ひなた坂46、日の当たる場所へ向かうスタートライン 高本彩花卒業を見送った初単独ライブ

 もうひとつ気になったのは、ひなた坂46としての晴れの舞台に一期生・高本の卒業セレモニーを重ねてしまったこと。このセレモニーには選抜メンバーも参加し、結果として「ひなた坂46ライブの中に日向坂46としてのパフォーマンスがフィーチャーされる」というアンバランスな展開に。ライブにおける軸が2つ存在することで、ひなた坂46としてのライブ本編の印象を薄めることになってしまった。もちろん、スケジュールの兼ね合いなどは重々承知しているが、グループ初期からの功労者の卒業と重なってしまったことで、今後にとっても大きな役割を果たすことになるであろうひなた坂46のインパクトが少なからず弱まってしまったのは、もったいなかったと言わざるを得ない。

 もちろん、高本の卒業セレモニーや彼女が公演本編で見せた輝きは、特筆に値するものがあった。プライベートでも仲良しな濱岸と一緒に歌った「男友達だから」には個人的にも涙腺を刺激されたし、高本を見送るために駆けつけた他の一期生たちと一緒に歌った「おいで夏の境界線」には「6年前にこの会場で観たけやき坂46のライブから、こんなにも人数が減ったんだな」という切ない感情を抱いたりもした。そして、このセレモニーにおいてもっとも大きな収穫は、なんといっても「永遠の白線」だろう。けやき坂46時代初期の楽曲なだけに、本来なら一期生のみで歌うべきところを、高本のリクエストにより、この日は一期生から四期生までの全メンバーで披露。グループの去り際にこういうサプライズを用意できたのも、結成時から所属する一期生だからと言える。このきっかけが今後グループにどんな新しい作用をもたらすのかも、気になるところだ。

 高本がステージを去った頃には、筆者の中ではほとんど『高本彩花 卒業セレモニー』の記憶へと塗り替えられていた。しかし、このあとに高本を除く11人のひなた坂46として「錆つかない剣を持て!」を、予定外のダブルアンコールで再披露。『ひなた坂46 LIVE』という本来の趣旨を死守してみせた。

 現在の日向坂46において、直近の大きな目標は9月に控えた宮崎での『ひなたフェス2024』を成功させることであり、その先では「東京ドームに四期生を含む現メンバーで立つ」べく、さらにギアを上げていくことが予想される。グループ全体としてはそうしたわかりやすい目的があるものの、ひなた坂46に関してはその部分がまだ定まっていないようにも感じられた。選抜入りすることがモチベーションになるのか、あるいはひなた坂46としての存在感を強め、日向坂46に貢献することが目標になるのか。今回の公演だけでは見定めるのは難しかったが、それもこの2公演を通じて見つかった課題をクリアし、ひなた坂46としての活躍の場が増えていくことで確立されていくことだろう。

 ひなた坂46はまだ走り出したばかり。いろんな瞬間を重ねて、さらに飛躍することに期待したい。

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