go!go!vanillas『Lab.』全曲レビュー:ジャンルの混交と抜群のキャッチーさ、音楽実験の果てに生まれたアルバム
6.Leyline
中盤にどっしり構えるミドルチューン。荘厳なチェロの旋律から始まるこの曲は曲調やバンドアレンジにどこかThe Beatlesを想起させる。特にジェットセイヤ(Dr)のドラムパターンやスネアのサウンドにそれは顕著だ。牧が書くメロディも広く英国的と呼ばれるラインを持っている。気になるのは歌詞。冒頭の〈光と闇が縺れた/鳴りっぱなしのサイレンと人肌の熱が〉や〈叫ばなければ 消えないよ〉といった情景は何を示すのか。サビの〈どうすれば認め合える二人になる〉と連関されると、どうしても現在進行形で行われている戦争、思想信条の違いによる断絶が想像されてしまう。ちなみに「Leyline」とは古代の遺跡を結ぶ直線を指すらしく、人間の大元ってどんなだったんだろう? と過去に思いを馳せ、今を顧みるイメージが沸く。もちろん、聴く人の数だけイメージはあるはずだ。
7.Super Star Child
少しシリアスになった後はパワーで押すロックンロールが待ち受ける。イントロで聴けるロマ音楽風のギターリフが新鮮だが、全編ほぼ痛快なストロークでグイグイ前進していくシンプルなアレンジが、凝った構成が続いてきた後だけに素直なアンセムとして響く。それはコーラスというより合唱と呼んだ方がいいパート然り、勘がいい分、いろんなことに気づいて一人で落ち込んでしまう人を応援する歌詞然り、総合力で聴く人を励ますこの曲の構造ゆえだろう。バニラズからの大きな愛の歌だ。
8.Persona
アルバム終盤に不穏な空気を放つのは目下オンエア中のドラマ『Qrosの女 スクープという名の狂気』(テレ東系ドラマプレミア23)オープニングテーマとして書き下ろした先行配信シングル曲。ドラマは週刊誌記者が謎の女を追うストーリーだが、誰もが演じる社会的な顔=ペルソナを持たざるを得ない現代、誰もが愛とヘイトの両方に苛まれる状況をシニカルに描く。うごめく感情やクライムサスペンス風の物語をうねるマンチェビートに映す1番から2Aまでの展開、そこから速いスカのビート、ホラーチックなウワモノの追加、追走劇を思わせる8ビートへと目まぐるしく変化するメンタルブレイクな構成も見事。
9.平安
ロンドンレコーディングかつ移籍第二弾のシングルだが「SHAKE」とは全く異なるベクトルを持つ、濃厚なアルバムの中でも極めて強い存在感を放つ曲。録り音はUKの空気を含みつつ、曲の構造はUSのインディーポップやエレクトロポップの影響も感じるリフやメロディを持ち、グルーヴは主にアコギのカッティングが生み出しているというハイブリッドがかなりユニーク。しかも歌メロのキャッチーさは中毒性が高く、〈君も渦中〉〈源氏名に繋がれたままで死ねるか〉という、今のこの閉塞した世界で息苦しい思いをしている全世代の叫びを文字通り、声に出して歌わせてくれる。
10.Moonshine
実験的な音楽の旅の終わりは彼らのルーツであるカントリーやシンプルなロックンロールをポップに昇華した、らしい1曲。4リズムと井上惇志のピアノがすぐそこで合奏しているような一発録りっぽい体感を醸すのだが、果たしてどうだろうか。シンプルで素のバンドサウンドに乗せて歌われるのはバンドという運命共同体にも取れるし、運命的な出会いを果たした二人にも取れるし、バンドとファンの関係にも取れる。いずれにしても、誰に後ろ指を指されても、間違いを犯してもこの旅は終わらないということだ。リラックスしたムードにむしろバンドが蓄えた迫力を見る。
本作リリース週には両国国技館でのフリーライブが開催され、その後、来年にかけてライブハウスとホールツアーへ。また、2025年のアリーナツアーは日本武道館2Days、4月20日の大阪城ホールどちらも完売している。ライブを通して『Lab.』の楽曲がどのように変化していくのか、ここから先の研究成果も実に楽しみである。
■リリース情報
『Lab.』
2024年11月6日(水)リリース
・初回限定盤:CD+Blu-ray "Lab. STUDIO LIVE"/PCCA-06340/5,500円(税込)
・通常盤:CD Only /PCCA-06341/3,630円(税込)
特設サイト: https://gogovanillas-lab.com
購入:https://lnk.to/ggv_Lab._CD2
<収録曲>
01.Lab.
02.HIBITANTAN
03.クロスロオオオード
04.来来来
05.SHAKE
06.Leyline
07.Super Star Child
08.Persona(10月9日先行配信 テレ東系ドラマプレミア23『Qrosの女 スクープという名の狂気』オープニングテーマ)
09.平安
10.Moonshine
<Blu-ray “Lab. STUDIO LIVE”>
初回限定盤のみに収録。「Lab.」をコンセプトにアルバムより数曲撮り下ろし。こだわりのSTUDIO LIVEをお届けします。
Lab.STUDIO LIVE teaser:https://youtu.be/DgyL1_vdQbk
収録曲
01.SHAKE
02.平安
03.来来来
メンバーのソロインタビューに加え、ライブのアフタートークも収録。
<ADDITIONAL MUSICIANS>
井上惇志 (showmore):Keyboards, MPC
Takumadrops:Keyboards
曽我部泰紀:Tenor Saxophone
■公演情報
『go!go!vanillas Lab. TOUR 2024-2025』
・ライブハウス&ホール編
2024年
11月27日(水)東京・Zepp Haneda
11月28日(木)東京・Zepp Haneda
12月4日(水)大阪・Zepp Osaka Bayside
12月5日(木)大阪・Zepp Osaka Bayside
2025年
1月18日(土)静岡・静岡市民会館 大ホール
2月7日(金)愛知・Zepp Nagoya
2月8日(土)愛知・Zepp Nagoya
2月14日(金)福岡・Zepp Fukuoka
2月15日(土)福岡・Zepp Fukuoka
2月22日(土)石川・本多の森北電ホール
2月24日(月祝)新潟・新潟テルサ
3月2日(日)北海道・Zepp Sapporo
3月20日(木祝)秋田・秋田CLUB SWINDLE
3月22日(土)宮城・仙台GIGS
3月29日(土)長崎・ベネックス長崎ブリックホール
3月30日(日)大分・別府ビーコンプラザ フィルハーモニアホール
4月12日(土)広島・広島 上野学園ホール
4月13日(日)香川・サンポートホール高松 大ホール
・アリーナ編
2025年
3月8日(土)東京・日本武道館 ※SOLDOUT
3月9日(日)東京・日本武道館 ※SOLDOUT
4月20日(日)大阪・大阪城ホール ※SOLDOUT
■関連リンク
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