乃木坂46、乗り越えた“試練”を糧に進む13年目への一歩 全124曲披露した12回目の『バスラ』
『第60回日本レコード大賞』で2年連続大賞受賞の偉業を成し遂げた20thシングル「シンクロニシティ」から、1期生・白石麻衣の卒業シングルでもある25thシングル「しあわせの保護色」まで全31曲を披露した「DAY3:2018-2020」は、生駒里奈や桜井玲香、西野七瀬、白石など初期からグループの顔として活躍してきた初期メンバーが相次いで卒業する中、それと入れ替わるように4期生という新たな戦力が加わるフェーズ。東京ドームという大きな夢を実現させたあと、メンバーが次のステップへと向かう3年間は、ある意味では過渡期と受け取ることもできるかもしれない。しかし、DAY2に久保が言ったように、「夢が叶ったらまた次の夢と、みんなで一歩ずつ進んでいく」という「乃木坂46の強み」を確立させた大事な期間でもある。3期生がどんどん頼もしさを備えていき、フレッシュな4期生が「I see...」という新たな武器を生み出したことで、彼女たちは苦難のコロナ禍を乗り切ったのではないだろうか。
また、コロナ禍を経たことで楽曲の持つパワーがリリース当時よりも増幅することとなった23rdシングル「Sing Out!」や、センターの遠藤さくらやその両サイドを固める賀喜遥香、筒井あやめの存在感が光る24thシングル「夜明けまで強がらなくてもいい」、小室哲哉が楽曲提供したデジタルシングル「Route 246」などの存在も忘れてはならない。 DAY1で披露したグループの基盤を固めた初期の楽曲群から大きく進化したこれらのナンバーは、結成から10年近くを経過したからこその表現が備わっており、実は今のメンバーにフィットしたものが多いと実感する瞬間も多々あった。意外なメンバーや組み合わせで歌われる初期楽曲も悪くないが、やはり観ていてピンと来るのはこの日や、続くDAY4の楽曲群であることはここで力説しておきたい。
この4日間で初めて振り入れをした曲、初めて観客の前で歌唱する楽曲数がもっとも多かったのは、間違いなく5期生だろう。そんな5期生を代表して井上和は、卒業生の齋藤飛鳥が大切にしてきた「Sing Out!」を歌唱する前に「乃木坂46がすごく好きだし、先輩方には今もすごく憧れているので、そのポジションに入れる喜びだったり同じ衣装を着られてうれしいと思う反面、それぞれが怖さだったり責任を感じながらステージに立っていました」と本音を吐露。続けて、「まだ自信を持って言うことはできないかもしれませんが、私たち5期生も乃木坂46のこれからをしっかり背負っていけるように、今を誇れるようにこのステージで皆さんと一緒に歌を歌って、一緒に楽しい思い出をたくさん作って、いろんな感動をこのステージで共有していけたらなと思います」と涙を滲ませながら宣言し、「Sing Out!」を華麗にパフォーマンスしてみせた。
そんな5期生の加入タイミングが、最終日である「DAY4:2021-2024」だ。この日は先の井上が初めてセンターを務めた33rdシングル「おひとりさま天国」、4期生の賀喜&遠藤がダブルセンターの34thシングル「Monopoly」、3期生の久保&山下のダブルセンターで新章幕開けを飾った32ndシングル「人は夢を二度見る」と、乃木坂46の“今”を象徴する楽曲でライブを開始。その後のユニット曲や期別曲ももちろん3〜5期生の持ち歌中心なので、昨夏の全国ツアーの延長線と受け取ることができた。また、3期生が「僕が手を叩く方へ」でクラップを通じて観客の心をひとつに束ね、4期生が「ジャンピングジョーカーフラッシュ」で会場の熱量を急加速させてから、5期生をフィーチャーしたパートへつなげると、原点の1曲「絶望の一秒前」やグループや先輩への新たなる所信表明「いつの日にか、あの歌を...」を堂々と歌い、全メンバーが一緒になって幸福感を打ち出す「17分間」で今の彼女たちらしさを見事にアピールしてみせた。
生田絵梨花や齋藤の卒業楽曲としての印象が強い「最後のTight Hug」や「ここにはないもの」を必要以上にエモーショナルに表現することなく、歴代の名曲を素直に歌い継ぐという演出も、個人的には“今”を大切にする上では重要だと思ったし(これは、「サヨナラの意味」などを歌唱した前3日間にも感じたことだ)、だからこそ現在進行形のグループとして「誰かの肩」を全員で合唱することにも強い意味を覚えた。そして、ライブを重ねることで楽曲が放つパワーがだんだんと増している「Actually...」や「踏んでしまった」も、それぞれの楽曲でセンターを務める中西、松尾美佑のパフォーマンス力や存在感含めて進化を続けていることが、この日もしっかりと感じ取ることができた。
そのほか、最終日には4月10日リリース予定の35thシングル「チャンスは平等」のサプライズお披露目も用意。山下をセンターに迎えたこの曲はクラシカルなディスコチューンという、これまでの乃木坂46にはなかったテイストで観る者を驚かせた。こうした挑戦がこの先どう受け止められるのか、そして山下が卒業したあとに残されたメンバーやこの先加入する予定の6期生がどのように引き継いでいくのかも、非常に気になるところだ。
山下が「次の『BIRTHDAY LIVE』には私自身ここにいないんですけど、3期生、4期生、5期生、そしてこれから入ってくる6期生が素敵な未来を作ってくれると信じています。輝く未来を作っていくために、これからも乃木坂46の応援をよろしくお願いします」、与田が「スタッフさんが“『BIRTHDAY LIVE』は乃木坂の成長記録”と言ったことが、すごく心に残っていて。このメンバーで乃木坂の歴史を一緒に刻めたんだと思うと、めっちゃ幸せって思います」と語り、遠藤が「心臓が潰れるほど緊張しても、不安に負けてしまっても、泣いちゃいそうなぐらい体が追いついていなくても、練習したのに本番で全然できなくても、涙が出るぐらい楽しいと思える瞬間があって、そこで頑張ってよかったと思えるから、私はやっぱりライブが好きなんだなと改めてこの4日間で感じることができたし、メンバーと一緒にまた歴史を刻めたのがとってもうれしいです。まだまだ自分にはできることがあるかなと思って、もっと大きくなりたい」とポジティブな言葉を寄せて、全123曲披露に加えて“+1曲”として「乃木坂の詩」で締め括った12年間の集大成と、13年目の第一歩となった『12th YEAR BIRTHDAY LIVE』。今の彼女たちは何も間違っていない、このまま迷わず突き進んでほしいと心の底から強く思えた4日間だった。
もちろん、現在の“グループの顔”のひとりである山下の卒業や夏には加入するであろう6期生の存在、井上に続く“5期生を先頭で引っ張っていくメンバー”をどう育てていくかなど、課題もたくさんある。久々に訪れた過酷な日々をキャプテンの梅澤は「これが乃木坂の伝統で、私たちにとっての試練」と表現したが、この試練を乗り越えたからこそ得られた自信が、メンバー一人ひとりに必ず芽生えているはず。その答えや結果を確認できる日を、今から楽しみに待ちたい。
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