星街すいせい、日本の攻略度は「20%くらい」 2024年のさらなる飛躍で誓う“VTuberの認知拡大”

 2023年、VTuberの認知拡大に大きく貢献した星街すいせい。ソロシンガー/Midnight Grand Orchestraのメンバーとして多くの音楽を届け、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」や音楽特番『THE MUSIC DAY 2023』(日本テレビ系)への出演。さらに熊本で開催されるロックフェス『ASO ROCK FEST FIRE 2023』にてパフォーマンスするなど、VTuberというフィールドを越えてパフォーマンスを届けてきた。

 本稿では、怒涛だった2023年の活動に対する手応え、新たなフェーズに突入する2024年に向けた意気込みをインタビュー。「ソロではVTuberをもっと広めたいという思いがより強くなっているんですよね」と語った星街すいせいが、次に目指すステージとは。(編集部)

VTuberを背負って活動している気持ちに勝手になっている

星街すいせい - Stellar Stellar / THE FIRST TAKE

ーー2023年の星街さんは本当に目覚ましい活躍を見せてくれました。ご自身ではどんな1年になったと感じていますか?

星街すいせい(以下、星街):2023年は年始からYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演させてもらい、そこからソロアルバム『Specter』の発売やソロライブ(『Hoshimachi Suisei 2nd SoloLive “Shout in Crisis”』)の開催を経て、活動5周年を迎えたりもして。5年という節目を迎えたことであらためて初心に戻り、「自分は何がやりたかったんだっけ?」っていうのを思い出しながら活動した1年だったような気がしますね。活動を始めた当初に想像していた以上に、たくさんの方に自分の音楽を聴いていただけるようになり、様々なメディアにも出させていただける機会も増えたことで、世間にVTuberという存在がもっともっと広く知られていったらいいなという思いがさらに強くなった1年でもありました。

ーー星街さんの存在によってVTuberの認知度は確実に高まっていますよね。ご自身としてもそれを実感することは多いんじゃないですか?

星街:テレビの音楽番組に出させてもらえたことで、「あ、VTuberという世界があるんだな」って知ってくれた人は多かったみたいですね。エゴサすると「すいちゃんがきっかけでVTuberを知りました」とか「ホロライブの配信を観るようになりました」といったコメントもけっこう見かけるので、そこはすごくありがたいなって思います。とは言え、それは決して私1人だけの力ではなくて。TikTokで楽曲が流行った(宝鐘)マリンや(しぐれ)ういちゃんをはじめとする、いろんな仲間がいてくれたからこそ、一般の層にも広く知られていったんじゃないかなと思います。

ーー7月には日本テレビ系の音楽特番『THE MUSIC DAY 2023』にVTuberとして初めて出演されました。「THE FIRST TAKE」もそうでしたが、“VTuber初”という惹句を背負った活動も多かったですよね。そこには多少なりともプレッシャーがあったのではないかなと想像するのですが。

星街:とにかく自分らしく、自分にできることをやろうという気持ちでは臨んでいたんですけど、「THE FIRST TAKE」も『THE MUSIC DAY』も一発で見せなければいけない場だったので、ドキドキはしますよね。変に失敗してしまったら、「VTuberってこんなもんか」って思われちゃうなっていう考えもあったので。どちらもなんとか上手くいって良かったです(笑)。

ーー充実した音楽活動の中で新たに手に入れられたものもありましたか?

星街:えーなんだろう。難しいな。でも、手に入れられたものという意味では“繋がり”かな。『Specter』というアルバムを出したことや、ミドグラ(Midnight Grand Orchestra)での活動を通して、いろんなクリエイターの方々と繋がりを持てたし、さらに言えば、9月30日に出演させていただいた野外フェス『ASO ROCK FESTIVAL FIRE 2023』(『阿蘇ロック』)でも、いろいろな出演者の方とご挨拶させていただくことができて。「VTuberという存在があるんですね」とか「新しい世界を見せてもらいました」といったありがたい言葉をいただきました。そういった繋がりは自分にとってすごく大きいものだなって思います。

ーー7月開催のバーチャルライブ『バズリズム LIVE V 2023』では、フジファブリックとのコラボパフォーマンスもありましたしね。星街さんの活動によって、VTuberがリアルアーティストとも絡める存在であることが証明されたんだと思います。

星街:VTuberは2次元の存在ではありますけど、やっていることはリアルのアーティストさんやアイドルの方々と変わらないよなって私はずっと思っていたんですよ。そこが“新しいアーティストの形”として受け入れられつつあるのは、すごく嬉しいことです。『阿蘇ロック』へ出演させてもらえたことで、今後のいろんな可能性を感じたところもありましたしね。野外フェスに出れるってことは、「もっと自由度の高い活動ができるよな」と思ったりとか。そうやっていろんな可能性に挑戦していくことで、今以上にVTuberがみなさんにとってもっと身近な存在になれそうな気がしています。

ーーちなみにアウェイな場所でライブすることにも怖さはあまり感じないですか?

星街:新しいことに挑戦する、新しいところに行くっていうのがすごく好きだし、楽しいと思える性分なんですよ。だから『阿蘇ロック』もそうでしたけど、「うぇーい!」って気持ちで立ち向かえます。「え、私のこと知らない人たちいっぱいなの? じゃあチャンネル登録者数、増えるやん!」みたいな気持ちでやってます(笑)。

Midnight Grand Orchestra『Igniter』Music Video

ーーソロと並行して、TAKU INOUEさんとの音楽プロジェクト・Midnight Grand Orchestraとしての活動も精力的にやられていますよね。ご自身の中で、それぞれの棲み分けみたいなものが明確になってきたところもありますか?

星街:元々は音楽性の部分で違いを感じてもらえたらいいなと思ってはいたんですよ。ソロでは主に自分の好みや自分自身をあらわす曲を歌っていき、ミドグラではイノタクさんと一緒に世界、物語を作り、語り部として表現していくイメージだったんです。でも最近はもうちょっと意識が変わってきたというか。ソロではVTuberをもっと広めたいという思いがより強くなっているんですよね。ある意味、VTuberを背負って活動している気持ちに勝手になっている(笑)。でも、一方のミドグラではVTuberという枠だけにとどまらず、普通のアーティストとしていろんな人に届いていけばいいなって思うようになって。そういう気持ちで向き合っていますね。

ーーいずれはソロの方でもVTuberという枠を取っ払った表現にシフトしていく可能性もあるんですかね?

星街:もちろんソロでの音楽も、普通のアーティストとして響いてくれたらいいなっていう気持ちはあります。でも、それ以上にVTuberを広げたい思いがやっぱり強いんですよ。VTuberという文化は音楽だけではなく、アイドル性を持っている人もたくさんいるし、ゲーム配信をはじめとする楽しい要素もあるわけなので、私はその全体がもっと普及していったらいいなって思うんです。そのきっかけになるようなソロ活動をしていきたいっていう気持ちはたぶん変わらないような気がしますね。

ーーそこは、どれだけ星街すいせいの世界が広がったとしても失われることのないVTuberとしての矜持ですね。

星街:うん、そうですね。

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