TRIPLE AXEはロックシーンへのカウンターであり高め合うホーム 濃密な12年間を辿るフロントマン鼎談

「まだ広げられるって思う部分は、常に変わってない」(Masato)

ーー過去のインタビューでMasatoさんが「俺らの世代に後から追随してくるバンドがいなかった」「憧れにくい音楽だと思う」と話されていたことがあったんですが(※1)、2020年代に入った今は、YOASOBIにせよPaleduskにせよ、新しい形でTRIPLE AXE世代に影響を受けたミュージシャンが第一線で活躍していて。2000年代後半から粘り続けてきた皆さんの功績がポップミュージックを動かしている時代だと思うんですけど、そこに関してはどう感じているんでしょうか。

MAH:うーん……俺らが揃って『京都大作戦』に出たのが2010年だけど、SiMとしては2008年に1回出ていて。その年はホルモン(マキシマム ザ ホルモン)も出ていたし、PTP(Pay money To my Pain)もドーンときていた頃で、ラウドな音楽とかシャウトボーカルに対して、フェスのお客さんがじわじわ慣れ始めていた時期だったんですよね。そこに俺らみたいな若手3バンドで突っ込んでいったら「めっちゃいい!」みたいな感じになって、シーンがガーッとできていって、一時期、高校生のやる音楽がラウドロックになったんですよ。それから十数年経って、「あの頃SiMのコピバンやってました」みたいな子とようやく今になって出会うんだけど、やっぱり1周するのにそれぐらい時間がかかることなんですよね。そう思うとしょうがないのかなとは思いつつ。ただ、俺らがいい感じに上り始めた頃、同世代にもラウド系のバンドが一気に増えていって、それまでやってた音楽性をガラッと変えてまでラウドに寄せてきたバンドもいっぱいいたんですけど、そいつらのことを俺らは助けてあげられなかった。いきなりメジャーのレコード会社もそういうバンドをどんどん買い漁っていて。

猪狩:あー、めっちゃわかる。

MAH:あったよな。結果、みんないなくなっちゃって。だからやっぱりシーンを作ったとは言えないのかな……TRIPLE AXE全体とか、SiM、HEY-SMITH、coldrainそれぞれはすごい戦ってたけど、そういう意味で周りは助けられなかった気がしているので。

Masato:俺らが『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』みたいなフェスのメインステージまで行っていたら、“枠”を変えられたんじゃないかなって思うことはある。他のステージのラウドバンドの枠を増やして、同世代から下の世代のバンドまでチャンスが残るようにして、「ラウドのシーンがあまりにもデカいから、これくらいは枠を用意しておかないと」ってなる感じが今でもあればよかったんですけど、さすがに減ってはいるのかなって。日本のパンク勢ってどれだけ時間が経っても、「フェスにいなきゃ!」という枠になっているから、そこまでして初めてムーブメントとして残るんだなって思うので。ラウドについては、そもそももう一段階デカくしていけなかったから(新しいムーブメントが)生まれなかったのかなって、今でも思うところはありますね。

ーーとはいえ、今だったら打ち込みで激しい音楽を作るソロのクリエイターもたくさんいて、その影響源を辿ったときにTRIPLE AXEの3バンドの存在って絶対に大きいと思うんですよね。バンドシーンのみならず、粘ってきた功績は間違いなく様々なところで表れ始めてるんじゃないかなと。

MAH:バンドを始めること自体、前よりハードルが上がっているじゃないですか。自分だけでも大変なのに、メンバーを集めなきゃいけないし。昔みたいにスタジオにメン募とか貼ってるのかな?

猪狩:あるよ。昨日も見た。

MAH:でもなかなか難しいじゃん? 今はスマホにGarageBandが入っているような時代だから、当然バンドをやるよりも1人で音楽を作った方が早いし。それは時代の流れであってバンドのせいではないからしょうがないと思うけど……でも、そういうヤツらだって俺らが続けている姿を見ているとは思うんですよ。どっかで俺らの新曲を聴いたときに、「うわぁ、コイツら変わってねえ」「あの頃と同じように歌ってるじゃん!」とか、そうやって繋がっていってくれたら嬉しいですけどね。

Masato:それが辞められない理由になってるよね。まだ行ける、まだ広げられる、まだ影響力を強くしていけるって思う部分は、常に変わってないと思う。

MAH:また次回TRIPLE AXEをやるよっていう時に、「そりゃあ行かなきゃ」ってみんなが思う状態に保っておかないといけないからね。だから今まで以上にSiMを頑張るしかないですよ。俺らがサボってたら、TRIPLE AXEをまたやっても「HEY-SMITHとcoldrainのツーマンがいい」とか言われちゃうから、そうならないように引き続き高める。シャボンディ諸島で会おう、みたいな。

ーー(笑)。猪狩さん、Masatoさんはいかがですか。

猪狩:全く同じ意見です。シャボンディ諸島では会わへんけど(笑)、俺らがホンマに直近で考えてることは、(年内でライブ活動を休止する)かなす(Tb)が帰ってくるまで頑張るっていうことだけで。バンドとして少なくとも同じ位置にいるか、さらに上げていけるようにするために、とにかく頑張る。目の前の目標しか今はないです。

Masato:俺らもまたTRIPLE AXEやるとなったときに、一番楽しんでるバンドでいられるように頑張るだけです。

MAH:これだけは言っておきたいのが、これ以上やりたくなくてラストツアーにしたわけじゃないってことで。“置きに行ったTRIPLE AXE”じゃなくて、かっこいいTRIPLE AXEであり続けるために一旦ラストにするっていう。むしろTRIPLE AXEをやりたくて、続けたいからこその一旦のラストなので、それだけは読んでる人にも伝わってくれたら嬉しいなと思います。

※1:『MUSICA』2017年10月号

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