Crab 蟹 Club、“初のライブ活動”で変化した楽曲との向き合い方 新曲2作で見せるバンドの成長

 4人組覆面バンド、Crab 蟹 Club。2021年に突如として音楽シーンに登場し、ソーシャルメディア上に楽曲を発表してきた彼らが2024年に入り、活動の幅を広げている。

 今年1月には3rd EP『アスターゲイザー』を発表。その後も「バイラルハック」(TVアニメ『喧嘩独学』EDテーマ)、「吹替版」「ジュライ」と新曲を次々とリリースしている。さらに今年2月からはライブ活動も開始し、卓越した演奏センスと表現力によって音楽ファンの注目度も上がり続けている。

 リアルサウンドでは、メンバーのKumoHana(Vo/Gt)、房治郎(Gt)、ナガオカ(Ba)、龍登(Dr)にインタビュー。今年の活動を振り返りつつ、新曲「吹替版」「ジュライ」の制作について語ってもらった。(森朋之)

“曲との向き合い方”に変化をもたらしたライブ活動

ーー今年1月に3rd EP『アスターゲイザー』をリリース。架空都市“東都”に突如現れた謎の物体“テリエル”をめぐる物語を複数の楽曲で描いた作品ですが、Crab 蟹 Clubにとって新しいトライだったのでは?

KumoHana:そうですね。小説家の方と一緒にタッグを組んで制作したのは初めての試みだったので。これまでもストーリー性だったり、コンセプトに基づいた楽曲が多かったんですけど、『アスターゲイザー』はそれをさらに追求したというか。原作の小説も大作で、そのチャプターごとに曲を当てはめるように制作したんですよ。全曲MVを作ったし、ストーリー、映像を含めて、いろいろな方向から楽曲を受け取ってもらえる作品になったのかなと。

ナガオカ:ストーリーを読み込んだ上で楽器のフレーズを考えた部分もあったし、自分としてもすごく新鮮で。連作として曲を作るのも初めてだったので、そのプロセスも面白かったですね。

龍登:『アスターゲイザー』に入っている「救出」は平田義久さん、「造花の夢、記憶の海 feat.伊根」は伊根さんに曲を作っていただきました。楽器隊としては、平田さん、伊根さんからバトンを受け取った感覚があって。お二人もCrab 蟹 Clubの雰囲気を汲み取りながら曲を作ってくださったし、「僕たちもそれに負けないような曲を制作しないといけない」という刺激をいただきました。

房治郎:EPの制作に入る段階で「何曲くらい収録して、こういう流れで」という話はあったんですけど、作っている途中で最初の想定とは違うことも起きたんですよ。たとえば「シロクロ・シック」はもともと全然違う形だったんですけど、流れのなかでアレンジが変化して。連作として作ったからこそ、曲と曲が影響し合って面白い反応が生まれたのかなと。それをパッケージできたのもよかったと思うし、今後もこういう機会があればやってみたいですね。

ーーそして今年からはライブ活動もスタート。2月23日の初ワンマンライブ(下北沢Flowers Loft)から始まり、6月には初の自主企画イベント『蟹 ba リズム』も開催されましたが、手ごたえはどうですか?

KumoHana:月並みですけど、自分たちの曲を人前で演奏することの喜びをすごく感じています。Crab 蟹 Clubとして初めて曲を発表したのが2021年の1月で、その後の3年間はひたすら音源を作って、リリースしてきて。ライブのことはまったく想像できていなかったんですけど、実際にやってみて「聴きに来てくれた人たちの前で生の音を鳴らすって、こういうことなんだ」と実感したというか。

ーーCrab 蟹 Clubの曲はアレンジやフレーズもすごく緻密で。ライブで演奏するにはかなりハードルが高いのでは?

KumoHana:そうですね。曲を作れば作るほど、どんどん人間離れしてきたというか(笑)。さきほども言ったようにライブを想定しないまま作り続けていたので、結果的に(演奏するのは)難易度が高い曲が多くなってしまったのかなと。

ナガオカ:ライブをやることで、意識する部分が格段に広がった気はしますね。ステージで演奏することもそうだし、アーティストとしてのイメージも含めて、いろいろ考えることも増えて。個人的にバンドのライブを観るのも好きだし、それに憧れてきたところもあったので、自分のバンドでライブをやるのはすごく楽しいです。

龍登:今までは曲をリリースした時点で完結していた感覚があって。その後は自分もリスナーみたいな気持ちでCrab 蟹 Clubの曲を聴いてたんですけど、ライブをはじめて、プレイヤーとして曲と向き合い直すことができていると思います。制作したときの自分と会話するというか、ときには「なんでこんな難しいアレンジにしたんだ?」と過去の自分に怒りを感じつつも(笑)、ライブを通して楽曲をさらに成長させる、輝かせていける可能性を感じています。ライブで演奏することで、成長せざるを得ないというか。

房治郎:こんなこと言っていいかわからないけど、「ライブをしない」という前提でバンドに入ったところがあって。

KumoHana:(笑)。

房治郎:なのでアレンジに関しても、そのときにできる限界までやっていたんですよ。ギターを何本も重ねまくっていたんですけど、ライブで演奏するたびに練習してみると、全部自分から生まれてきたフレーズだし、「がんばればやれるな」という感覚があったんですよ。そのことによって自分の技術が上がった感じもあって。

ーー新たなモチベーションにつながっている?

房治郎:そうですね。僕はそもそもKumoHanaの作る曲がすごく好きだし、アレンジするだけで満足していた部分があったんですよ、正直。ライブをやるとリスナーのみなさんと直接会えるし、「自分たちの音楽を生で聴きたい人がいる」という事実を実感できて。今までやってきたことは間違いじゃなかったと思えるし、その後の曲の制作にも影響を与えているんじゃないかなと。

KumoHana:曲を作る段階からライブを意識するようになったんですよね。パフォーマンスのことを考えたり、楽曲以外のところに目を向ける機会にもなっています。

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