miwa、装い新たに届ける“ありのままの肯定” 挑戦するたび自由度を増してきた15年も振り返る
ハイトーンの髪色と7色に染めたドレスという新鮮なビジュアルのジャケット写真とともに、7枚目のオリジナルアルバム『7th』をリリースしたmiwa。オリジナルアルバムとしては前作『Sparkle』から2年ぶりとなるが、その間にもシングルやEPなどを精力的にリリースしてきた。今作は、その中から四季をテーマに作ってきた楽曲たちを春・夏・秋・冬の流れでピックアップし、さらに新曲を書き下ろして作り上げた全17曲を収録。青春を感じさせるアップナンバーから情緒豊かなバラードまで、人生そのものを感じさせるような1枚になっており、新曲ではラッパーとの初コラボを果たすなど、恐れず挑戦する姿勢はアルバム全体のメッセージ性にも繋がっている。今作のために書き下ろされた5つの新曲の話を軸に、デビューから15年目に突入した今の想いを語ってもらった。(上野三樹)
「正の感情も負の感情も、自分を彩る一つ」
――前作から2年ぶりのリリースとなる7枚目のオリジナルアルバム『7th』は17曲入りというボリューム感のある作品になりました。どんな制作でしたか。
miwa:全部で何曲入りにしようというのは決めずに「今、作りたいもの」をテーマに新曲を書いていき、結果的に5曲書いてから収録曲と曲順を決めたんです。前回のアルバム以降EPとシングルをリリースしてきましたが、アップテンポの曲が少なかったのでライブで歌って楽しめるような曲を書き下ろしたいなと思っていました。そして、EPでは季節をテーマにした楽曲を書いてきたので、四季の彩りを感じられるような曲が集まっていたんです。それだけでなく、学生時代を感じさせるテーマの曲もあれば、30代になった今の自分だからこそ書けた曲もあるので、1枚を通して人生を感じさせるようなものにできるなと。なので四季折々の色をテーマにしつつ、年齢を重ねて人生の流れを感じられるようなアルバムにしたいと思っていました。ファンの方たちも、15年分一緒に年齢を重ねてきてる人や、もちろん私が活動してきた途中でファンになってくれた方もいると思うので、そんな皆さんがこのアルバムを聴いて、いつか“今”を振り返ったときに、時の流れを感じてもらえるようなアーカイブ的な存在として、このアルバム『7th』を作れたらいいなと思っていました。
――1曲目の「GIRL CRUSH」は、まさに今作を象徴するようなテーマ性のある1曲ですね。
miwa:はい。制作では毎回、そのアルバムを代表するような楽曲を書き下ろしています。今回は『7th』というタイトルなので、セブンスコードで曲を作ってみようと思ってでき上がったのが「GIRL CRUSH」です。セブンスコードって、曲の流れの中で使うことはありましたが、インパクトが大きいコードなのであまり積極的には使っていなかったんです。なので、セブンスコードをメインに作るというのは今回が初めてでした。
――〈私は無敵よ/愛のために進もう〉というメッセージが真っ直ぐに響いてきます。
miwa:〈誰だって主人公〉というのが歌詞のテーマでした。自分自身の生き方はもちろん、“誰か”のこともありのままを全肯定する、そんなメッセージをこのアルバムを通して伝えたいと思ったんです。今回のアルバムで四季を彩る曲や人生の流れをテーマにしていく中で、誰にも染まらずに自分は自分で染めるというメッセージが浮かんで。人生においてその時々でいろんな色を感じながら生きているけれど、どの自分も肯定されるべきだし、正の感情も負の感情もある。時には自己嫌悪に陥ることもあると思うんですけど、そんな自分さえも自分を彩る一つなんだよって。怒りや憎しみといった負の感情ですら、なぜ生まれるのかみたいなところを突き詰めて音楽に落とし込めば、誰かと共有できるものなんじゃないかって思ったんです。このアルバム制作の中で“七情”という言葉を知ったんですけど、喜・怒・哀・楽の他に、愛・悪・欲の3つが加わっていて。その全ての感情を否定せずに受け入れて、全ての側面が自分自身だと思えたら、それがきっと“ありのままを全肯定すること”に繋がるのかなと考えながら「GIRL CRUSH」を作っていきました。
――miwaさんご自身の新しいビジュアルイメージにもぴったりな1曲ですね。
miwa:新しいサウンドの楽曲に合わせて自分も新しく生まれ変わって、アルバムをリリースするときにインパクトを与えたかったんです。こうしたビジュアルもそうですし、アルバムをリリースすることをいろんな側面から楽しんでもらえるようにしたいなと思って購入特典を7種類用意したり、完全生産限定盤についてくるピックの色も7色あって、みんなに「何色が出るかな?」って楽しんでもらいたくて。ジャケット写真で着ているドレスも、自分で自分自身を7つの輝く色に染めるという意味で、白いドレスを1から染めているんです。
ラッパーとの初コラボから得た刺激や発見
――2曲目の「BUZZ!!!」は英語、韓国語、日本語で歌詞が書かれていますが、これはどのようなアイデアだったのでしょうか。
miwa:この曲は、YouTubeやInstagramといったSNSで使われている、いまどきっぽい決め台詞を恋愛感情に例えて歌詞のモチーフにできないかなと思って書き始めました。例えば「チャンネル登録してね」とか「フォローしてね」とか「いいねしてね」とか。今だからこそSNSで使われている言葉だけど、それってきっと好きな人に見てもらいたいとか、好きな人にいいねしてもらいたいっていう想いがみんなあるんじゃないかなと思ったんです。
――そこで〈君とバズりたい〉というキラーフレーズが出てきたんですね。
miwa:そうですね。「バズる」という言葉も、今はSNSだけではなくて日常的なワードとして認識されていますよね。言葉ってそうやってどんどん発展していくし、自分の中でバズり続けている想いを好きな人に対して使いたいと思うようになったら、それはもう恋だと言えるんじゃないかなって。最初は英語と日本語を混ぜて歌おうと思っていたんですけど、Bメロに好きな韓国語を入れて謎めいた曲にしたくなったんですよね。韓国ドラマでよく出てくるようなスラングを取り入れています。
――8曲目の「oARTo」はエモーショナルなダンスチューンで、ライブで聴くのが楽しみな1曲です。
miwa:「BUZZ!!!」はSNSをモチーフにした楽しい曲でしたが、「oARTo」は逆にダークサイドというか「SNSから1回離れよう」というのがテーマです。SNSは生活とは切っても切り離せないくらい根づいているもので、その中で楽しめることもあるけど、時にはスマホの電源をオフにして、リアルを楽しもうよっていう瞬間もあるよねと思ったり。何気なく見てただけなのに負の感情を受け取る瞬間もあるだろうから、せめてライブに来ている瞬間はスマホを気にせず全部解放して楽しもう、というメッセージソングでもあります。
――11曲目の「キミはナガレボシ」はどこか浮遊感のあるメロディが心地いい曲に仕上がっています。
miwa:この曲はタイトルにもあるように、“突然降ってくる流れ星みたいに〈キミ〉が心の中に入ってきたよ”というロマンチックな心情がテーマになっています。
――ロマンチックなテーマはどういうときに思い浮かぶものですか。
miwa:だいたい韓国ドラマを観ているときですね。韓国ドラマはもう観尽くしちゃったんじゃないかってくらい、日常的にたくさん観ています(笑)。ドラマのOSTも本当に素晴らしいものが多いので勉強になりますし、いい刺激をもらえていて。そうした日常でのインプットを、制作期間に入ったときに音楽に落とし込めているなと思います。
――そしてラストの「7days」はキュートなヒップホップ調のトラックで、「GIRL CRUSH」のテーマ性とも通じたメッセージが込められています。
miwa:1週間を、曜日を意識しながら生きている感覚が書きたくて。学生さんは、平日は学校で好きな子に会えるけど付き合ってないと土日は会えないとか、会社勤めの方も平日は仕事だけどこの曜日はあの人に会えるとか、そういうことがあるんだろうなと想像しながら書きました。この曲ではラッパーのRude-αさんとコラボしたこともすごく楽しかったですね。「GIRL CRUSH」でもラッパーの心之助さんとコラボしたんですけど、またスタイルが違って。ずっとラップをやってみたいなと思っていたので、今回のアルバム制作ではお二方とコラボできてよかったです。ラップのフロウやワードセンスが、メロディから歌詞を書く人とはまた違うんだなっていう発見もありました。