文藝天国、“破壊”と“茶会”の2部構成で誘う音楽の旅路 新音楽ユニットも登場した2ndワンマン

 ここで、セットチェンジの時間へ。BGMとして優雅なクラシックが流れる中、ステージ上に洋風のライトやガーデン用のテーブルセットなどが次々と運び込まれていき、「第二部 茶会」の準備が進んでいく。そして、すみ、koが登場し、MCの時間へ。緊迫感に満ちた第一部とは打って変わって、カジュアルなやり取りを通して等身大の表情を見せていく2人。すみは、自分がiPadで描いたものやiMacで作ったものによって成り立っている今回のライブを振り返りながら、「空想って現実になるんだ」という深い感慨を語り、それを受けてkoが、このライブを共に作り上げた「裏方の皆さんに拍手をお願いします」と呼びかけると、客席から温かい拍手が起こった。続けて、すみが「ボーカル、私だと勘違いしている人けっこう多い」と語りつつ、「ボーカル・ハルに大きな拍手をお願いします」と呼びかけ、観客は大きな拍手で応える。

 そして、「日々、現実辛いと思いますけど、茶でも飲みましょう」というすみの言葉から、「第二部 茶会」が幕を開ける。第一部とは一転して、軽やかで、鮮やかなポップフィーリングを放つ楽曲が次々と披露されていき、いくつかの曲では すみがツリーチャイムを鳴らして楽曲に煌びやかな彩りを添える。ハルは、ほとんど微動だにせず歌っていた第一部とは異なり、しなやかに体を動かしながら自然体な歌声を届けていく。時おり、その歌声に熱いエモーションが滲む瞬間があり、それに呼応するようなkoのギタープレイも素晴らしかった。第二部のハイライトを飾ったのが、「探し物」をモチーフにした朗読が展開される中、壊死ニキが登場して客席を駆け回りながら身体全体で感情の高まりを表現した場面。その後に続く「フィルムカメラ」(ステージの背面には、壊死ニキが出演するMusic Film(文藝天国ではMVのことをこう称している)が映し出されていた)だった。まるで、ステージと客席の境が曖昧に溶けていくかのような体験で、文藝天国の世界への没入感がよりいっそう深まった時間だった。

 ライブ終盤、春の訪れを予感させる桜色のライティングによって彩られた「宿命論とチューリップ」、天井のミラーボールによって会場全体が燦々と照らし出された「エア・ブラスト」の後、一度3人が退場して、今回のライブのエンドロールが映し出される。たくさんのスタッフの手によって成り立っていることは言うまでもないが、すみとkoの名前がスタッフロールの中で何度も登場していて、今回のライブに込められた2人の想いやこだわり、その裏側にあったであろう努力や試行錯誤が手に取るように伝わってきた。エンドロールの後、最後の一曲「奇跡の再定義」が披露される。その瞬間、思わず目を覆いたくなるほど眩い真っ白なライトによって会場全体が明るく照らし出される。

 どこか懐かしさを感じさせる幻想的な轟音の中、ハルの美麗なファルセットが響き、そして、温かな拍手を受けながらハルが退場。シューゲイザー的なアウトロが轟く中、大量のスモークが徐々に視界を白く染め上げていき、爆音で鳴り続けるギターサウンドに身体全体を預ける極上の時間が続く。そして、少しずつ音が小さくなっていき、スモークが消えた頃には、もう2人の姿はステージにはなかった。現実世界に「着陸」した後も、文藝天国の世界で得た鮮烈な余韻がいつまでも胸の中に残り続けるような感動的なライブだった。

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