shallm、1stフルアルバム『charme』を経て気づいた音楽への信頼 「私はやっぱりハッピーエンドが好き」

 shallmが、10月9日に1stフルアルバム『charme』をリリースする。

 メインボーカルを務めるliaによるバンドプロジェクト・shallmは、昨年9月のデビューから、多くのタイアップソングのリリース、そして2度の主催ライブを経て、1stフルアルバムにたどりついた。「音楽と向き合う時間が多くなった」という今、liaは何を思うのか、何を見つめ、何を思いながら『charme』は完成したのか。1時間にわたって、彼女は語ってくれた。(編集部)

自分の気持ちだけではなく、「人のために楽曲を作ろう」

――2023年9月に配信シングル『センチメンタル☆ラッキーガール』でメジャーデビューしてからちょうど一年になりますが、ご自身にとってどんな時間になりましたか?

lia:メジャーデビュー前と比べたら、人前に出る機会も増えましたし、人と関わるのが圧倒的に増えた一年でした。自分の気持ちだけではなくて、「人のために楽曲を作ろう」という意識に変わっていった部分もあって。タイアップ作品に寄り添って楽曲を作ることで、自分の価値観が広がっていく感覚がいいなあと思いました。

――liaさんは今19歳で、音楽活動だけに集中して取り組めるようになった一年でもあったと思うのですが、その意味での変化は?

lia:音楽と向き合う時間はとても増えましたが、生活はとてつもなく夜型になりました。夜中の2時くらいから元気になるので。

――エンジンがかかるのがだいぶ遅いんですね(笑)。

lia:まったく時計を気にせずに生活をしたとしたら、私は夜中に起きているタイプの人間なんだろうなと思います。深夜になるとテレビ番組もあまりやってないですし、外も暗いので、自分とちゃんと向き合える感覚があって。明るいうちは、あまり気が入らないんです。

――逆に昼間は何をしているんですか?

lia:多めに寝ています(笑)。楽曲制作も夜の2時くらいから集中できるようになるんです。だから外が明るくなって、人が動き出してきた頃……朝の7時とか8時くらいに眠ります。そう考えると、全然起きてないですね、私(笑)。

――(笑)。liaさんの書くメロディはすごくキャッチーですよね。楽曲制作はどのように進めているのでしょうか。

lia:メロディはギターを弾き語りながら作っています。オケを打ち込んでからだと、音がいっぱいあって、メロディが出てこなくなるので。自分でかっこいいと思えるもの、覚えやすくて歌いたくなるものになるように、何回も「いや、これはダメだ!」って繰り返しています。

――メジャーデビュー後はタイアップ曲も多く、2024年1月にはTVアニメ『姫様“拷問”の時間です』(TOKYO MXほか)のOPテーマ「まっさかさマジック!」をリリースしました。liaさんはボカロやアニメソングからの影響を公言していますが、念願のアニメタイアップの経験は振り返ってみると、あらためていかがでしたか?

lia:もう本当に嬉しすぎました! まず、Netflixで配信されていることがすごいと思いませんか? だって世界のネトフリですよ! 世界中の『姫様』のアニメを観た人が、私の歌声を聴いてくれることを考えただけで、すごく嬉しかったです。私がアニソンを好きな理由は、その曲を聴いた時に「アニメを観ながらこんな気持ちになっていたなあ」というのを思い出すところで。「まっさかさマジック!」が『姫様』という作品と一緒に思い出してもらえる楽曲になっていたらいいなと思います。

――余談ですが、liaさんのお名前もアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』に登場するヒロイン、エミリアから取ったらしいですね。

lia:はい。(2022年の)9月23日にshallmの活動を始めたのも、エミリアの誕生日だからで(笑)。とにかく『リゼロ』が大好きです。

――『リゼロ』にはエミリア以外にも魅力的なキャラクターが多数登場しますが、そのなかでエミリアに惹かれた理由は?

lia:かっこいいからです。どんな困難に直面しても揺るがない正義感を持っているところ、自分の意志が変わらないところがかっこいいなとずっと思っていて。私もそういう人になりたいという想いもあって、自分の名前を“lia”にしました。

――アニメからの影響がやはり大きいんですね。

lia:アニメが本当に大好きで。楽曲制作もそうで、アニメを観て、刺激を受けて書いた曲がたくさんあります。ほとんどがそうと言っていいくらい(笑)。

――ワンマンライブの開催や『JAPAN JAM 2024』『METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2024』といった大型フェスへの出演も、この一年での大きな経験だったのではないでしょうか。

lia:はい。それまではライブのやり方を深く考える機会もあまりなかったんですけど、この一年でどうしたら来てくれる皆さんの気持ちを盛り上げられるかを考えるようになりました。最近は次のワンマンライブ(2025年3月1日開催『shallm 3rd Live 決起集会』)が楽しみで、イメトレをいっぱいしていて。「ここはこう歌って、こういうことを言いたいな」ということが頭のなかでは出来上がっているので、いつでもライブができる状態です。

きっと心が動く瞬間は音楽しかない、それなら人生を賭ける価値がある

――1stフルアルバム『charme』には、メジャーデビュー以降に発表してきたすべての配信曲を含む全13曲が収録されています。ひとことで表すとしたらどんな作品になりましたか?

lia:いろいろな気持ちに寄り添えるアルバムになっていたらいいなと思ってます。私はRADWIMPSさんの『RADWIMPS 3〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』というアルバムのタイトルが好きで、無人島に行ったとしてもこれ一枚あれば大丈夫! みたいな。毛色の違う楽曲が集まったこの『charme』も、そんなアルバムになったと感じています。

――新録曲も複数収録されていますが、ご自身の楽曲をアルバムとしてまとめるうえでのこだわりはありましたか?

lia:アルバムをリリースすることは以前から見据えていたので、それを念頭に置いてこれまで過ごしてきました。でも、アニメやドラマに寄り添って楽曲を作ったり、6カ月連続配信リリースのために楽曲を制作していくうちに、「これをどうアルバムにしよう?」と悩むようになって。そのなかで、アルバムの点と点を繋ぐ楽曲として、リード曲「暴動」を新しく作りました。

――どういう意味合いで点と点を繋ぐ楽曲になったのでしょうか。

lia:自分の楽曲をあらためて俯瞰して聴いた時に、どれも“自分”や“他人”、“社会”に対して戦っているように感じて。それは、私は自分の心が動く瞬間に曲を作っているからなんだと気づいたんです。私のルーツのひとつでもあるボカロを初めて聴いた時の気持ち、「音楽がやりたい」「音楽で生きていきたい」と心が動いた時の気持ちを込めたのが「暴動」なんです。shallmとして最初に発表したオリジナル曲「夢幻ホログラム」も、Adoさんのステージを観て心が動いた際のことを書いた曲だったので、そことも繋げたくて。

――そのお話と、タイトルにもなっている「暴動」というやや物騒なモチーフが、liaさんのなかでどう結びついていますか?

lia:私はのんびりと生きてきた人間で、あまり「夢を追いかけるぞ!」みたいなことを考えるタイプではなかったんです。普通に学校に行って、普通に就職して……という人生をイメージしていたけど、ボカロを聴いて「音楽をやりたい!」という選択肢が生まれた瞬間に、自分のなかで戦いが起こった感覚があって。冷静な自分と熱くなっている自分の戦い――心のなかに生まれた違和感を歌にしたのがこの曲なんです。もし、聴いてくれている人にもその気持ちがあるのなら、心のなかで「暴動」を起こしてくれるといいなと思っています。

――その意味では、liaさんが音楽を志した時の心の動きをそのまま表現した曲なんですね。liaさんがいわゆる「普通の人生」ではなく、「音楽の道」という選択肢を選んだ決め手は何だったのでしょうか?

lia:私は無気力なタイプで、学校に行くのもめんどくさいし、別に何もしたくなかったんです。でも、そのなかで唯一褒められたのが、歌を歌った時だったなあと思って。この先の人生の道を考えても、きっと心が動く瞬間は本当に音楽しかないと感じて、それなら人生を賭ける価値があるんじゃないか、と。それで「頑張ろう!」と決めました。

――今その道を選んで、自分としては満足していますか?

lia:はい。あの時にひよらなくてよかったなと思います。

――そこまで本気になれたというのは、この曲の歌詞にも〈革命前夜〉とありますが、ご自身にとって革命的な出来事だったんでしょうね。

lia:本当に大革命でした。そんなにやる気が起こること自体、生きてきたなかで一度もなかったので(笑)。こんなに「やりたい!」と思うのであれば、それはやるべきなんだろうな、って。

関連記事