櫻坂46「何歳の頃に戻りたいのか?」MV分析 加藤ヒデジンが落とし込む“同調圧力からの救済”

 山﨑と対峙するメンバーたちのダンスも本作の魅力だ。TAKAHIROによる緻密に練られたフォーメーションダンスでは、山﨑を取り囲むようにメンバーたちが円になっている。山﨑はそんなメンバーたちの同調圧力を振り払うかのようにダンスを見せていく。寄りと引きを巧みに織り交ぜながら臨場感を生み出し、櫻坂46の真髄でもあるダンスパフォーマンスの魅力を最大限に引き出している。

 大サビ前には山﨑がメンバーに担がれ、まるで神を祭るかのように迎え入れられる描写がある。これは加藤が言う“同調圧力からの救済”を映像に落とし込んだものだろう。そして、転調とともに雲ひとつない青空が広がる外へとロケーションが移り変わる。散りばめられた枯れ葉が一気に拡散する描写や、1サビで山﨑がウェイトレス姿の増本綺良や的野美青に対して大袋に集められた枯れ葉をぶちまけるシーンでは、これまでの過去を捨てて、新しく生まれ変わるというメッセージを読み取ることができる。歌詞のメッセージを深く読み取り、映像へと落とし込む加藤の手腕が存分に発揮されていたといっていい。

 加藤の理想を表現するためには、櫻坂46メンバーのパフォーマンス力が不可欠である。櫻坂46楽曲の自由な世界観と加藤の再現性の高さによって生み出された「何歳の頃に戻りたいのか?」MVはグループの歴史にとって重要な1ページとなった。常に最高傑作を更新続ける櫻坂46のポテンシャルは凄まじい。この先、どんな景色を私たちに見せてくれるのだろうか。

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