chilldspotが語る、EP『echowaves』制作背景 セルフプロデュース作で強化された“バンド”らしさ

 4人組バンド・chilldspotが5曲入りの新作EP『echowaves』をリリースする。本作は、現在活動休止中のジャスティン(Dr)を除く、比喩根(Vo/Gt)、玲山(Gt)、小﨑(Ba)の3人でレコーディングを実行。作詞、作曲、編曲ともに全てメンバーのセルフプロデュース作となったことで、今まで以上に「バンド」らしさが詰め込まれた作品に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、比喩根、玲山、小﨑の3人に、EP『echowaves』全曲の制作エピソードはもちろん、9月後半より始まる4度目のワンマンツアー『chilldspot 4th one man live tour "crowdsurf"』に対する意気込みなどを語り合ってもらった。(黒田隆憲)

比喩根の経験をもとにした歌詞の“波”に寄り添うメンバープロデュース楽曲

比喩根

ーーまずは、新作『echowaves』のテーマやコンセプトについて聞かせてもらえますか?

比喩根:今までのchilldspotは、まず曲を作って、それをどう並べるか、並べた時にどんな意味が出てくるか? という感じでテーマを考えていました。でも今回は1曲目から5曲目までの流れを先に決めて、その流れに合わせてデモを作り、その中から5曲を選んでいます。そこは大きな違いですね。

ーータイトルの『echowaves』は造語ですか?

比喩根:はい。今回のEPは、小学校時代から中学、高校、現在までの時系列に沿った歌詞で構成されています。実際の経験をもとにしているので、全体の流れに「波」のイメージが重なっているなと。タイトルとかツアーの名前をどうしようって話になった時に、波に合う単語を探していたら、玲山が「エコー」っていう言葉を出してくれたんです。楽曲が波やエコーのように広がるイメージがしっくりきて、『echowaves』というタイトルに決めました。

ーー今回はメンバーセルフプロデュース作ということで、玲山さん、小﨑さんが曲作りに全面的に参加しています。比喩根さんが自作曲「夜の探検」をバンドでやりたいと思いスタートしたchilldspotですが、ここ5年でメンバー同士の関係性や役割は変わってきましたか?

比喩根:バンドのあり方やメンバーの役割は、少しずつ変わってきたと思います。今回はメンバーがそれぞれトラックを作って、そこにメロディを乗せる形も取り入れていますし。

玲山:これまでは比喩根が先にメロを作って、それをベースにしていたんですけど、今回は僕と小﨑のトラックから作っていく方法も試しています。

比喩根:メロディも、2人に相談してアドバイスをもらいながら作りました。なので小﨑の趣味が楽曲に反映されていたり、玲山が好きなジャンルが色濃く出ている曲もあったり。それぞれがchilldspotの中で、自分の居場所をどんどん見つけて立ち位置を確立していってると思いますね。

玲山

ーーでは収録曲について、1曲ずつ聞かせてください。まず「ray」ですが、これは作曲が小﨑さんと比喩根さんとの共作です。

小﨑:「だんだんスピードが上がっていく曲を作りたい」というのがもともとあって、今回Instgramさんからキャンペーンの話をもらい、せっかくなので自分が好きなグランジやシューゲイザーの要素を入れながら作っていきました。ギターの音作りは玲山と相談して決めましたね。参考にしたのは、カナダのシューゲイザーバンド、the neverminds「melt」という曲です。

ーー短い曲で、一気に走り抜けるような印象がタイトルの「ray(光線)」にピッタリです。

比喩根:そうですね。作った時は違うタイトルだったのですが、暗闇に光が差し込む感じがこの曲に合っているなと思って、「ray」にしました。

ーー歌詞の中に〈14歳〉というワードが出てきますが、14歳は比喩根さんにとって特別な年齢だったのですか?

比喩根:以前やっていただいたインタビューで、私がボイストレーニングの発表会で初めて歌った時に、泣いてくれた人が一人いて、そこで初めて「本格的に歌をやってみたい」と思った話をしたと思うのですが、それがまさに14歳の時だったんです(※1)。私が歌を始めるきっかけとなった重要な出来事だったので、そこから現在に至るまでの音楽やバンドに対する思い、ちょっとした決意みたいなものを曲にしようと思いました。EPの中ではプロローグ的な位置づけで、過去から今にかけての気持ちが凝縮されていると思います。

ーー続く「have a nice day!」も比喩根さんと小﨑さんの共作です。

小﨑:これも「ray」と同じような流れで、まず僕がシンセベースやドラムのフレーズを組み立てて、そこにメロディを乗せていきました。この曲はかなり難しかったですね。

比喩根:むずかったね。シンプルなトラックだからこそ、歌詞一つひとつが大事になるので。

小﨑:3人のグループLINEで、ずっとああでもないこうでもないと相談しながら作っていきました。

小﨑

ーー出来上がった曲はすごくインパクトがありますよね。メロディと言葉の組み合わせ方に中毒性があり、耳に残ります。

比喩根:歌詞は、小学校高学年から中学生くらいにかけて存在していた「いじめ」やグループ派閥みたいなものを描いています。当時、いじめられていた子を私が庇ったことで、今度は自分が彼らの標的になってしまったことがあるんです。それが中学生までじりじりと続いていたんですけど、その時に感じたことを歌詞に反映させました。

ーーそういういじめやグループ、派閥は大人になっても存在していますよね。〈ランドセルのおうちにまだ居るの誰?〉という歌詞は、そういう人たちへの皮肉にも聞こえます。

比喩根:そうですね。「何やってんの、小学生と変わんないじゃん」みたいな。私自身はそういうところとは距離を置くというか、ある意味「決別」を表明した楽曲になったのかなと思います。

ーーサウンド面ではどんなこだわりがありますか?

小﨑:この曲はシンセベースをメインにして、サビにはエレキベースを加えました。あえてギターアンプで鳴らしているのがこだわりどころです。

玲山:ギターが入ってなくて、トラックも打ち込みがメインで、レコーディング自体も時間が結構短かったかもしれない。

比喩根:歌はその分、コーラスが多めですね。最終的には3分の1ほどミックスで削ったのですが、声だけでコード感がわかるくらいたくさん重ねました。

ーー確かに、コーラスがすごく効いていると思いました。

比喩根:コーラスも今回は、みんなに相談しました。レコーディング中も「どっちのハモリがいいと思う?」「やっぱりここはコーラスあった方がいいよね」とか、その場で変えたりしながら作り込んでいきましたね。

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