日向坂46、アンダーグループ「ひなた坂46」が与える影響は? 坂道での先行事例から考える
2019年3月のデビューから全員選抜という形を取ってきた日向坂46だが、11thシングル『君はハニーデュー』から選抜制度が採用されるとともに、4月6日にはアンダーメンバーの呼称が「ひなた坂46」に決定した。アンダーにひらがなを取り入れる形は日向坂46が欅坂46のアンダーグループ的立ち位置だった時代に「けやき坂46」として採用されており、その流れを汲んでいると言えるだろう。だが、この決定にはけやき坂46から日向坂46に改名した経緯を考えると、その時代の名残が再び残ることへは批判的な声も少なくない。しかし、そういった名称を抜きにして、選抜/アンダー制を採用したことは大きな決断であり、グループが変化していく可能性を秘めている。
そもそも、これまで一期から三期までの全員選抜を取ってきた日向坂46がなぜこのタイミングで舵を切ったのか。その背景にあるのは草創期のメンバーである一期生の卒業が続いたことにあるだろう。それに加えて、2022年に加入した四期生が目まぐるしい勢いで成長し、個人単位での活動が広がるだけではなく、グループでも重要な存在となってきた部分も大きいように感じる。実際に11thシングル表題曲「君はハニーデュー」には多くの四期生が選抜入りを果たしており、その中でも正源司陽子はセンターにも選ばれている。センターに立つ正源司の姿は堂々としていて、この先のグループを背負っていくという気概を十分に感じさせるものだったし、メンバーのコメントを見ても彼女に信頼を寄せていることは伝わってくる。
選抜制度が発表された時点で、アンダーメンバーとして活動するメンバーが出てくることは予想できていたが、実際にひなた坂46として活動することが発表されると、大きな反響が寄せられた。日向坂46のアンダーの存在が可視化され、選抜とアンダーを明確にすることは、選抜メンバーがメディアや歌番組でのパフォーマンスを引き受ける機会が多くなることも同時に示している。
しかし、他の坂道グループの例を見てみると、確かに乃木坂46は1stシングル『ぐるぐるカーテン』から選抜とアンダーの区別を明確にし、アンダーは選抜の下に置かれるポジションとしてネガティブな意味合いも込められる形でしばらくは語られていた。だが、節目が変わったのは『アンダーライブ』というアンダーメンバーが主役となれるライブが開催されてからだった。2014年リリースの8thシングル『気づいたら片想い』の全国握手会を起点に『アンダーライブ』は乃木坂46の重要なコンテンツとして高い評価を受け、2015年には日本武道館での2日間、2023年には過去最大規模となる横浜アリーナにて3日間開催し、動員も史上最大を記録。重要なコンテンツとして拡大していった。
また、櫻坂46は結成当初は日向坂46と同様に選抜を採用していなかったが、2023年の7thシングル『承認欲求』から選抜制を導入した。櫻坂46は2ndシングル『BAN』発売後から、表題曲1列目・2列目に位置する“櫻エイト”を除いた3列目のメンバーのみが参加する『BACKS LIVE!!』を開催。これは厳密には異なるものの、『アンダーライブ』と同様の役割を担っており、その後7thシングル『承認欲求』の選抜メンバー以外の12人、井上梨名が座長として挑んだ『7th Single BACKS LIVE!!』(2024年)はグループの層の厚さを示すとともに、BACKSメンバーのポテンシャルを示した記念碑的なライブとなった。
こうした事例を鑑みると、必ずしもアンダーは選抜の下位に置かれるコンテンツではないことは明らかだ。むしろ、グループ全体の経験値が増える絶好の機会であり、選抜を凌ぐ大きな存在感を放つものとなっていく可能性がある。