Cö shu Nie、“どんな自分”も愛するまでの道のり 孤独に温かな光を照らしたZeppツアー『Wage of Guilt』

Cö shu Nie『Wage of Guilt』レポート

 終盤に差し掛かると、「asphyxia」「bullet」「永遠のトルテ」「supercell」といった衝動的かつ技巧的な演奏のアンセムが立て続く。とりわけ、「asphyxia」と「bullet」は『東京喰種トーキョーグール:re』や『PSYCHO-PASS サイコパス 3』といった人気アニメのタイアップ曲としてCö shu Nieの名を広めた代表曲であるのみならず、中村自身の赤裸々な内面が綴られた曲だという点でも、ここで鳴らされた意義は大きい。〈何度も折れた心で僕は続く〉(「asphyxia」)、〈認めてやれよ 歪な心〉(「bullet」)といった不完全性を許していくような言葉やそれに呼応するアンサンブルの高まりは、この日のセットリストの流れで聴くと一層心に迫るものがある。

 中村はMCで「完璧主義だと思っていた自分の完璧じゃないところを、どうやったら認められるのか?」と溢していたが、挫折や孤独を味わって傷ついた心の蓋を開けるのは気が滅入るし、なかなか簡単には向き合えないものだ。でもそうやって自らの内面を阻害するのではなく、それが自分なんだと愛し、認めてあげることで、また新たな人間関係や選択の可能性が開けていく。現在進行形でそんな物語を紡いでいるCö shu Nieにとって、やはりターニングポイントとなったのが「asphyxia」や「bullet」ではないだろうか。そして、怒りの感情を押さえ込まずにロックで解放していく「Burn The Fire」は、Cö shu Nieの新たなライブアンセムとして激しく、高らかに鳴り響いた。

 ラストを飾ったのは、喪失をテーマにした2つの名曲「青春にして已む」「消えちゃう前に」。ライブというのは、互いの想いを交換し合うことで生きている実感を強く得られる場所だが、最後の曲が終わればまた各々の日常へ戻らなければならない。「ただそこにあってほしい」「この瞬間が永遠に続いてほしい」というシンプルな願いほど、叶わないものだ。だからこそ、今を大事にしよう。終わってしまうからといって、愛することを諦めないようにしよう。それを日常の中で実践していけば、どんな時だって“生きている自分”を見失わずに済むはずだーーそんなメッセージがオーディエンスに手渡された気がした。

 終演直後、「『7 Deadly Guilt』をたくさん愛してね」という中村の場内アナウンスが流れた。我々の未来が明るさだけで満たされることはないだろうが、人生というゲームで暗闇に迷い込んだ時こそ、きっとこれからもCö shu Nieの音楽が行き先を照らす道標になってくれるはずだ。Cö shu Nieは11月、上海、北京、韓国でのツアーやイベント出演を経て、本ツアーの追加公演として、東京・渋谷WWW X(11月28日)、石川・金沢REDSUN(11月30日)に戻ってくるが、オーディエンスとの繋がりを深めたCö shu Nieが今後どのような音楽的進化を見せるのか、まだまだ目が離せない。そして切実な胸の内を掬い取った楽曲たちは、苦悩しながらも生きていく人々の心により深く刺さり、広がり続けていくに違いない。そんな淡い希望に身を委ねたくなる、温かくて美しい一夜だった。

Cö shu Nie オフィシャルサイト

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