櫻坂46 井上梨名&村井優、秘めた葛藤と悔しさを力に “BACKS”というもう一つの可能性と進化を語る

 櫻坂46が10枚目のシングル『I want tomorrow to come』をリリースした。リアルサウンドでは、本シングルのBACKS楽曲「僕は僕を好きになれない」のセンターを務める村井優、同楽曲のフロントメンバーの井上梨名にインタビュー。楽曲に込められたメッセージやレコーディング・MV撮影の裏側について話を聞いた。「選抜から外れたことは悔しさがありました」といった率直な気持ちとともに、櫻坂46としてのBACKSの進化、グループ全体での新たな可能性、Buddiesと見たい景色について二人に語ってもらった。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

テーマは“蝶” 「僕は僕を好きになれない」MV撮影秘話

──今回のBACKS楽曲「僕は僕を好きになれない」を最初に聴いたとき、どういう印象を持ちましたか?

村井優(以下、村井):「僕は僕を好きになれない」というタイトルのインパクトが強かったですし、歌詞も私自身共感できる部分がたくさん含まれていました。例えばこのお仕事をしていると、表に出る機会が多いからか自分を取り繕ってしまったりすることもあり、いろいろな自分がいることに葛藤することがあって。そういう自分のことを好きになれないときもあるんですけど、この曲を聴いて、そんな取り繕ってしまう自分も“本当の自分”なんだと、ネガティブさをポジティブさに変えてくれる力強さが伝わってきて、改めてこの曲を歌えることがすごく嬉しかったです。

井上梨名(以下、井上):私は客観的にこの歌詞を読んだときに、「この主人公は心に影を持っているな」と感じて。その部分を、今まで櫻坂46の楽曲でやってきた経験を通じて、しっかりと表現できたらいいなとイメージしながら聴きました。

櫻坂46『僕は僕を好きになれない』

──櫻坂46の楽曲ではいろんなタイプの主人公が表現されてきましたが、井上さん的には過去のどの楽曲の主人公と近いと思いましたか?

井上:ちょっと違うかもしれないですけど、「BAN」はこれがもう少し強くなったバージョンみたいな印象です。でも、新しい感覚のほうが強かったです。

──メロディもそうですけど、エモーショナルさが強い曲構成なので、気持ちを乗せて歌うことを求められたのかなと思いますが、レコーディングはいかがでしたか?

井上:最初に(村井)優ちゃんのソロから始まって、次が私のソロパートで。ソロパートが多い曲なので、自分の歌割りにめちゃくちゃ集中していました。何回も録り直したよね?

村井:録り直しました。自分が納得いくまで歌わせてもらえたので、私も何度もチャレンジしました。

井上:気持ちが乗ってくると、言葉の表現の仕方も全然違ってくるので、いろんな歌い方を自分の中で試してみたくなりました。あと、サビのリズムが個人的に少し難しくて、ボイトレの先生にも「こことここのリズムはちょっと違うから」とよくサビの部分で指摘されることが多かったので、個人的には苦戦した部分かなと思います。

村井:私は歌い出しを務めていますが、聴き手を惹きつける重要な役割だと思うので最初は緊張しました。私のパートは〈人の心にその扉はある〉というフレーズなんですけど、普段人には見せていない自分の心の中だけにある部分を表現していると思い、そっと静かめに、温もりや優しさを意識して歌いました。

──歌い出しを担当するって、なかなか経験できることではないですものね。

村井:しかも「この曲を聴きたい」と思ってもらえるかどうかは、その歌い出しにかかっているとも思うんです。だから責任重大だなと感じていたものの、こういう役割を任せていただけたこと自体は素直に嬉しかったです。

──最初に曲を惹きつけるための重要なパートであると同時に、その曲のカラーを作るうえでも大切な役割を果たすわけで。

村井:冒頭はそっと歌ったと言いましたけど、その一方でサビになると力強さが一気に増して、全員の声が重なったときのパワフルさと厚みが本当に気持ちよくて。そういうところも大好きです。

村井優

──表題曲ももちろんですけど、BACKS曲もメンバー構成が変わることで、毎回いろんなタイプの曲調で新しい側面を見せている。前作の「愛し合いなさい」ともまったくタイプが異なりますものね。

井上:そうなんです。なので、Buddiesの皆さんも初めて聴いたときは驚いたんじゃないかと思います。

──この曲、MVも映像美が伝わる作風で素晴らしかったです。和のシチュエーションは櫻坂46というグループカラーには合っていると思いました。

村井:今までにはなかった感じで、また新鮮でした。

村井:しかも、畳の上で結構激しめのダンスを踊っていて。そこもシチュエーションとのギャップがあって面白いんじゃないかと思います。

井上梨名

──実際、畳の上であんなに激しいダンスを踊るのは大変だったんじゃないですか?

井上:メンバーはみんな優しいので「畳を傷つけないかな?」と、自分のことよりも畳の心配をしていました(笑)。確かに滑りやすくて、特に1サビの振り付けは普段のダンスレッスンの床だと滑らずに上手くできるんですけど、畳になった瞬間に全然上手くいかなくて、その場その場で対応しながらやっていました。

──全体的に床に這いつくばる動きが多いですよね。

村井:それは、このMVが蝶をテーマにしているからなんです。芋虫から蛹になって、蝶に孵化するという物語があるんですけど、芋虫のように這いつくばりながらも大空に羽ばたきたい、成長したいという思いをみんなで表現しているのがあの動きなんです。

井上:「今、私は芋虫なんだ!」って思い込んでやってました(笑)。あと、芋虫の時は緑がかった衣装を着ている設定なので、それを知ってから観てもらうとまた違った感じ方もあるかもしれません。

村井:ラストサビでは衣装にひらひらが付いていて、そこが蝶の羽をイメージしていて。振り付けだけじゃなくて、衣装も通してストーリー性を楽しんでもらえるんじゃないかと思います。

──個人的に印象的だったのが1サビのラストで、村井さんが長い布を持って走る場面。そこで井上さんのアップが映るんですけど、その表情がすごく綺麗で、このMVのハイライトのひとつじゃないかと思うんですよ。

井上:あのアップになる表情は、監督さんから「狂気的な感じを意識してほしい」と指示がありました。優ちゃんが最初に蝶になろうとしている人で、それに感化されて自分もそうなりたいと思ってからのあの表情なんです。過去のMVでも、「流れ弾」に参加したメンバーは同じような表現があったかもしれないですけど、私自身はそういう表現をしたことがなかったので初めての感覚でした。監督さんから「こういう感じで」とかいろいろ指導していただきながらやってみたんですけど、自分の中では正解が本当にわからなかったんです。でも、観てくださった方がいろんなことを感じ取ってくださったら、きっとそれが正解なのかなと思います。

──加えて、村井さんのソロダンスは本当に見応えがあって。

井上:あれはすごいですよね。

村井:ああいうブレイキンをやること自体が初めての経験でしたが、そういうことを任せていただけたこと自体が嬉しかったです。ただ、上手くやりたいと思ったものの、最初はなかなか難しくて。何度も練習しましたし、床が滑りやすかったこともあって大変さもありましたけど、なんとかカッコよく見せることができたのかなと思っています。

──村井さんの魅力があそこに凝縮されていると思いましたよ。

村井:嬉しいです!

井上:優ちゃんのソロダンスの撮影は毎回拍手が起こるぐらい、みんなが「めっちゃいい!」と絶賛していて。個人的に、足を回しているところが……。

村井:クルクル回るやつですね(笑)。

井上:そう! 優ちゃんは一生懸命で真っ直ぐな子だから、カットがかかるまで真剣に踊り続けるんですけど、足が回りすぎて止まらなくなったのか「うぉ~~っ!」って叫んでいて(笑)。その姿がめちゃくちゃ可愛いんです!

村井:あれはすごく体力を使う技で、3回ぐらい回しただけで息が切れてしまうくらい大変で。しかもそれを10数回やったので、声を出さないようにと思っても自然と「ううっ!」とか「うわ~っ!」とか漏れてしまって(笑)。

──映像ではクールさや憂いが伝わってくるものの、裏側はそういう雰囲気だったんですね(笑)。

村井:カメラが回ってないところでは、常にみんな笑ってました(笑)。

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