Leina、Yaffleとのクリエイティブで獲得した新しい表現 “具体”と“抽象”のバランスが生む共感
“具体”と“抽象”のバランスが見事
ーーYaffleさんは、Leinaさんのクリエイティブに関してどんな印象を持ちましたか?
Yaffle:〈毛繕いをして寂しさ埋めるだけ〉のセカンドバースは確か、同時に出てきたんだよね?
Leina:そうですね。
Yaffle:こんなふうに、喋っている状態と歌っている状態の境界線がぼやけていくと、真実味もより増す気がします。Leinaちゃんが、ある意味“デザイン”として歌っているのではなく自分が思っていることをそのまま歌っていると、「この人は一体どんな人生を送っていたんだろう」と思いを馳せずにはいられない(笑)。ズズ……ズズ……って体に入っていくような感じ……すごく広く言えば、Leinaちゃんのジャンルがボーダレスなところもそうだし、生活音とビート自体の境界線が滲んでいる、この曲だとイントロのエンジン音もそう。
ーー境界線が滲んでいく様子は非常に官能的だと聞いていて思ったのですが、Leinaさんはこの曲で「境界線が滲む」ということを意識していますか?
Leina:そうですね。世の中白黒別れていることが多い中で、自分は様々なところがグレーな性格で生きづらさを感じることが多いのですが、以前もある人から、私の中の曖昧さは“侘び寂び”みたいでいいと言ってもらったことがあるんです。それに私、いろんな映画やドラマのキスシーンがすごく好きなんですよ。見つめ合う時の“間”というか……あの瞬間ってお互いに相手を求める表情や空気があるじゃないですか。見つめてキスまでにいくまでのグラデーションを、サビに落とし込もうとしたことも、境界線が滲む表現に繋がったのかもしれない。
〈傷つけても愛すよ/ただ見つめるだけ/何も言わずに/特別なキスをして〉というフレーズも、個人的にすごく気に入っているんです。一夜限りだからこそ、次いつ会えるかわからない、その不安もありながらのキスというのが、私はすごくロマンティックだと思ったし、自分が好きなあの瞬間をうまく落とし込めた歌詞だと思っていますね。
ーーまるで映画のワンシーンを見ているような映像的な歌詞ですよね。個人的にはゴダールの映画『気狂いピエロ』で、マリアンヌ(アンナ・カリーナ)が妻子ある昔の恋人フェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)と深夜ドライブするシーンを彷彿とさせます。
Leina:嬉しいです。ありがとうございます。確かにドライブには開放感と、今あるしがらみを振り切って走り去っていく逃避行的な要素がありますよね。二人の状況をいかに描写できるか。私もまず映像を思い浮かべながら言葉に落とし込んでいるので、「映像的な歌詞」と思ってもらえたのかもしれない。
Yaffle:Leinaちゃんの歌詞は、“具体”と“抽象”のバランスが見事だなと思います。聴き手に共感するために表現の抽象性を高める方法があるけど、やりすぎると誰にも刺さらなくなっていく。でも具体的な表現の場合、聴き手がそこから自分と共感できるところを勝手に拾い上げていけるわけじゃないですか。その人だけにしかできない経験を具体的に情景として述べているんだけど、自分の中の近い経験と繋げていく。そうやって“共感”していくのが素晴らしいと思っていて。それが今回の作品でバランスよくできているなと思いました。
自分にとって“新たな始まりの楽曲”にもなった
ーー今回、Yaffleさんのプロデュース現場を経験してどうでした?
Leina:いやもう、ずっと楽しかったですね(笑)。
Yaffle:Leinaちゃんはセッション慣れしているよね。普通みんな、作りかけのものを見せるのは恥ずかしいんですよ(笑)。コライトって基本的に作りかけのものを見せ合いながら進めていくわけじゃないですか。それが恥ずかしいと思う人は、「じゃあ、ここから先は持ち帰ります」みたいになってしまう。一人である程度進めてから渡そうとしがちなんですよね。でもLeinaちゃんとは、作りかけのものをお互いにポンポン見せ合っていけたので、作業もめちゃくちゃ早かった。
Leina:それこそYaffleさんの人柄だと思うんですけど、こちらが「恥ずかしい」と思わないよう、受け入れる態勢を作ってくださっていたからだと思います。リラックスしていないとアイデアってなかなか出にくいじゃないですか。Yaffleさんは出会った時からすごく穏やかに接してくださったので、それでコライトも躊躇なくできたんじゃないかなと。自分はパッと思いついたことをその場でパッと言ってしまうので(笑)、そこをしっかり受け止め「あ、いいね」と次に繋げてくださったのも、どんどんアイデアを出したくなった理由の一つだと思いますね。
ーー相手がリラックスするための雰囲気づくりなど、プロデューサーとして意識していることはありますか?
Yaffle:要は、「話をちゃんと聞くこと」なのかなと。例えば自分の中で「こうしたい」みたいなのがあると、それにとって都合のいい話だけを相手から聞きがちじゃないですか。そういう意味では、セッションをやる時は実際に会って話すまでは、「こうしよう」みたいなことを思わないように気をつけています。
アーティスト本人のパーソナルがほとんど反映されてない作品になってしまうと、それがどれだけヒットしたり高評価だったりしても、そんなに成果はないし嬉しくない。最初の会話の段階でズレちゃうと、それは進んでいくうちにどんどん大きくなって、マスタリング作業の段階になると施しようがないほど乖離してしまう。だからこそ、微細な話もちゃんと聞くようには心がけていますね。できているかはわからないけど(笑)。
Leina:今回、Yaffleさんのセンスと私のセンスが合わさったもの=(イコール)血で、その血が流れて「Highway」が生まれたという感覚があって、自分一人では到達し得なかった“新しい表現”を獲得できたのは本当に嬉しいです。「Highway」は、今回のEP『ReUnion』に入っている他の曲にはない、自分のルーツであるR&Bの要素全開で、とことん好きなように作らせてもらえました。自分にとって“新たな始まりの楽曲”にもなったのかなと思っています。
Yaffle:今度また違うテイストの曲もやってみたいですよね。
Leina:またご一緒できるのであれば、その時の新しいキーワードが現れると思うので、それをキャッチして一緒に曲作りしたいですね。
■リリース情報
「Highway」
配信はこちら
orcd.co/leina_highway
「ReUnion」
配信はこちら
https://orcd.co/leina_reunion
■ツアー情報
『Leina Live Tour 2024』
3月30日(土) 大阪 BIG CAT
4月12日(金) 福岡 BEAT STATION
4月29日(月祝)名古屋 SPADE BOX
5月17日(金)東京 LIQUIDROOM ebisu
■Leina 関連情報
X: https://twitter.com/doumo_leinadesu
Instagram: https://www.instagram.com/doumo_leinadesu/
YouTube: https://www.youtube.com/@doumo_leinadesu
TikTok: https://www.tiktok.com/@doumo_leinadesu
■Yaffle 関連情報
TOKA ウェブサイト: https://www.toka.jp/
YouTube: https://www.youtube.com/@YAFFL3
Instagram: https://www.instagram.com/yaffl3/
X: https://twitter.com/YAFFL3