けて一番最初に書いた曲。

一一あぁ、次の一歩という意気込みが伝わります。

Washiyama:たぶん、俺の感覚としては自分のソロに近い。4人じゃなくなって、いったんソロみたいに曲を書いてみる。そうすると新しいものも見えてくるんじゃないかなって。それこそこの曲、スラップとかもないし。

Fukuda:スラップはないね。

Washiyama:別に俺はスラップ好きなわけじゃないんで。

一一え、あれだけ作っておいて(笑)。

Washiyama:いや、プレイとしては好きだけど、でも自分の音楽を表現するならスラップがあろうがなかろうが関係なくて。ただ、Suspended 4thをやるって考えるならFukuda Hiromuのスラップは欠かせない。あとはデニスのクラシカルなビート、Sawada氏のカッティングも欠かせないと思ってた。そういうのを取っ払って書いた曲ですね。

一一ここまでシンプルなベースは初じゃないですか?

Fukuda:そうですね。多少不安もあったけど、でも、これもいいでしょうってまず自分を納得させて。あとはデニスが抜けたことによって楽器の音域も変わったんですよね。デニスのチューニングってかなり高い、カンカンした感じの音だったから。僕が5弦ベースを使って低い音域を出すと、ドラムとの乖離が出てきちゃう。今回はそこを考える必要がなくなって、5弦の、低い音域も使えるようになったし。だからベーシスト的には幅が広がってますね。

Washiyama:レンジの広がりとか、音楽的、音響的な表現の幅は、この曲に限らず全体に広がってると思う。

Hiromu Fukuda

一一新体制を感じます。続いては平陸さんと作った「CULT SPEAKERS」。これはわりと前作の延長というか。

Washiyama:そうですね。『Travel The Galaxy』のテンションを引き継いではいます。ただ、2023年にクラウドファンディングで我々のプライベートスタジオを作ったんですよ。そのおかげで特殊なエフェクターとか機材を使うことができて。練習の段階からデカい音で、かなり解像度の高い作業ができて。だから、前作を超えるような曲を作ってみようっていう意識で書いた曲ですね。

一一専用スタジオができたことは大きいですか?

Fukuda:めちゃめちゃデカい。やっぱ時間を気にせずいつでも音を出せるので。練習の頻度も増えましたし。前は練習も兼ねて路上ライブ、みたいな感じだったから。スタジオができたことで、ちゃんとバンドでじっくり音を聴いたり作ったりできる。Suspended 4thの歴史上一番デカいことかもしれない。

一一そうですよね。路上で始まったバンドが家を持っちゃうんだから。

Washiyama:だいぶ飛び級ですよね(笑)。でも、そのぐらい期待していただいてるんだなって、クラウドファンディングを通してわかったので。まぁその期待に応えるためにも、いい音楽を提供しなきゃ、と。

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