中村さんそ、“かわいい×ポップ”はハイブリッドに拡張する ベッドルームとフロアで揺れ動く絶妙な意匠

 コロナ禍の影響でベッドルーム的なニュアンスをもったダンスミュージックが、音楽シーンにおいて大きな存在感を放っている昨今。そこにはまさしく中村さんその楽曲も含まれており、「at night」は屈指の名曲だ。

中村さんそ - at night

 鮮やかなシンセのメロディとコード、無機質なボーカルチョップ、内省的な歌詞世界。この感覚が「かわいい」なのが最高にクールだし、タイトルが「at night(夜のあいだ、夜に)」であることが端的に“今”を言い切っているように感じられる。この曲を聴いていると筆者は、ベッドルームとクラブのフロアが繋がった感覚を覚える。

 とはいえ、「at night」は2年前の曲であるから、現在はまた少し違う感触を持っているかもしれない。今回のベスト盤『中村さんそに魅せられて』とコロナ禍真っ只中の2020年10月にリリースされた『中村さんそと夜に溺れて』を比較すると、後者にはイーブンキック(いわゆる4つ打ち)の曲が「惑わせたくてミッドナイト (picco Remix) 」しかない。つまり、自分名義の曲はすべてアブストラクトなビートで構成されているわけだ。

 対して『中村さんそに魅せられて』は、「keep out」や「誰にも言えないけど」、「sugar taxi」に「勘違いなんかじゃない」、「Magic」、そして「ぐ~る・ぐるーゔぃ」。これらの曲はしっかり4つ打ちのダンスチューンだ。イーブンキックを持つトラックがオーセンティックなダンスミュージックと考えるならば、現在はコロナ禍に比べると徐々に身体性を取り戻しているとも言える。

中村さんそ - ぐ〜る・ぐるーゔぃ
中村さんそ - 勘違いなんかじゃない

 ベストアルバムには収録されていないが、今年5月には「ドラマチックなキスをして」がリリースされた。この曲は彼女のディスコグラフィーの中でも屈指の、明確なダンスナンバーだ。はっきり「ハウス」と言い切っていいかもしれない。しかし、この曲がベストに入ってこないことが意図的なものであるのであれば、そこには身体性に“完全に”振り切りたくないという意志があるのかもしれない。

中村さんそ - ドラマチックなキスをして

 依然としてフロアとベッドルームで揺れ動く絶妙な意匠。中村さんその繊細かつ多角的な“かわいい”がasiaで間もなく炸裂する。『暴カワ』の本拠地はasiaを経由していることもあり、今回のライブはさまざまな意味で重要なものになるだろう。そしておそらく、彼女の中の“かわいい”の感覚はこれからも変わり続ける。めくるめくファンシーで、けれども途方もなくエネルギッシュな世界観の片鱗を、彼女の歌から感じてほしい。

中村さんそ『中村さんそに魅せられて』

■リリース情報
中村さんそ 1st BEST ALBUM
『中村さんそに魅せられて』
税込¥3,300
発売元:TOKYO LOGIC Ltd.
販売元:Warner Music Japan
品番:QYCL-10042
JAN:4943674393718
CDジャケットイラスト イラストレーター:メイ・メイ デザイン:猫研あいお

楽曲リスト
01:わがままが言い足りない
02:keep out
03:moremoremore
04:at night
05:in the gravity
06:morning lie
07:sweety girl feat. nyankobrq
08:誰にも言えないけど
09:escape
10:sugar taxi
11:どろあまちゅ♡
12:inside me
13:勘違いなんかじゃない
14:Magic
15:ぐ〜る・ぐるーゔぃ

配信先URL:https://sansonakamura.lnk.to/NSMT

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