『ブレイクマイケース』こだわりのサウンドに迫る ハーフアニバーサリー記念対談:プロデューサー×コンポーザー

特務部のBGMで苦戦したキャラクターとは?

——初期実装ではどれくらいの楽曲を作られたのでしょうか。

YiU:パズルBGM3曲と、メニューのキャラクター選択画面でスライドする時に流れる楽曲の、特務部全員分の曲を作りました。

——パズルBGM、そして恩田灯世、新名有、神家、麻波麗の4人分のキャラクター選択画面での音楽とそれぞれの曲を同じジャンルの中で住み分けさせるのは大変ではなかったのでしょうか。

YiU:パズルBGMについてはいただいたリファレンス曲をなんとなく分類して、作りながら方向性ごとに住み分けしていきました。ですが、3曲作らないといけなかったので、1曲ずつ作りながら次の曲についてプロデューサーさんをはじめとしたスタッフの皆さんと相談しながら調整していきましたね。キャラクターごとのBGMについては、キャラクターの資料を大画面に表示して眺めながら「この顔だとこの音じゃないなぁ」とか考えながら作っていました。

——特にこの4人の中で苦戦されたのはどのキャラクターですか?

YiU:ええと、麻波麗くんだったかもしれないです。

プロデューサー:えぇ! 意外です(笑)。

YiU:設定をしっかりと読ませていただいて、どうしたら麻波くんっぽくなるんだろうというところがなかなか音にしにくかったというか。ほかのキャラクターは割と「ここだな」というところが掴めたのですが、麻波くんは意外と苦戦しました。

プロデューサー:『ブレマイ』って人物のリアルさを大切にしているんです。Aporiaのスタッフたちはいい意味でアイコニックではないというか。この人はインテリです、この人はツンデレです、のような単純でわかりやすいキャラクターに留まっていない、複合的で奥行きのある個性をもつ人ばかりなところがAporiaスタッフたちの特徴だと思うので、その点では音楽家を悩ませがちだな、という感覚はありました。

【ブレマイ】AporiaスタッフPV『麻波 麗』編

——キャラクターが存在して、そこから皆さんにサウンドを発注していく。21色のサウンドイメージを持っていらっしゃったんですか?

プロデューサー:当初は21人21色のサウンドをセッティングできれば最高! と考えていたのですが、先ほど部署ごとのサウンドデザインの話でも述べたように、音楽ジャンルが「記号」として感じられることに面白さを見出したいと考えていた中で、実際にユーザーさんが「この曲は●●っぽいな」と聞き分けられるのは5、6種類が限界だと思いました。ですので、スタッフ一人ひとりの個性を描くにあたっては、そのスタッフが所属する部署に割り当てられた音楽ジャンルの範疇で、明るい曲にするのか、暗い曲にするのか、テンポをどうするか、など雰囲気を指定することで表現しました。「ジャンルで部署を、音楽的な内容でキャラ性を」表現するということですね。

——プロデューサーさんは楽曲のオーダーについて苦労されたことはありましたか?

プロデューサー:複数の作曲家に依頼していますので、例えば「強行部の曲」を発注するときに2人の作曲家に全く同じイメージを伝えると、似たようなトラックが届いてしまったこともありました。同じ部署に同居する作曲家同士が、フレーバーの違う楽曲を作ってくださるようにディレクションすることが少し難しかったです。

——1つの部署にお一人、ということではなかったんですね。

プロデューサー:そうですね。複数の部署にまたがってお願いした方もいました。ユーザーが部署ごとに「この曲は●●部だ」とわかるようにしたいという想いとバリエーションをつけたいという意識は時に相反することもあるので、そこも難しかったですね。

“断ち切るべき問題”ーーメッセージを込めたパーソナルソング

——そして、本作には“パーソナルソング”があります。キャラクターが歌唱する楽曲を制作されたのは、どういった経緯からだったのでしょうか。

プロデューサー:音楽に力を入れるタイトルとして、歌という媒体を活かさない手はないだろうと思いましたので、彼らの魅力をボーカルソングで表現したいという構想は早い段階からありました。そんな中で「パーソナルソング」は、ストーリーを読んで皆さんが気になったスタッフをさらに好きになっていただくとともに、「もっと知りたい!」という気持ちを掻き立てるようなコンテンツを目指して制作しました。単なる自己紹介ソングに終始するのではなく、それぞれのキャラクターが抱える“断ち切るべき問題”の存在を感じさせるような、今後の深掘りに繋がるメッセージを全ての楽曲に込めています。

【MV】Believe in yourself - 皇坂逢 (CV. 古川慎)

——なるほど。そんな『ブレマイ』ですが、パーソナルソング第二弾が発表されましたね。

プロデューサー:そうなんです! 先日の生放送で発表させていただきましたが、パーソナルソング第二弾では、第一弾の楽曲で伝えきれなかった別の側面を見せていきたいと考えています。1曲目は特務部の新名有から公開していきますが、1曲目に公開させていただくのは、特務部・新名有の『Code:20 -Until that day-』です。第一弾の彼のパーソナルソング『青に染まる』は、誰かへの感謝を伝えるような、あるいは未来に向けての誓いのようなメッセージソングでしたが、今回の新名の曲は、何物にも染まらないような、少し残酷さすら感じる彼の冷たいイメージを前面に出していて、第一弾とのギャップを感じられる1曲に仕上げました。また、第二弾ではYiUさんもパーソナルソングを書いてくださっていますよ!

——YiUさんはパーソナルソングを書かれる際にはどんなことを意識されましたか?

YiU:その曲で“何がしたいか”というところは意識しました。キャラクターごとに伝えたいコンセプトが異なっていますし、「このキャラはパーソナルソングの中でどうしたいのか。何を伝えたいのか」を資料を読み込みながら、どういう形で、どういう音で表現したら正しくユーザーさんの元に届けられるかを考えるようにしています。ぜひ、そこを感じながら聴いていただきたいです。

——さらにYiUさんは夏イベント「Reflection 夜空に満つ光芒の華」のBGM「Echoes」を作られました。この曲を作った際にはどのようなことを意識されていたのでしょうか。

YiU:ローンチされてからしばらくした後に「イベント曲を作ってください」とご連絡いただいたのが、この「Echoes」でした。イベント曲を作らせてもらえるのか、とびっくりしたのですが、夏祭りイベントの楽曲だったのでいろいろと模索していきました。夏やお祭り、花火というキーワードからはすごく明るい方向性にもできるし、しっとりもできるし、どの方向性にしたらいいのかと考えが分散してしまったのですが、プロジェクトの皆さんと相談をさせていただいき、最終的にしっとり系でいこうとなりました。あの曲はユーザーさんにも喜んでいただいていたということで嬉しかったです。

——音色や構成にもこだわられたかと思いますが、楽曲のポイントを教えてください。

YiU:今回はとにかく“フレーズ命”で作りました。「Echoes」はほとんど同じフレーズの繰り返しになっているのですが、そのフレーズを使ってどれだけ物語性を曲に持たせられるかを意識しています。だから曲のはじまりも最後も同じフレーズなのですが、最後だけギター1本にして、エフェクトも切って、リバーブもかけずにあえてドライな音にしました。祭りが終わって、花火大会も終わって、自分の部屋に帰って1人寂しく夏を思い返している……というイメージになるといいなと考えていました。

プロデューサー:ああ、いいですねぇ。そういうことだったんですね。

YiU:冒頭はお祭りや花火大会に向かっているのを遠くから眺めていて、実際に自分も花火を見て、そして1人帰宅するというのを想像しながら作った曲です。

プロデューサー:そういうときの気持ちを音にして想像したら、確かに、「リバーブ」は掛かってないですよね(笑)。あの曲のリラックス感はそこからきているんですね。目から鱗です。

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