shallm、紫 今&大宮陽和と示した新時代の息吹 liaの底知れぬ才能が弾けた2ndライブを観て
そして、彼女はこの日配信リリースされたばかりの新曲「花便り」をライブ初披露した。アイオライトの石言葉にちなんで制作したというこの楽曲。彼女は「自分の道を示してくれた人に宛てて書いた曲です。皆さんのなかには、自分を形作ってくれたような人はいますでしょうか」「それが友達だったり、恋人だったり、家族だったり、はたまた会ったことのない有名人やアーティストだったりすると思うんですけど、ぜひ皆さんのなかにいる、あなたを形作った大切な人のことを思い浮かべながら聴いてください」と客席に向けて呼び掛けると、このライブでの出会いを含む自らを形成してくれたすべての人々への感謝の想いを届けた。
その感動的なパフォーマンスに続いて、ノスタルジックな旋律が胸を打つミディアムバラード「短夜の星」を歌うと、青春の焦燥感がそのまま形になったようなアップチューン「if 1/2」に繋げ、手を振ったりハンドクラップして盛り上がる会場に切なくもあたたかな風が吹き抜けていく。その後のMCで、ライブグッズやバンドメンバーの紹介、「花便り」を皮切りに8月まで6カ月連続で配信リリースを行うことを告知すると、ここからはラストスパート。彼女が影響を受けたとたびたび語っている米津玄師(ハチ)の「マトリョシカ」では、ピックを客席に投げるサービスもしつつ、パンキッシュに弾ける。彼女のメジャーデビュー曲「センチメンタル☆ラッキーガール」(TVドラマ『女子高生、僧になる。』オープニング主題歌)では、オリエンタルなギターリフと軽快なグルーヴに乗せてエネルギッシュな歌声を響きわたらせた。
そこからボカロック的な疾走感と喧騒感が彼女らしい「脳内ディストーション」でフロアの熱気を一層上昇させると、ラストは「まっさかさマジック!」で締め。アニメのオープニングテーマらしいアップテンポで明るい曲調、喉がノッてきたのかますます伸びやかになっていくliaの溌剌とした歌声のみならず、〈出会い〉の喜びや楽しさをテーマにしたこの楽曲の歌詞が、普段は見知らぬ人同士が同じ目的のもと集うライブという場所において、さらに輝きを増す。会場全体が幸せな気持ちと高揚感に満たされるなか、ライブ本編は幕を閉じた。
アンコールは美波「ライラック」のカバーでスタート。生きていくうえで感じる窮屈な思いや渇き、人生の意味、その一瞬一瞬に向き合う気持ちを、ひたむきな歌声で届ける。〈人生そうラフに/人生そうタフに〉。そんなフレーズと、終盤での心の叫びのようなハイトーンから、さらに熱を帯びていくボーカルがあまりにも必死で胸を打つ。この曲は彼女のオリジナル曲ではないとしても、間違いなく彼女の“人生の道標”になったであろうことが伝わってくる、渾身のパフォーマンスだった。
そしてliaは、ずっと憧れていたLIQUIDROOMのステージに立てた感謝の気持ちと、今の思いを赤裸々に口にする。「うまくいかない時、“私は何をしているんだ”ってすごくネガティブに思っちゃって」「すごく楽しかったけど、苦しい2年でもありました」「でも、こんなにたくさんの人に聴いてもらえるようになってすごく嬉しいです」と涙ながらに話す彼女。「ずっと不安ですが、今日の日を思い出せば、きっとこれからも信じていけそうな気がします」「これからどんな夢のステージに立てたとしても、皆さんついてきてくれますか?」と聞くと、客席からはあたたかな声援と拍手が飛ぶ。「そういう気持ちを込めて作った曲をやって、終わりたいと思います。ありがとうございました」と語って、彼女がこの日の最後の楽曲として歌ったのは、自身の最初のオリジナル曲「夢幻ホログラム」。夢見た世界に向けてただ前に進む気持ちを歌った、ひたむきなまでにまっすぐなロックナンバーだ。サビの〈こんな日々を照らすような歌に変えて/向かっていこうあのステージへ〉をはじめ、ストレートな歌詞だからこそ余計に胸を打つ。liaは曲間で客席に向けて「最後、いけますか?」と直接呼び掛け、オーディエンスとこの日いちばんの一体感を作り上げてライブを締め括った。
shallmのライブを観てあらためて感じたのは、曲調/曲想の幅広さと、それをバンドの生演奏で表現してしまう技術力の高さだ。そもそもliaが作る楽曲はボカロやアニソンからの影響を感じさせるものが多いので、自然と演奏の難易度が高くなるはずだが、shallmはあくまでもliaを中心としたバンドプロジェクトなので、ライブでは名うてのミュージシャンをバンドメンバーに揃えることで演奏面でのクオリティを担保できる。それによって、ボカロもアニソンも横並びになった現代のJ-POPらしいオリジナルなバンドサウンドが実現できているのだ。そして、さらに感嘆すべきはliaの底知れぬ才能。歌唱力の高さと14曲を歌っても一切疲れを感じさせない安定感(むしろだんだん調子が乗っていた気がする)、ポップで耳馴染みがいいけど捻りもきいたメロディと歌詞、19歳らしいフレッシュな感性と19歳らしからぬ完成度の高さ。すでに『JAPAN JAM 2024』『METROCK 2024』といったフェスへの出演も決定しており、shallmがこの先さらに大きなステージに立つことは間違いないだろう。
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