ひなた坂46、日の当たる場所へ向かうスタートライン 高本彩花卒業を見送った初単独ライブ

 今年5月に発売された11thシングル『君はハニーデュー』から初の選抜制度が導入されたことで、新たに“ひなた坂46(ひらがなひなた)”が誕生。選抜メンバーに対するアンダー的な立ち位置となるこの存在にとって、最初の大きなアクションとなるのが7月3日、4日にパシフィコ横浜 国立大ホールで開催された単独ライブ『11th Single ひなた坂46 LIVE』だった。ひなた坂46の存在意義やどんな軸を持ってライブと向き合い活動していくのかなど、初ライブを通して見えてくる部分も多々あるはずだ。

 筆者は4日公演を現地で観覧したのだが、グループの原点である“けやき坂46(ひらがなけやき)”時代、初の単独ツアー『けやき坂46「走り出す瞬間」ツアー2018』をスタートさせた会場と同じ場所から始まるひなた坂46初の単独公演では、全12人と日向坂46の通常時より少ない人数ながらも、座長の三期生・髙橋未来虹を中心にエネルギッシュなステージを展開。オープニングを飾る「ってか」での一期生・高本彩花を筆頭に、曲ごとに各メンバーが代わる代わるセンターを務めていく。昨年秋に四期生が行った『新参者 LIVE at THEATER MILANO-Za』を除けば、日向坂46がこうしたスタイルのライブを行うことは稀であり、一期生の高瀬愛奈や二期生の濱岸ひより、三期生の髙橋や森本茉莉、山口陽世にとっては彼女たちがグループの中心に立つことでどんな化学反応を起こすのか、それを実証する上で非常に貴重な機会だったと言える。事実、先の「ってか」や高瀬センターの「どうする?どうする?どうする?」、濱岸センターの「愛はこっちのものだ」などは筆者の目に新鮮に映り、こういう機会がもっとあればいいのにと思ったほどだ。

 その一方で、昨年の『新参者』を機に着実に一人ひとりの個性や実力が増し始めている四期生も、その実力を遺憾なく発揮していた。「You're in my way」では平岡海月が渾身のソロダンスを披露し、「青春ポップコーン」では石塚瑶季が爆発力の強いパフォーマンスと弾けるような笑顔で、まさにポップコーンのごとくステージを跳ね回り、「世界にはThank you!が溢れている」では清水理央がフラッグを使ったパフォーマンスでその存在感を見事に発揮。「ゴーフルと君」では竹内希来里が全力のステージングで観る者を魅了し、「My fans」ではショートカットになり大人っぽさが増した渡辺莉奈がクールさ全振りのダンスでおひさま(日向坂46ファンの総称)を圧倒、「恋した魚は空を飛ぶ」では小西夏菜実がダイナミックなダンスでその存在感の強さを見事に提示してみせた。メンバーによっては煽りなどで拙さが見受けられる場面もあったが、それを補って余りあるほどの熱量で見事に乗り切ったことを付け加えておく。

 そして、一期生や二期生の安定感、四期生のがむしゃらさを見事な形でつないでみせたのが、座長の髙橋をはじめとする三期生の存在だ。山口は「One choice」、森本は「Dash&Rush」でそれぞれセンターを担当したほか、ユニットブロックでは同期・上村ひなののソロ曲「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」を丁寧に歌唱。髙橋も自身がセンターに立つひなた坂46初のオリジナル曲「錆つかない剣を持て!」で渾身のパフォーマンスを見せたほか、曲前には刀を使った殺陣も披露。さらに、ユニットブロックでは先輩・佐々木美玲のソロ曲「わずかな光」をひとりで歌ってみせる。3人とも昨年は初めて舞台(森本と山口は『幕が上がる』、髙橋は『ラフテイル・オブ・アラジン~Aladdin and the Magic Lamp Story~』)を経験したこともあってか、個としての輝きがより増しているようにも感じられた。特に髙橋は座長という重責を背負いながら、ひなた坂46全体を引っ張るだけでなく、個人としても見事に輝いてみせるなど、この期間に得た経験がすべてプラスに作用しているように映った。

 ここからはライブ全体に目を向けてみたい。シングル表題曲やカップリング曲など、これまで全メンバーで歌唱してきた楽曲のみならず、期別曲までもを12人で歌い踊るという点も、日向坂46の全体ライブとは異なるポイントだろう。特定の期別曲を別の期生が歌うのとはまた異なり、その期が放つユニークさを、ひなた坂46として新たに色づけしていくという試みはとても興味深く、ここからひなた坂46としての新たな可能性が見つかるのではないだろうか。またユニットブロックに関しても、普段のライブではあまり歌われる機会のないけやき坂46時代のユニット曲(しかも、けやき坂46時代を経験していない四期生が中心というのも粋な計らいだ)やメンバーのソロ曲をピックアップしたことは、日向坂46のツアーなどとの差別化もできていた。次回以降はまた別の試みが用意されるのかもしれないが、初回としては非常に満足度の大きいものだった。日向坂46のライブで多用される映像演出も、本編ラスト曲「錆つかない剣を持て!」の前に用意された程度で、基本的にはパフォーマンス中心でつないでいくという構成も、ひなた坂46のがむしゃらさを全面に打ち出す意味では効果的だと感じた。

 ひなた坂46としては初めてのライブということで、もちろん良い点だけではなく、今後への課題点もいくつか浮き彫りになった。個人的に気になったのは、ひなた坂46の持ち曲である「錆つかない剣を持て!」以外の楽曲に関して、メンバーによって振りの大きさや揃え方にバラつきが目立ったこと。これによって12人が目指すものがバラバラに映ってしまう瞬間もあり、ライブへの没入感が途切れてしまう場面もゼロではなかった。もしかしたら、メンバーによってはひなた坂46に対するモチベーションに違いがあるのか、あるいはひなた坂46として何を達成すべきなのかに違いが生じているのか、もしくは日向坂46としての目標とひなた坂46としての目標にギャップを感じているのか……もちろん、これは筆者が一方的に感じたことであり、本当のところはそんなこと一切ないのかもしれない。ただ、ひなた坂46としての絶対的存在感やあるべき姿を今もなお模索している最中なのではないだろうか、と感じたのは事実だ。ここに関しては、「錆つかない剣を持て!」に匹敵するオリジナル曲がどんどん増えていくことで、また変化していくことだろう。

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