Superfly、万感の想いと共に4年ぶりアリーナツアー完走 歌声と歓声が交差する感動的なステージに

 Superflyのアリーナツアー『Superfly Arena Tour 2024 “Heat Wave”』が3月21日、さいたまスーパーアリーナでファイナルを迎えた。

Superfly

 最新アルバム『Heat Wave』のリリースに伴う同ツアーは、当初2023年6月から開催を予定していたが、越智志帆(Vo)の喉の不調により全公演中止に。約半年間の休養を経て、年末の『第74回NHK紅白歌合戦』で完全復活のパフォーマンスを見せたSuperflyは、2月17日の愛知・ポートメッセなごや公演を皮切りに、3都市・5公演で『Heat Wave』ツアーの“再開催”に至った。ホーンセクション、ストリングス、5人編成のコーラス隊とともに行われた今回のツアー。その最終公演でSuperflyは、ダイナミズムと温かさを増した歌を高らかに響かせ、完全なカムバックを成し遂げた。

 会場が暗転すると、ステージが真っ赤な照明とスモークに包まれる。SEはたき火の音。さらに炎をモチーフにした映像とともに『Heat Wave』と文字が映され、大きな歓声が沸き起こる。幕開けはアルバム『Heat Wave』の収録曲「ダイナマイト」(☆/『Heat Wave』収録曲)。骨太のバンドサウンド、派手なホーンセクションとともに開放的な歌声が広がり、一瞬にして会場のテンションを引き上げた。さらに代表曲の一つ「Alright!!」ではアリーナに置かれた花道でパフォーマンス。サビでは大合唱が生まれ、心地よい一体感へとつながった。そして「こんばんは、Superflyです!」という挨拶とともに「Love & Peace Again!」(☆)へ。何気ない日常への愛しさ、前向きで温かいメッセージをたたえた歌がゆったりと響く場面は、ライブの最初のハイライトだったと思う。

 客席のあちこちから「志帆ちゃん!」と声がかかり、「今日はたくさん名前を呼んでくれるんですね。バンマスの名前も呼んで。“やっくーん”(バンマスの八橋義幸(Gt))って(笑)」と返す。リラックスした表情も印象的だ。

 「(当初の予定から)ツアーが延期になってしまったけど、スケジュールを合わせて、今日という日を選んでくれてありがとう」という言葉から、いなたさとポップネスを共存させたロックンロールナンバー「How Do I Survive?」。コーラス隊の振り付けを真似して楽しむ観客も多く、音楽を介したコミュニケーションがさらに濃くなっていく。

 セットリストの軸になっていたのはやはりアルバム『Heat Wave』の楽曲。ブルージーな匂いを振りまく「Together」(☆)では、ボトルネックギターの音色とともに〈一緒にいたい/一緒に笑い/一緒に眠りたい〉というフレーズを観客に手渡すように歌唱。「みんなも一緒に歌おう」と呼びかけ、大らかな歌声が広がっていく。さらにピアノ、バンジョーなどのオーガニックな響きが心に残った「Power Of Hug」(☆)。コロナ禍の時期、“独りじゃないからね”という思いを込めた作ったこの曲をオーディエンスの前で歌うことは、彼女にとっても大きな喜びだったはずだ。〈I'll be there for you〉というゴスペル調のコーラスも楽曲のメッセージを増幅させていた。

 ここでステージにたき火のオブジェが置かれた。越智はオレンジ色の薄いドレスを身に纏い、「座りましょうか」と観客に呼びかけ、アルバム『Heat Wave』のテーマについて話しはじまる。コロナの影響で思うような活動ができなかった時期も心は激しく動き、エネルギーが充満していたこと。その一方でアルバム『0』(2020年1月リリース)の頃から“癒し”を意識していたこと。“情熱”と“癒し”を併せ持った“たき火”というシンボルがアルバム『Heat Wave』のテーマになったことーー。ゆっくりと言葉を紡ぐ彼女からは、この4年間のなかで培ってきた思いがしっかりと伝わってきた。

 アコースティックスタイルで丁寧に歌われた失恋ソング「春のまぼろし」で親密な空間を生み出した後、越智は再び花道に進み、「Last Love Song」を披露。大きな布が宙を舞う幻想的な演出、失ってしまった愛を描いた歌詞が溶け合い、切なくも美しい音楽世界へと結びついた。

 ピアノ、ボーカル、コーラスだけで届けられた「Farewell」(☆)も強く心に残った。大切な人との別れを経験し、〈震えるほど好きだったことを 後悔したくないよ〉という思いを抱え、明日に向かって歩き始めるーーそんな感情を描いたこの曲からは、シンガーとしてのさらなる深みが真っ直ぐに伝わってきた。

 「みんなと一緒に歌うよ!」と呼びかけられた「ハッピーデイ」では再び観客のシンガロングが発生。4年ぶりとなった今回のツアーはSuperflyにとって初めての“声出し解禁”のステージ。全体を通して、“みんなの声を聴きたい、一緒に歌いたい”という思いに溢れていたことも印象的だった。

 バンドの編成にストリングスが加わり、インストナンバー「Ride The Heat Wave」へ。車のエンジン音から始まったのは「Mr. Cooper」(☆)。カラフルなワンピースに着替えたSuperflyは心地よいドライブ感に貫かれたロックチューンを満面の笑顔で歌い上げる。アニメと実写が融合した映像(越智が運転する“MINI COOPER”で都心からさいたまスーパーアリーナまでドライブ)も楽しい。続く「嘘とロマンス」では観客がタオルを振り回しながら踊りまくる。ホーン隊、ストリングス隊のメンバーがセンターステージに移動し、観客と一緒になって音楽を共有するなど、客席と舞台の距離を縮めるステージングもこのツアーの大きな見どころだったと思う。

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