「僕のお部屋にGO」というノラの言葉を合図に、バックスクリーンにはパソコンのモニターやマイクなどの機材が並ぶ部屋が映し出される。普段のノラが、制作作業をしたり、“歌ってみた動画”を撮影したりする場所、つまり彼のホームに観客を招待したのだ。

「明るく振舞おうとして空回ったりする自分が嫌で、劣等感を感じたりもして、行き場のない気持ちをこの部屋で音楽に落とし込んでいます。（中略）僕は物事を綺麗に見せようとする性格だから、自分の心の中の化け物の部分を隠してしまうけど、こんな話もできるくらい、皆さんのことを信用しているのかもしれません。仲間になってくれてありがとう」

　そんな本音を丁寧に伝えたあとは、Ayaseの「シネマ」、jon-YAKITORYの「シカベネーゼ」をカバー。インターネットを通じて、その声を届けてきた歌い手・ノラが、その世界線を越えてリアルの場へ飛び出して、今観客の目の前で歌っているという感動を改めて噛み締められる時間であった。さらに、成宮亮名義で楽曲提供した「魔法」のセルフカバーでは、疾走感あふれる爽やかなメロディを歌い上げ、これまでにないノラの表情を見せた。

　ライブ後半戦では、all at onceと共に、みきとPのボカロ曲「ロキ」、そしてabukuの「Liar」で再び火をつける。3人の勢いに乗った歌声とパワフルなパフォーマンスに、観客は熱狂。タオルを回したり、飛び跳ねたりと、どんどんテンションは高まっていく。さらに、最新曲「トウメイニンゲン」、ノラの原点となる曲「アイ独リ論」を畳みかけるように投下。リズミカルなビートで彩られた中毒性の高いメロディは、ライブの熱量を頂点まで押し上げていく。そして、ゲスト全員と共に本編ラストを飾ったのは、アニメ『名探偵コナン』のEDテーマに選ばれた、“今夜、あの街から”の「クウフク」(feat. all at once)。観客全員のハンドクラップと共に、最高の盛り上がりを見せた。

　鳴りやまないアンコールに応えて登場したノラは、「みにくいばけもの」をソロで歌唱。アーティスティックなMVをバックに両手を広げて歌い上げ、観客を圧倒。リアルなステージの場も掌握し、歌い手としての確かな存在感を見せつけた。そしてラストは、再びゲストとノラ全員がステージに集合し、「ハイド＆シークレット」をパフォーマンス。笑顔溢れるステージを届け、最高のテンションのまま幕を下ろした。

　ステージを去る前に、「みんなのおかげで僕の音楽があります。いつか必ず、また一緒に音楽しましょう。次もまた、あの街で会いましょう！」と、感極まった様子で思いの丈を伝えるノラ。直後にフロアから沸き起こった、大きな歓声と止まない拍手は、このライブが大成功に終わったという何よりの証拠だ。この先も、きっとたくさんの街で彼の音楽が流れることだろう。