名無し之太郎、新星ギターレスバンドが拓く新たな音楽 メジャーデビュー前夜『0th』ワンマン

 そして、どこかトラッドフォーキーな「かわたれ」もメランコリックな歌で観客を魅了する一方で、曲が進むにつれ、ベース、ドラム、ピアノそれぞれに手数を増やしていきながら、転調も効果的に使って、演奏をぐっと盛り上げる。

 そこから「みなさん、ぜひ体を動かして楽しんでもらえると嬉しいです!」(林)となだれこんだ「ドライブ」のポップな曲調に観客が手拍子を始める。跳ねるピアノ、歌の裏でカウンターメロディを閃かせるベース、軽快なドラム――バンドの演奏も実にグルーヴィーだ。

 ワイプを求めた林に応え、観客が一斉に手を横に振り始めると、スタンディングのフロアに一体感が生まれる。その勢いと熱気のまま、演奏を止めずに繋げたのが「我儘」だ。高橋が奏でるエレピのループと中野のベースリフが交じり合いながらグルーヴを作る歌謡ジャズナンバー。エレピソロを含む間奏から演奏はファンキーにもなる。辛辣さとともに歌声に凄みも滲ませる林とウォーキングベースでジャジーなグルーヴを奏でる中野が巧みに立ち位置を入れ替え、ステージに動きを生み出していく。

 メジャーデビューシングルにこの曲を選んだのも大いに頷ける。なぜなら、この曲に対するメンバーたちの思い入れは一旦さておきながら、そのバンドアンサンブルは“名無し之太郎”がどういうバンドなのか象徴するものに思えるからだ。

 手数で魅せる軽快かつジャジーな二瓶(Dr)のドラムプレイとリズムを刻むだけではなく、ギターの代わりにメロディも奏でつつ、ラウドロックばりの重低音で下を支える中野のベースプレイという名無し之太郎ならではのアンサブルの妙も、この「我儘」ではより一層際立っていたように思う。

 そして、この日、バンドはその「我儘」を第1弾として3カ月連続でシングルを配信リリースすることも発表した。「全力で頑張っていきます! 応援よろしくお願いいたします!」(林)――メジャーデビューから一気に活動を加速させようと考えているバンドに、この日誰もが惜しみない拍手を送ったのだった。

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