リアルサウンド連載「From Editors」第61回:知られざる吉原遊郭の文化に触れる

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

吉原遊郭の貴重な浮世絵や品物で文化に触れる

『大吉原展』

 1カ月ほど前ですが、SNSの賛否両論を見て気になった『大吉原展』へ。同展示は、吉原の遊郭を描いた江戸期浮世絵を中心に“吉原文化”を題材とした大規模展示会。喜多川歌麿、歌川広重、葛飾北斎と有名浮世絵師の作品が見られることが目玉の一つだった。吉原といえば、土屋アンナが花魁役を演じた映画『さくらん』をはじめ、最近だと『鬼滅の刃』や『薬屋のひとりごと』でも遊郭が描かれていたので、実際にどんな場所だったのかには興味がありました。

 浮世絵をしっかり見るのは初めてだったので、最初は美人画に描かれている女性がすべて同じような顔をしていることが不思議に思ったが、そこに明確な理由はないらしい。「人間を見極める重要なファクターが「顔つき」よりも「ファッション」にあった」(※1)という理由をネット記事で見つけ、「確かに!」と納得。顔は一緒だが、いやに着物や装飾品に関しては細かく丁寧に描かれている。中でも吉原遊郭の一日の生活を時間刻みで描いた歌麿の「青楼十二時」という作品は、遊女が寝て、身支度をして、休憩して、出かけて……という日常の風景と共に様々なバリエーションの衣装を見ることができます。重ね着ファッションのことをレイヤードと呼びますが、着物はまさにレイヤードの極みというほど、何層にも重ねられた配色や柄が美しいです。

 また、画家の高橋由一が花魁小稲を描いた重要文化財の油絵作品は、打って変わって写実的な肖像画になっていますが、モデルがその絵をみて「私はこんな顔じゃない」と泣いたエピソードも含めて、2次元が3次元になった際のギャップがあって興味深い。そのほか、遊女の生写真や装飾品の展示など、美人画が平面からリアルになっていく過程で、近代まで花魁がいたということに驚きました。

 このような知っているようで知らない日本の文化は多くあります。今回の展示で唯一撮影可能だった吉原の妓楼の立体模型は、上野にある下町風俗資料館に常設されているようなので、興味があるひとは覗いてみても良いかもしれません。

※1 https://intojapanwaraku.com/rock/art-rock/131457/#toc-8

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