aimiの2023年はコラボレーションイヤーに 創作意欲の源となった音楽や趣味とは?
R&B界の期待の星、aimiにとって、2023年は飛躍の年だっただろう。EMI MARIAとの「How’s The Weather?」、JASMINEとの「Risk It All」と、良質なコラボシングルを連発し、R&Bファンに存在感をアピール。ラム酒ブランドBACARDÍの企画「BACARDI SOUND Distillery 音楽蒸溜所」では、tofubeatsと「No One Is」を共作し、ラテンR&Bにも挑戦した。さらに主催R&Bイベント『STAY READY vol.2』を成功裏に導き、そのイベントから生まれたソロ楽曲「(wanna vibe) with you」もリリース。そんな2023年をaimiは「コラボレーションイヤーだった」と振り返る。コラボは彼女にどんな気づきをもたらし、成長の糧となったのか。精力的なリリースを続ける才気煥発な彼女の創作意欲はどこから生まれてくるのか。2023年の活動を総括すると共に、そこから見えてきたものを教えてもらった。(猪又孝)
アーティストaimiとしての自我がようやく芽生えてきた
――2023年は「コラボレーションイヤーだった」そうですが、コラボを通して、どんなものが得られたように思いますか?
aimi:得られたことはめちゃくちゃ多かったです。誰かと何かを作ることは楽しいし、刺激をもらえるし、勉強になる。でも一番は、コラボすることで己を知ることが多かったと思います。この人はこんな良いところがある、じゃあ自分の良いところはどうやったら出せるだろうか、と。自分を別の角度からプロデュースする感覚があったのはコラボのおかげだったかもしれないです。
――tofubeatsとのコラボは相手側の土俵に乗る。EMI MARIAやJASMINEとのコラボはaimiの土俵に乗ってもらう。土俵の違いによる感覚の差はありましたか?
aimi:ありました。自分のフィールドに誰かが入ってくるときはその人のオリジナルよりおいしくあってほしいと思うし、その人が輝いてほしいと思うので、責任感が伴ってくる。一方、tofubeatsさんのビートに乗ったときは未開拓地に乗り込んでいくような感覚がありました。正直不安だったんですよね。ご本人と会えないという特殊な制作だったので、どうなるんだろうって。だけど、経験してみて、他の人のサウンドで聴くaimiというものへの興味が大きくなりました。もっと、そういうことをやりたいなと思いました。
――そんな2023年は、100点満点で言うと何点ですか?
aimi:めっちゃリアルに言うと、65点くらいですね。
――自己評価が低くないですか?
aimi:そうですか? 65点でも高くつけたなって思うくらい。
――多くの耳目を驚かしたと思うし、注目された1年だったと思います。
aimi:ベストを尽くしたってことで言うと100点をあげたいくらいの気持ちなんですけど、いろんなことが始まった年なので振り出しに戻った感じというか。またここから積み上げていかなくちゃっていう気持ちになったんです。コラボレーションをしたからこそ、私ひとりで何を伝えたいのか。『STAY READY』を通じてR&Bコミュニティを目の当たりにしたからこそ、これをもっと大きくするにはどうしたらいいか。そういうことを考えたときに課題まみれだなと。
――新たな目標が見えてきた感じ?
aimi:そうですね。アーティストaimiとしての自我がようやく芽生えてきたというか。なにかベクトルが変わった年だったんですよね。
――ベクトルが変わる=リスタートということではないですよね?
aimi:リスタートではないですね。
――リブランディング?
aimi:それに近いですね。R&Bを軸にすることは変わらないですが、大切に積み上げてきたアーカイブの先に描くものが以前と同じじゃダメだっていう。そういう意味で変化を求めてるんですよね。aimiはコロナ禍の時期から始まったプロジェクトなので、目の前にお客さんがいることが想像もつかないから、とにかく楽しんで作ろうっていうことが第一だったんです。その意識が、もっと上手になりたいとか、もっと海外っぽくしたいとか、そういう方向に進んでいたのが3rd EP『Chosen One』までの流れ。でも、ここ2年くらいライブをやれるようになって、目の前のオーディエンスにどんな気持ちになってほしいんだろうとか、私が人としてみんなと関わり合えるストーリーやメッセージって何なのかな? っていうことを考え始めるようになった。その意味でやるべきこと、やりたいことが見えてきた年でした。
ライブのバイブスを生かせた「(wanna vibe) with you」
――10月に出したソロ曲「(wanna vibe) with you」は、『STAY READY vol.2』で初披露された曲でした。
aimi:「(wanna vibe) with you」は応援してくれたみんな、あの会場にいてくれたみんなに向けて、思い出のフォトアルバムを作ってプレゼントするような気持ちで書きました。リリックビデオも自分で写真や動画を組み合わせて作ったんですけど、みんながInstagramのストーリーズに上げてくれた動画を入れたり、最後に私からのメッセージを入れたり、本当にビデオレターのような気持ちで作りました。〈ここから始まる new wave〉――“ここ”を信じてるっていう気持ちが詰まったラブレターみたいな曲です。
――ビートはModesty Beatsとどんなやりとりをして作ったんですか?
aimi:ライブでみんなが気持ちよく横に揺れられるようなピースで温かい曲を作りたいねと。かっこいい感じというよりは、一体感を生んでくれるような楽曲を作りたいというのがテーマでした。以前出した「Best of Me」の変化形というか、上ものはローファイで、ビートはちょっとバウンスできるような曲。みんなで歌いたいなということもあって、ちょっとポップな仕上がりでキャッチーな感じを目指しました。
――レコーディングではどんなことを意識しましたか?
aimi:今回初めて、曲を作ってライブで歌ってからレコーディングしたんです。ライブで感じたバイブスをそのままレコーディングに持ち込んだので、パキッと明るくて、思った以上にエネルギッシュなテイクが録れました。もともとはもうちょっとライトなふわっとしたボーカルのイメージだったんですけど、目の前にいたみんなの顔を思い浮かべながらレコーディングしたら全然違うボーカルになったので、今回はこの順番で正解だったなって。まさにみんなと作り上げたんだなって思いました。
――今回の歌声にはすごく軽やかな印象を受けました。バウンスはバウンスでも、ドンドンダンダンじゃなくて、トントンタンタンみたいな軽さ。
aimi:自分の高音のボーカルスタイルが、聴いているものに影響されて、より軽やかになってきていて。ピッチの当て方が早くなってきているんですけど、それを初めて自分のものにできたのが「(wanna vibe) with you」かもしれないです。メロディも繰り返しが多かったり、ちょっとフロウっぽいところが出てきたり、軽やかさが自然と出てきた。
――その軽やかさが楽曲のハッピー感にも繋がっています。
aimi:肩の力が抜けている感じはすごくあったと思います。やっぱりレコーディングとなると気合いが入ってガッと歌っちゃうんですけど、1回ライブで開放しているから(笑)。その開放感も相まって軽やかになったんだと思います。