米津玄師、Official髭男dism、Vaundy、back number……“ドラマ風MV”で描かれる楽曲とリンクした恋愛模様
2023年にリリースされたVaundy「そんなbitterな話」のMVは堀田英仁監督が手がけたもので、板垣李光人と伊藤万理華がカップルを演じるドラマ作品である。スケールの大きなロックサウンドに乗せ、セパレートされた画面で2人を捉えるカットが小気味よく印象的だ。
別れを選んだ後にさまざまな思い出を振り返るような内容に見えるが時折、脳や粒子のイメージが散りばめられ不思議な見心地をもたらす。そしてラストには、身体がアンドロイドのようになった2人がキスを交わすという突飛な展開が待っている。
〈出会わなきゃよかったな〉と歌いつつも、愛し合った時間は見えなくなっても消えず、決して忘れることのできない苦味として残り続ける。どれだけときを超えても変わることのない感傷だ。そんな楽曲のテーマをこのMVは消えない愛の記憶が世界のどこかにアーカイブされ、いつしかアンドロイドの恋をも引き起こす……そんな想像が膨らむストーリーとして込めているように見える。ビターなラブソングがあっと驚くようなSF作品へと昇華されたのだ。
back numberが2021年にリリースした「黄色」のMVは駒井蓮が主人公を演じ、見上愛がその親友役を務めており、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮り下ろした作品。山戸監督らしい、彷徨う感情を切り取った1作だ。
「黄色」とは、歌詞の内容から読み取るに信号機の色を意味しており、決して青には変わらず進むことのない恋心のメタファーと考えられる。〈君の恋の終わりを願う本当の私に/今は硝子の蓋を閉めて〉と締めくくる点からも、自身の感情を抑圧することの苦しみが伝わってくる。
MVでは主人公が親友に恋愛感情を寄せる姿が描かれるが、親友は男性としか親密にならず、それは叶わぬ恋となる。最後には親友の結婚式が描かれ、主人公は想像のなかでだけ親友と結ばれる。楽曲に刻まれた悲痛さが美しいショットと生々しい感情表現によって立体化した作品である。
今回紹介した4作はどれも台詞がなく、俳優たちの表情や動きでドラマが作られる。楽曲に込められたフィーリングやそこで歌われる言葉を信頼しているからこそできた表現だ。優れたラブソングから生まれたこれらの優れたラブストーリーは、人が恋することを止めない限り時代を越えて楽曲を届ける役割を担うだろう。
※1:https://realsound.jp/2024/09/post-1770265.html
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