SUPER BEAVER、徳永英明、星街すいせいらが表現するスキマスイッチのポップワールド トリビュートAL全曲レビュー
スキマスイッチのデビュー20周年を記念したトリビュートアルバム『みんなのスキマスイッチ』がリリースされた。
2003年にシングル『view』でメジャーデビューし、昨年20周年を迎えたスキマスイッチ。全国ホールツアー『POPMAN’S WORLD 2023』の開催、ベストアルバム『POPMAN’S WORLD -Second-』リリースなどアニバーサリーイヤーに相応しい活動を繰り広げてきた。
「奏(かなで)」「全力少年」「ボクノート」「ゴールデンタイムラバー」「Revival」。デビュー以来、数多くのヒット曲を生み出し、J-POPシーンで確固たる(そして、めちゃくちゃ親しみやすい)存在感を示してきた大橋卓弥と常田真太郎。独創的なソングライティングとアレンジ、誰もが楽しめるポップネスを共存させた楽曲は、同世代からZ世代まで幅広いリスナーに浸透している。ここ数年は“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としても評価され、はっとり(マカロニえんぴつ)、Ayase(YOASOBI)、藤原聡(Official髭男dism)などが影響を受けたことを公言。スキマスイッチは平成から令和へとJ-POPのメソッドを繋ぐ、きわめて大きな役割を果たしていると言っても過言ではないだろう。
トリビュートアルバム『みんなのスキマスイッチ』にも、スキマスイッチとゆかりのあるアーティスト、彼らをリスペクトするアーティスト11組が参加。それぞれの解釈、愛着をたっぷりと注いだトラックが収録されている。
CDジャケットは、スキマスイッチ初期三部作(『夏雲ノイズ』『空創クリップ』『夕風ブレンド』)を手がけたイラストレーター 塩田雅紀氏による、オーディエンスが待つフェス会場にスキマスイッチの2人が向かう様子をイメージして描かれたイラスト。タイトル通り、“みんなに愛されるスキマスッチ”を象徴するトリビュートアルバムに仕上がっている。
では、『みんなのスキマスイッチ』に収められた11曲を紹介していこう。
奏(かなで)/Uru
スキマスイッチのライブを観たことがプロを志すきっかけになったというUruが選んだのは、代表曲の一つ「奏(かなで)」。ピアノ、弦楽器によるクラシカルなアレンジのなかで、大切な人と離れ離れになる瞬間、それでも〈ふたりはいつもどんな時もつながっていける〉という切実な思いを抑制の効いたボーカルで表現している。感情の露出を抑えることで、楽曲に描かれた情景や心情が真っ直ぐに伝わってくる、原曲への強いリスペクトが反映されたトラックだ。
ふれて未来を/HY
音楽フェス『HY SKY Fes 2023』にスキマスイッチが出演、HYの代表曲「366日」のコラボバージョン「366日 feat.大橋卓弥」が配信されるなど、以前から交流があるHYは「ふれて未来を」をカバー。沖縄の伝統楽器の三線を取り入れたアレンジ、リラックスした雰囲気の演奏とボーカル、最後のサビに登場する美しいハーモニーなど、HYの個性をしっかりと反映。“みんなで楽しく歌って、踊ってる”光景が浮かぶ、温かみのあるテイクだ。
全力少年/SHISHAMO
始まった瞬間にテンションが上がるイントロはもちろんギターで演奏。目の前で演奏しているような臨場感と“歌”を大事にしたアレンジが印象的なのは、SHISHAMOによる「全力少年」だ。3ピースならではの潔いアレンジ面と、瑞々しいポジティブ感を放つ宮崎朝子のボーカルも素晴らしく、原曲の新たな魅力を引き出すことに成功している。2020年に発表された“常田真太郎×SHISHAMO”名義による「天才の種」(中村憲剛へ向けて書き下ろした楽曲)もぜひチェックしてほしい。
雨待ち風/Aimer
Aimerのアルバム『daydream』(2016年)に収録された楽曲「Hz」を提供するなど、以前からスキマスイッチと交流があったAimer。彼女がカバーしたのは〈遠く どこまででも続いて行く空〉というラインではじまるバラードナンバー「雨待ち風」。切なさと憂いをまといながら、楽曲が進むにつれて少しずつ解放感が増していくこの曲にAimerは、豊かなボーカル表現によって生々しい躍動感を与えている。壮大なストリングスを取り入れたアレンジも魅力的だ。