Kis-My-Ft2「当たり前なことなんてない」 新体制6人で駆け抜けたアリーナツアーでの誠実さ

 MCを終えると、今年1月3日にリリースされ、同週の「オリコン週間シングルランキング」1位を獲得(※1)したシングル『HEARTBREAKER / C'monova』から「C'monova」を披露。彼らの個性を活かしたボーカルワークが冴えわたり、6人それぞれが音楽を全身で楽しんでいる様子が見られる、フリースタイルのパフォーマンスだ。ステージを左右に大きく動きながら、新しいKis-My-Ft2のスタイルを見せつけるような姿に会場中が引き込まれていく。

 白のロングジャケット姿で歌われた「想花」は、キスマイのボーカルグループとしての実力が存分に発揮されたバラード。客席が金木犀の香りに包まれ、五感で楽曲を堪能できる貴重なひと時となった。「雨 -Remix-」のイントロが始まると、会場が青く照らされ、センターステージにゆらゆらと光りながら揺れるクラゲのオブジェが浮かび上がる。会場全体が大きなアクアリウムになったような幻想的な風景だ。優しさを携えたユニゾンが美しい。さらに、緩急をつけたダンスとコーラスが大人の恋を彩る「Luv Bias」と、ラブソングで魅了する。

 パープルの衣装に着替え、「Tokyo-Kis」はアーバンなムードたっぷりで歌われた。ソロダンスのインターバルを挟み、炎の特効を背に「PSYCHO」、シリアスな芸術性の高い「Black & White」とハードなパフォーマンスが続く。

 いよいよライブもラストスパートへ。客席にシンガロングを求めた「Dream On」から、ヒット曲や人気曲を織り交ぜたマッシュアップメドレーがスタート。会場中のファンとコミュニケーションを交わし、ますます興奮の渦に巻き込んでゆく。曲中、千賀が「これが今のKis-My-Ft2です! これからも俺たちについてきてください!」とシャウトすると、ファンも大きな歓声で返すのだった。

 本編最後の曲は、「僕たちにとってもみなさんにとってもすごく大切な曲」と紹介された「ともに」。7人体制の最後にリリースされた楽曲だ。囲み取材でも本ツアーでファンから自然発生的に起こったアクションだと明かされたが、会場全体がペンライトを北山のメンバーカラーである赤色に変え、キスマイとファンがともにあることを示された。約束を交わすように歌声を贈り合い、絆を確かめながら、本編が終了した。
 
 エンドロールの最後に「これからもみんなとともに」「当たり前なことなんてない」「いつもありがとう」と、キスマイらしいメッセージが掲げられると、ツアーTシャツに身を包んだ6人がローラースケート姿でステージに再登場。花道からセンターステージ、外周、サブステージと軽やかに移動しながら「Everybody Go」を披露した。「Sweet Melody」「Yeah E Yeah!!!!!!!」「Thank youじゃん!」では、スタンド席の合間を縫うようにトロッコで移動。より近くでファンへ感謝を伝え、多幸感に包まれながらライブが終了した。

 濃密で五感に訴えかけるステージング、MCでのチャーミングな一面や和やかなトークも含め、クオリティの高いライブだった。これまでの経験や実績に裏打ちされたスキルに加えて、6人ならではの演出やパフォーマンス、新たなチャレンジを打ち出し、新体制のKis-My-Ft2を強く印象づけた。

 だが、今回のライブでいちばん印象的だったのは、彼らの誠実さである。ファンに対してはもちろん、自身やメンバーに、そして楽曲一つひとつに真摯に向き合い、ツアータイトルである「For dear life」=「全力を尽くす」を実践し続けていた。その姿からは、彼らの優しさや真面目さといった人間味、そして決意と覚悟が強く感じられたのだ。


 この日の夜公演では、ツアー中にファンから寄せられたメッセージがサプライズでプレゼントされたという。メッセージは金テープとなって彼らに降り注ぎ、またステージ裏から楽屋までの通路約150m分の幕が張られ、約3万ものメッセージが掲げられた。大規模なアリーナツアーでこのようなサプライズが実行できたのは、ファンとアーティストの間に、確かな絆と信頼があるという証だろう。

 強さと優しさを感じさせた新生Kis-My-Ft2。初夏にはオリジナルアルバムリリースと東名阪ドームツアー開催が予定されている。ファンとの関係性とその誠実さを大きな力に変え、また彼らにしか作れない音楽が届けられるはず――そう確信できたライブであった。

※1:https://www.oricon.co.jp/news/2309761/full/

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