『ロシデレ』『マケイン』『とらドラ!』など最新&名作まで 声優の“技”が光る名キャラソンをピックアップ
アニメに登場するキャラクターが歌唱するキャラクターソング(以下、キャラソン)は、現代アニソンにとって欠かせない存在である。昔と比べてアニメカルチャーが一般的になってきた背景もあり、昨今では米津玄師やYOASOBIといったJ-POPアーティストがアニメ主題歌を担当する割合が増えてきたものの、「登場キャラクターが歌う方が作品との親和性が高い」という視点はやはり大きく、令和以降のアニメでも『ラブライブ!スーパースター!!』(NHK Eテレ)、『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)、『まちカドまぞく』(TBS系)、『勇気爆発バーンブレイバーン』(TBS系)など、様々な作品で印象深いキャラソン主題歌が生まれてきた。
キャラソンは、当たり前ではあるがキャラクターを演じる声優たちが歌唱を担当している。自身の声のみで様々な表現を行う声優は、演技力や表現力、滑舌の良さなど本職のシンガーとはまた違った武器を備えており、「キャラ声を維持しながら歌唱する」という最初のハードルを越えた上で、ポップス/ロック/クラブミュージック/ジャズ/アイドルソングといった多種多様な音楽ジャンルの楽曲に果敢に挑戦している。
奇しくも現在放送されている2024年夏クールのアニメにおけるキャラソン主題歌は、声優による表現力やスキルがあるからこそ成立している楽曲が数多い。今回は声優の“技”が印象的な今クールのキャラソン主題歌をピックアップして紹介していこう。
「キン肉マンGo Fight!」「超人」/『「キン肉マン」完璧超人始祖編』
最初に紹介するのは、シリーズとしては18年ぶりとなる新作アニメ『「キン肉マン」完璧超人始祖編』(CBC/TBS系)の主題歌だ。過去シリーズを振り返った第0話では、串田アキラが歌う『キン肉マン』お馴染みの主題歌「キン肉マンGo Fight!」をキン肉マン(CV:宮野真守)がカバーしたver.がテーマ曲として披露された。宮野自身のアーティスト活動ではソウルやヒップホップ、EDMといったダンサブルな楽曲が多いため、低音が際立つ筋肉質なボーカル表現に驚いた人も多いことだろう。また、お調子者状態のキン肉マンによる落ちサビ前のコミカルな歌声もこの曲の印象的な部分の一つで、宮野の歌声の節々から初代キン肉マン声優・神谷明へのリスペクトを感じ取ることができる。
さらに、ヒップホップの要素を取り入れたEDテーマ「超人」もインパクト抜群な楽曲である。しゃくりによるコミカルさ、叫びによる熱さ、決めセリフでのかっこよさ、登場人物の名前を用いたラップのスタイリッシュさなど、宮野のボーカル表現の引き出しはこの1曲だけでも相当数存在する。宮野を起用したことによって生まれた新たな『キン肉マン』の形に注目してほしい。
EDカバー楽曲/『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』
カバーという点で外せないのは『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(TOKYO MXほか)、通称『ロシデレ』のEDテーマだ。アーリャ(アリサ・ミハイロヴナ・九条)役の上坂すみれが毎話異なる楽曲をカバーしており、選曲も「想い出がいっぱい」「学園天国」といった昭和の名曲から、TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(チバテレビほか)のEDテーマ「ハレ晴レユカイ」、「可愛くてごめん」のような平成/令和の大バズリ曲まで幅広い。上坂の歌声は基本的にはアーリャの可愛さを前面に押し出す形で、楽曲のテーマによって歌声のテンション感を変えることでアーリャの魅力を多面的に伝えている。
「LOVE 2000」/『負けヒロインが多すぎる!』
往年のヒット曲のカバーという観点では、同じく青春ラブコメ作品の『負けヒロインが多すぎる!』(TOKYO MXほか)EDテーマも外せない。「マケイン応援!カバーソングシリーズ」と題したカバー曲のうち、八奈見杏菜(CV:遠野ひかる)の歌う「LOVE 2000」は遠野の柔らかく丸みを帯びた歌声と青春感が印象的。カラリとした歌声の原曲とは違うアプローチで楽曲のさらなる良さを引き出しているのは、遠野の歌声の影響も大きいはずだ。
「編集点」/『真夜中ぱんチ』
今クールで声優の“技量”が詰まったキャラソンとして筆者が推したいのが、『真夜中ぱんチ』(TOKYO MXほか)のEDテーマ「編集点」。モノローグを主体としたポエトリーリーディングで作られた楽曲は、『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドでその高い歌唱力の一端を示した長谷川育美が歌唱を担当している。ポエトリーリーディングによって繊細な感情表現を詰め込むことができるのは声優にとっては利点であり、A/Bメロのポエトリーパートのおかげで、メロディに乗せたサビ部分の歌唱もより映えることとなる。ポエトリーリーディングが使用されたアニメ主題歌は『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』(TOKYO MXほか)の劇中歌「詩超絆」などがあり、『Princess Letter(s)! フロムアイドル』をはじめ、アニメ作品以外でもちらほら見かけるようになってきた。もしかしたら、今後ポエトリーリーディング調のキャラソン主題歌も増えていくのかもしれない。
「バーチャル・ショータイム!」/『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』
声優の演技力を別のアプローチで押し出した楽曲の一つが『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』(TOKYO MXほか)のOPテーマ「バーチャル・ショータイム!」。清楚キャラの心音淡雪(CV:佐倉綾音)と、彼女の素の性格であるおっさんキャラのシュワちゃん(CV:佐倉綾音)のデュエットという破天荒な楽曲で、喜怒哀楽どころでは足りない佐倉の数多の演技をハイテンポな3分39秒の楽曲の中にひたすら詰め込んでいる怪作だ。
「アドリブ」/『疑似ハーレム』
同様に、『疑似ハーレム』(TOKYO MXほか)のEDテーマ、七倉凛(CV:早見沙織)の歌う「アドリブ」も、ウィスパーボイスやラップ、コーラスパートのセリフなど、早見の歌唱力と演技力があるからこそ成立するキュートな1曲に仕上がっている。どちらの楽曲も何度でも聴きたくなる中毒性があるのは、コロコロ表情が切り替わる飽きの来ない展開というのも大きい。それは今クール最も話題となっているキャラソン主題歌「しかのこのこのここしたんたん」にも通じる部分だ。