aimiの2023年はコラボレーションイヤーに 創作意欲の源となった音楽や趣味とは?

手料理を振る舞う、学校公演……音楽以外でaimiの活動を支えたものも

――聴いているものに影響されてという話がありましたが、今年、インスピレーションを受けたアルバムや楽曲はありますか?

aimi:私の楽曲に直接落とし込む感じではなかったですけど、私のアルバム・オブ・ザ・イヤー的なことで言うと、ヴィクトリア・モネの『JAGUAR II』です。ノスタルジックな雰囲気があるけど、さすがのペンワークで現代的なサウンドに落とし込まれていて。全部がフックじゃないけど、メロディのどこを切り取っても最高なんです。その抜かりないメロディセンスに圧倒されました。

――コピーして研究してみたり?

aimi:メロディをなぞったりしました。たとえば「On My Mama」という曲のサビは4つくらいしか音符を使ってないんですよ。こんなにシンプルなのに、なんでこんなにかっこいいの? みたいな。いろんなことができるだろうけど、あえて引き算して狭いレンジでメロディを作ってる。それがキャッチーでかっこいいなって思いました。

――ライブからインスピレーションを得たりは?

aimi:2023年は海外アーティストを3人観ました。ひとりは日本初のソロ公演だったUMIちゃん。オーディエンスと友達になるような人で、両手を広げて全員を抱きしめてしまいそうなエネルギーの持ち主でした。ライブのスタイルでは一番影響を受けたかもしれません。今年出た新曲「happy im」とか来日後に出た「why dont we go」とか、より広定義なR&Bで表現していて刺激をもらいました。あとはずっとライブ映像を見漁っていたケラーニを観に行きました。『Blue Water Road』という2022年に出したアルバムをひっさげたライブで、本調子ではなかったみたいですが、それでもヤバかったです。

――もうひとりは?

aimi:ダニエル・シーザーです。オルタナティブR&Bというよりかは、ロックっぽいライブで面白かったですね。めっちゃマイペースで、途中で曲をやめて弾き語りを始めたりとか。キューブの中で歌っているような布を使ったステージ演出や3つの巨大LEDスクリーンに映し出す映像とか、全部がダニエル・シーザーの世界観になっていて、映画を観るような感覚でした。そういったライブ演出はヒントになりましたね。

――MVはどうですか?

aimi:XGは見ちゃいました。「日本人で世界を制すってこういうことなのか」みたいな。こういうグループが世界に出て行くっていうことはそれだけ日本のアーティストへの注目度が高まるはずだから、何かヒントはないかな? っていう目線で見てましたね。

――音楽以外でインスピレーションを受けるものはありますか?

aimi:インスピレーションを受けるとなると難しいんですけど、自分がリセットできるというか、制作意欲が湧くポイントみたいなものはあります。

――何ですか?

aimi:手料理を振る舞う。

――料理を“する”じゃなくて、“振る舞う”なんですね。

aimi:そう。単純にメンタルヘルス的にめちゃくちゃ良くて。

――そもそも料理は日常的にするんですか?

aimi:料理はもともと好きです。基本的に自炊で、タコスとかタイ料理とか、和食も作ります。最近はフレンチとイタリアンにハマっていて好きなシェフの料理本を買って作っているんです。料理を“する”もいいし、“食べる”もいいんですけど、“振る舞う”とめっちゃ幸せな気持ちになるんですよ。それこそ『STAY READY vol.2』が終わってからaimiトリオを家に呼んで。

――aimiトリオ?

aimi:鍵盤の(竹田)麻里絵さんと大自然(DJ DAISHIZEN)さん。麻里絵さんの誕生日のサプライズも兼ねて家に呼んだんです。部屋を飾りつけて、どんどんご飯を食卓に持って行って。料理を作るのが大好きだから、そこでまず満たされる。それを提供する、みんなが喜んでくれるっていうのが音楽と似てるんですよね。

――作品をリリースする感覚に近い。

aimi:そう。リリースとか、ライブをするとか、みんなに会うとか、そういうのが自分にとって癒やしなんです。ひとりで作って、ひとりで食べて、黙々と技術を磨くというよりも、作って振る舞いたい。できるなら料理もみんなに食べてほしいです(笑)。

――その食事会が終わってみんなが帰ると余計に寂しさが募るなんてことは?

aimi:いや、ただただ満たされたぁ……って幸せな気分です(笑)。よし、これだけ贅沢したんだから頑張るぞみたいに気合いが入るんですよね。

――映画やドラマ、小説、漫画、そういう創作物からひらめきを得ることは? たとえば恋愛映画を見るとラブソングを書きたくなるとか、反対にラブソングを書くために恋愛映画を見てみるとか。

aimi:私は映画とかドラマをあまり見ないんです。影響を受けすぎちゃうから。そのモードになりすぎちゃったり、ハマりすぎちゃうんですよ。それが怖くて。どちらかというと、私は人との会話からインスピレーションをもらうタイプなので、家族と話してるときに良い助言をもらったら、それを活かせないかなと考えたり。あと音楽に詳しくない人と触れ合っている方がインスピレーションが湧きやすいと思います。

――なるほど。

aimi:あとは学校公演ですね。今年もあったんですけど、私の恩師が教えている中学校の文化祭の合唱コンクールでライブをしたんです。学校で歌うのは5回目だったんですけど、そういうライブを私はご褒美と呼んでいて。

――ご褒美?

aimi:通常のライブと違って、学生の吸収力が違うというか。感受性が豊かで、いろんな楽しみも悩みも持っているこの生徒たちに、何を伝えて、どんな気持ちになってもらいたいんだろう? って事前にも考えさせられるし、その場でもめちゃくちゃ刺激をもらうんです。だから、ご褒美なんです。

――これまでの5回はすべて同じ学校なんですか?

aimi:今年は中学校でしたけど、小・中・高とやったことがあります。

――まばゆいばかりにピュアな若者たちの前に立つわけですね。

aimi:そうなんです。ライブに行ったことがない子たちもいっぱいいて。だけど、イマドキの子だからインスタとかはやっていて、ライブが終わるとメッセージが来るんです。「シンガーソングライターをやってみたいと思いました」とか「実は受験で追い込まれていたけど元気もらえました」とか「毎日泣きそうなくらい学校が辛いけど、たった1時間で癒されました」とか。そういうメッセージを今回ももらえたんです。音楽がどうこうじゃなくて、音楽を通して何かを感じ合える。それが音楽の本質だと思っていて。そういう本質的な力を思い出させてくれるのが学校公演なんです。

――確かにそれは創作意欲に直結しそうですね。

aimi:あのときのあの場面でああいう曲があったら良かったのにと思ったりとか。自分が本当に伝えたいメッセージを思いつくんですよね。

aimiの2023年は「挑」

――今日は、いろいろな角度で2023年を振り返りましたが、aimiの2023年を漢字一文字で言うと?

aimi:「挑」かな。挑みまくりの年でしたから(笑)。もうめっちゃ挑みましたよ。でも、私のマインドがこれだけ変わったのはリアルサウンドなんですよ。猪又さんなんですよ。

――え、なんで(笑)?

aimi:こういう取材でアウトプットしたことによって自分の思っていることが言語化されたし、口にしたことに対する責任感が生じたことによって覚悟が決まった部分もあったし、押しつぶされそうになったりもしたし(笑)。だからこそ、自分がもっと健やかに約束できるものは何なんだろう? とか、みんなに気持ちよく発信できるものは何なのか? っていうことをすごく考えさせられたんですよね。2023年はいろんなモヤモヤもありつつ、そこに向かって挑み続けたんです。

――有言実行にしなきゃならないから。

aimi:そう。言ったことをやらない大人には絶対なりたくないっていう気持ちがずっと自分の中にあるから。やり抜けっていう感じの年だったんです。

――そんな一年を糧に、来年はどんなことに注力したいですか?

aimi:まずは曲作りに集中したいと思っています。作り方を今までと変えたいと思っていて。まずは私発信で曲を作るとか、Modesty Beats以外のプロデューサーとやってみるとか。あとは書きたいテーマからサウンドを探していく作業とか。

――これまで、そのパターンはないんですか?

aimi:ざっくりとしたテーマは先にあるんですけど、結局、R&Bの範囲内でやるので、どちらかというと曲先行っぽい感じの作り方になるんです。だけど、私が弾き語りで作ったものを誰に頼むと良くなるかな? みたいな考え方。アレンジャーみたいな関わり方をしてもらうと、どうなるんだろうっていう。もともと私はそのスタイルだったんですよ。だから、ちょっと原点回帰して、いろんな作り方をしてみたいなって思っています。

――そういう意味では、また新しい挑戦の年になりそうですね。

aimi:あまり目立たないでしょうけど、忙しいだろうなと思います。

――今度はいろんな作家/クリエイターとのコラボレーションイヤーになるっていう。

aimi:水面下でいろんな人たちにDMしまくるっていう(笑)。そういう日々になるんじゃないかなと思います。地道に修行したいなって思ってます。

aimiオフィシャルサイト:https://www.aimimusicofficial.com/

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