日向坂46 四期生、武道館で見せた飛躍的な成長 グループを率いる11人の頼もしさが光るステージに

 この春にデビュー5周年を迎えた日向坂46が、現在新たなライブの形を模索し続けている。例えば、5月に発売された11thシングル『君はハニーデュー』から初の選抜制度が導入されたことで、選抜メンバーに対するアンダー的な立ち位置の“ひなた坂46(ひらがなひなた)”が誕生し、7月3日、4日にはひなた坂46として初の単独ライブ『11th Single ひなた坂46 LIVE』を開催。シングル表題曲やカップリング曲、ユニット曲や期別曲などをひなた坂46として披露し、各曲でメンバー全員がセンターを担ってみせた。また、8月4日には三期生の上村ひなの、髙橋未来虹、森本茉莉、山口陽世が『TOKYO IDOL FESTIVAL 2024』にて初めて期別ライブを展開し、8月27〜29日には四期生が日本武道館で単独ライブを開催したばかりだ。

 四期生は昨年11〜12月、乃木坂46 五期生や櫻坂46 三期生とともに『新参者 in TOKYU KABUKICHO TOWER』をTHEATER MILANO-Zaで展開していた。すでにスター級の人気を博していた乃木坂46 五期生、7thシングル『承認欲求』で選抜入りするメンバーも生み出し勢いに乗っていた櫻坂46 三期生を前に、何より自分たちが加入する前から日向坂46を応援してきたおひさま(日向坂46ファンの総称)に対し、当時の日向坂46 四期生は不安を感じていたという。正源司陽子は『新参者』千秋楽公演(11月30日)で「(ほかのグループと)比較されてしまったり、私たちが10公演どう乗りきれるのかということで、たくさん悩むこともありました。一番私が心配だったのが、日向坂46にとっておひさまにとって、とても大切な楽曲を私たちが披露することを、皆さんが受け入れてくださるのかということ」と発言していたが、この言葉からも当初の迷いが伝わる。しかし、そこから四期生は「自分たちに何ができるのか、何度も話し合いをして、たくさん考え」ることで、“一体感”という彼女たちらしいテーマを見つける。何が正解なのか悩み迷いながらぶつかった『新参者』で得た手応えは、彼女たちの大きな自信につながっていく。筆者はこのときの四期生に対して、「その姿は、公演ごとに絆を深め自信を付けていった2017年のZeppツアーでの一期生を見ているようでもあった」と評している(※1)。

 あれから約9カ月を経て、四期生が再び単独ライブに臨んだ。しかも、会場に選ばれたのは日向坂46にとってもゆかりの深い日本武道館。前身グループのけやき坂46時代、現在の日向坂46一期生(数曲だが、加入間もない二期生も参加)は突如訪れた武道館3DAYS公演という“無謀な挑戦”に持ち前のがむしゃらさで打ち勝ち、その後の機運を大きく変えることとなった。新たなメンバーオーディションが始まったこのタイミングで四期生に武道館単独ライブ、しかも3DAYS公演も与えることで、2018年のけやき坂46と印象が重ならないわけでもないが、今の四期生にとってこの武道館3DAYSは決して“無謀な挑戦”だとは思わない。むしろ、筆者には「現在の後輩チーム(四期生)が、新たな後輩(五期生)が加わることで先輩になれるのか、先輩が務まるのか」を確かめるための試験のように感じられた。と同時に、迷いながら答えを求め続けた『新参者』のときとは異なる四期生の姿が見られるのではないかと、大きな期待も抱えていた。

 今回のライブでは、ミュージカルを思わせるようなストーリー性を内包した演出(「ロッククライミング」から「真夜中の懺悔大会」までの流れはまさにそれ)や、サーカスをモチーフにメンバーが一輪車やフラフープ、バトン、リボンなどにトライする、けやき坂46ライブを彷彿とさせる懐かしい演出(「君しか勝たん」)など、けやき坂46〜日向坂46の歴史を継承する場面ももちろん用意されており、初期から応援してきたファンにとってはエモさを覚える場面も多々あったことだろう。けやき坂46結成時から彼女たちの活動を追う筆者にとっても、それは同様だ。が、個人的にはそれ以上に、四期生一人ひとりの独自の個性が開花し始め、日向坂46を背負っていこうとする覚悟を抱えてステージと向き合う頼もしさが随所から感じられたこと。その自信に満ち溢れた立ち振る舞いを目撃できたことこそ、今回の四期生ライブにおける最大の収穫だった。

 まず、彼女たちにとって思い出深い青基調の「青春の馬」衣装を着て、一人ひとりの“らしさ”を取り入れたソロダンスを披露しているオープニングから、「武道館でかましてやろう!」という気概が伝わったし、意外な選曲だった1曲目「どうして雨だと言ったんだろう?」ではセンターの正源司を中心に、これまであまり見せたことのないような大人びた表情でクールさを提示。この春の『5回目のひな誕祭』でも披露された小西夏菜実センターの「月と星が踊るMidnight」でも、より完成度の高いパフォーマンスを披露してくれた。そこから、研修生時代から踊り続けてきた清水理央センターの「青春の馬」では彼女たちの大切な合言葉である“一体感”を体現するかのごとく、11人で高い熱量のパフォーマンスを作り上げた。個人的には最終日にこの曲で見せた、爆発力の強いステージが忘れられない。

 先の『新参者』でライブ初披露となった「ロッククライミング」も、広く高いステージを使うことで、高い壁を乗り越えている姿と重なる。険しい道も笑顔で突き進むセンターの平尾帆夏の姿に、きっとメンバーもおひさまも頼もしさを覚えたことだろう。サーカス風の演出が加えられた「君しか勝たん」では、センターを務めた竹内希来里がひと皮剥けた成長ぶりを見せる。曲冒頭ではピエロ役を演じた渡辺莉奈と人形劇を演じてみせたほか、曲中でも堂々としたセンターぶりを発揮。7月の『11th Single ひなた坂46 LIVE』でその片鱗を見せていたが、この武道館公演ではついに壁を破ったのではないかと感じた。また、「真夜中の懺悔大会」で同期メンバーへの隠し事を懺悔するなど、憎めない可愛らしさで観る者を釘づけにした石塚瑶季も、今回の公演で大きな爪痕を残している。『11th Single ひなた坂46 LIVE』を経験した四期生の多くが、この武道館公演で飛躍的な成長を見せていたことは特筆しておきたい事実だ。

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