櫻坂46「何歳の頃に戻りたいのか?」MV分析 加藤ヒデジンが落とし込む“同調圧力からの救済”
2月21日に櫻坂46がリリースする8thシングル『何歳の頃に戻りたいのか?』表題曲のMVが公開から4日で100万再生を突破している(1月28日現在)。1月21日深夜放送の冠番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京系)にて選抜メンバーが発表され、センターは山﨑天、そのほかも二期生と三期生のみで構成された新世代を告げるフォーメーションとなった。
本作は「桜月」や「Start over!」などを手がけてきた音楽制作チームのナスカによる楽曲。欅坂46時代の後期にも「エキセントリック」や「黒い羊」などを作曲しており、ファンにとってはお馴染みのクリエイターである。多彩な音楽性で様々なサウンドを取り入れるナスカの手法と櫻坂46のパフォーマンスは絶妙な相性の良さを見せている。たとえば、「Start over!」ひとつをとっても、ナスカの独創的なサウンド構成が楽曲の持つ世界観を丁寧に描き出していた。
「何歳の頃に戻りたいのか?」は過ぎ去った過去に思いを馳せるのではなく、未来を夢見ろと力強く鼓舞する櫻坂46らしいメッセージ性の強い楽曲。ナスカ特有の小刻みなリズムで高揚感を高めていくイントロに対して、サビは優美なピアノラインとともに流れるように駆け抜けていくメロディラインで構成されており、起伏のあるメロディが独自の感慨を生む。そんな楽曲のMVの監督が「Start over!」から3作連続となる加藤ヒデジンだ。櫻坂46特有の強いメッセージ性を高い解像度で映像へと落とし込むのが本当に上手いと感じる。
「何歳の頃に戻りたいのか?」のMVはこれでもかと言わんばかりに加藤ヒデジン節が炸裂している。まず、冒頭ではバーに佇む山﨑天がトマトジュースらしき飲み物が注がれたグラスを飲み干し、そのグラスをテーブルに置いた瞬間に高揚感を煽るイントロが流れ始める。そこではメンバーの名前が表示されると、「ARE…」に続けて画面いっぱいに「SAKURAZAKA46」が大胆にクレジット。この手法は加藤らしい世界観と言えるだろう。加藤は自身のXの中で「自分は自分でしかないstart overの自由から、自分は何者なのか承認欲求の葛藤、そして最後は、自分は何色にも染まれる同調の支配。締めは救済で。利己から利他になっていってますね」とコメント。直接的には言及されていないもの「Start over!」「承認欲求」からの一連の作品群は3部作としてストーリーが地続きになっていることがわかる。
加藤の言う「何色にも染まれる同調の支配」。そのことが表れているのが、山﨑の衣装七変化だ。MVには白と黒のウェイトレスの衣装を着た他のメンバーたちが、自由に自己を表現している山﨑を異物であるかのように見つめる描写がある。そんな同調圧力を振り切るように、山﨑は一心不乱に踊り狂う。その対立構造に同調圧力に屈した山﨑以外と、自己を表現する山﨑を見出すことができる。山﨑が着ている衣装の数々は「Nobody’s fault」から櫻坂46の衣装デザインやスタイリングに携わっているRemi Takenouchiが手掛がけており、MV冒頭の衣装は『第97回装苑賞』のグランプリ作品で上村英太郎が手がけたものであることも明かされている。