ヨルシカ、『月と猫のダンス』追加公演で描いた物語とは 新たな可能性を見せたライブのあり方

ヨルシカ『月と猫のダンス』再演レポ

 終盤は「斜陽」や「春泥棒」、「アルジャーノン」といった人気の楽曲が立て続けに奏でられていく。最後は暗闇の会場に無数のライトが星空のように散りばめられ、なんとも美しい情景が広がった。会場全体から大きな拍手が巻き起こった。

 今回の公演は、ステージで展開されるストーリーからひとつの物語としての独立性が強く感じられた。おそらくそこには、役者を起用したことが大きく作用していると思う。これまではn-bunaが物語を朗読することが多かったが、そうなるとヨルシカの世界の“内部”で起きている物語のような印象を受けるだろう。

 だが今回のように、物語をヨルシカとは別の第三者が朗読することで、“物語”と“ヨルシカの音楽”が並列して舞台上に存在し、相互に影響し合いながらストーリーが展開していくような感覚を覚えた。どちらがいいということではなく、音楽と物語が融合したライブにおいては非常に大きな違いであり、ヨルシカのライブ史としても重要な公演になったと感じる。

 今後、既存の演劇や物語を独自にヨルシカがアレンジして、コラボレーション的に披露するような公演が展開されることもあり得るのかもしれない。本公演はそれだけ可能性を感じさせてくれる、完成されたものだった。

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