SG「どんな思い出も成長させてくれる大切なピース」 新曲「Cheese」に色濃く刻まれた人生観
日韓ミックスのシンガーソングライター・SG。彼は昨年、LDH Recordsとタッグを組み、自主レーベル SUPERGENIUS Entertainmentを設立。11月にリリースしたデジタルシングル「Palette」をもってメジャーデビューを果たした。その後、今年2月にメジャー第2弾シングル「Curse of Love」を、そして5月に3rdデジタルシングル「Cheese」をリリースした。
今回の新曲「Cheese」は、煌びやかなホーンの音色が映えたモータウンテイストのナンバーで、まさに新境地を開拓した1曲となっている。サウンド面の新しい挑戦が見られる一方、歌詞に注目すると、彼の代表曲の1つ「僕らまた」と通じる“別れ”というテーマが歌われていることに気づく。今回、新曲「Cheese」を紐解くインタビューを通して、SGの新たな変化、また、彼が一貫して大切にし続けている価値観に迫った。今回のインタビューも、単なる楽曲の魅力を紐解くインタビューを超えて、SGの表現者としての人生観を色濃く映し出した内容になっていると思う。(松本侃士)
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どのように音楽を届けていくのか、模索中の“第一歩”
――前回のインタビュー(※1)で、“一球入魂”にかけて“一創全魂”というご自身の新しいテーマを語ってくれて、この言葉はSGさんにとって今後の人生の大切なテーマになっていくのではないかと想像しました。今回の新曲も、“一創全魂”のうちの一つという位置づけでしょうか。
SG:そうですね。ただこの曲に関しては、そういう意識の中でもすごくラフに作った曲で。これから先どのように活動を進めていこうか、自分に合う音楽性は何だろうか、と考えながらいろいろ研究していっている中で、これ得意だな、自分の声と合うな、と気づけたことが、結果として今回の楽曲に繋がりました。
――一つ前の「Curse of Love」が、まるで壮大なロックオペラのように徹底的に構築された楽曲だったのに対して、今回の楽曲は一筆書きのような軽やかな筆致を感じます。そして、この対比と振れ幅こそがすごくSGさんらしいポイントなのだと思いました。今回の曲は、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
SG:1年ほど前、昔のバンドのメンバーと電話をしながら、「俺らって、いろんな思い出があったよな」ってしみじみ話していたんです。仲が悪い時もあったし、バチバチ喧嘩していた時もあって、今は別々の道を歩んでいるけれど、結局こうやって電話してるよねって。その電話をしている時に、この曲のサビをパッて作ったんですよ。その時は、もっとTikTokで流行りそうなチルなバイブスの曲をイメージしていたんですけど、その後にスタッフの皆さんと話し合う中で、モータウン寄りなアレンジにしたらどうだろうというご提案をいただきました。それは、その時の僕の中では全く想像していなかったアイデアで。というのも、僕はどのように曲を作っていったらSNSをよく見ている方々に届くのか、その方たちに刺すためにはどういうアレンジをしたらいいのかを考えて制作をしているんです。ただ、昨年メジャーと組んで、これから新しいフィールドに挑戦していくのであれば、一度スタッフさんの提案に乗っかってみるかと思ったんですよ。ずっとThe Jackson 5を聴いていたので、チャレンジできるかもしれないという感覚があり、実際にやってみたらめっちゃ良くて。
――まさに、チームで音楽を作る醍醐味ですね。
SG:そうですね。はじめは自分の中にないアイデアだったんですけど、完成してみたら、「〜だからSNSで聴かれない」ということはないんだって思えて。だから、いろいろチャレンジしてみるのはありだし、今もどういうことをどのように歌っていくか、どのように音楽を届けていくのかということについては模索している段階ですね。この曲は、その一歩って感じです。
SGの人生におけるテーマを反映 歌詞に込められた思い
――続いて、歌詞について聞かせてください。前回の「Curse of Love」のインタビューで、SGさんは「どうしても自分はすごくシンプルな歌詞を書くんですけど、そのシンプルな歌詞を伝えるためには、それを歌う人間が濃くないといけない」とおっしゃっていました(※2)。今回の曲の歌詞も、一貫して言葉遣いがシンプルな印象を受けました。
SG:先ほどお話ししたように、昔のバンドのメンバーと電話をした時にサビの部分だけすぐに歌詞ができて、その後にバンドのみならずいろいろなことを考えながら他の部分を書いていきました。「一筆書きのよう」とおっしゃってくださいましたが、歌詞もそんな感じで結構すんなりと書けました。
――サビに〈Good Bye〉という言葉があることが象徴的なように、この曲では別れが大きなテーマになっています。
SG:僕的には、別れは必ずしもネガティブなものじゃないんです。もちろん、悲しくて辛い別れもありますけど、それをポジティブに捉えることに僕は意味があると思っていて。
――3月のライブ(『Rebuild 7 Colors』)では、映像演出の一環で、SGさんの人生観に迫るインタビュー映像がいくつか流れていて、「始まりがあれば、終わりがある」「出会いがあれば、別れがある」「得るものがあれば、手放すものがある」といった両義性が、SGさんの人生における大切なテーマであることが表現されていたのを思い出しました。
SG:結局この曲ってお別れの曲でもあるんですけど、メインに伝えたいことは“どんな思い出も大切だよ”っていうことなんです。2番に〈思い出造っていこう〉という歌詞があるんですけど、ここの漢字を意図的に、荷造りの〈造っていこう〉にしていて。
――新しい思い出を作っていくのではなく、これまでの思い出を一つひとつ大切に束ねていく、というニュアンスが伝わってきます。
SG:これは僕のこだわりで、この曲では今までの思い出を振り返っているんですよね。友達でも恋人でも家族でも、振り返ってみると仲が良い時だけではなくて、仲が悪かったり喧嘩したりする時もあると思うんです。ただ、5年、10年が経ったら笑い話になったり、良い思い出になったりする。この曲は、どんな思い出も、自分を成長させてくれる大切なピースである、そのことを忘れないでほしいという思いを込めた曲なんですよ。ただのお別れの曲ではないですね。
――これは偶然かもしれないのですが、同じく別れをテーマとした「僕らまた」も今回の新曲もジャケットが黄色で、この2曲を合わせて聴くとすごく良いなと思いました。
SG:「僕らまた」がインディーズの3rdシングルで、今回がメジャー3rdシングルなので、リンクさせています。
――単なる偶然でジャケットの色が同じだったのではなく、確信的だったということですか?
SG:そうです。「僕らまた」に関しては、言うなれば、大きな海、一人の人間の人生そのものを描いた曲だったと思うんですよね。あの曲のMVは、生まれてから死ぬまでテクテクと歩き続けていく内容になっていて、その背景にはいろいろなものがあって、その中の大切な思い出、青春の一つが今回の新曲、という位置づけなんですよね。“教え”と言ったらすごく上から目線だと思われるかもしれないんですけど、この曲には僕が生きている中で大切にしていること、共有したいものが詰まっています。特に2番の〈“君の痛みを一つくれよ”/“僕の幸せ一つあげる”/“僕の痛みをもらってくれる?”/“君の幸せ一つ分けて!”〉というシンプルな歌詞の中に全てが詰まってると思ってるんですよね。なんて平和なんだ、っていう。
――人と人の関係性やコミュニケーションの理想的なあり方、その全てって感じですよね。
SG:僕はこうした生き方がベストだと思ってるんですけど、それこそ忙しい時とか、ちょっと切羽詰まってる時とかは、こうなれていない時もあります。僕自身、この曲を聴くと、人に優しくしよう、と改めて思えるようになりますね。