学生から社会人まで、社会課題や平和について英語で語り合う機会に 『One Young World Summit 2023』アミューズ参加者座談会
言語の壁を超えた交流も
——『One Young World』では、実際みなさんはどういうスケジュールで行動をしたのでしょうか?
SARM:さっき話した通り、私は開会式から意識が変わって、とにかく話しかけようと思いました。昼間はいろんな国の宗教観だったり、そこから生まれた精神性にはどんなものがあるのか質問をして、お互いの文化や思想について情報や意見を交換しました。私はメインステージでスピーチを聞いていろいろ吸収することが多かったです。特に長い時間聞いていたのは最終日の「平和と和解」というテーマでした。
——南光さん、ベドーラさんはどのように過ごしたんでしょうか?
南光:メインステージも観ていましたが、一番記憶に残っているのはアクションセッションです。廊下のような場所にベンチや椅子がたくさん置いてあって、決められた時間に集まって一つのトピックについてひたすらみんなで話し合う濃密な時間が設定されているプログラムです。自分が参加したのは「For Better Healthcare(より良いヘルスケアのために)」というトピックでした。ヘルスケアの資源が足りているのか、人材はどうなのかといったことを、自分も話せるし、相手の意見も聞けるし、その中で新たな問いが生まれて……ということができるので、そのトピックについて考えや思いを深められるセッションでしたね。
ベドーラ:一日ずつメインテーマが設定されていて、私がメインステージのトークを聞きに行った時は、メンタルヘルスがテーマの日でした。スピーチの後にQ&Aセッションがあって、「メンタルヘルス」と「気候危機」について、いい言葉を聞いてメモしたり……。また、コミュニティエリアに行って、そこで偶然会った人と話すことも意識していました。一番印象的だったのが、一般公募でアミューズから参加したコーリア(留奈)さんと、南アフリカの男性とインドの女性と4人で深い話ができたこと。SNSによる若者のメンタルヘルスへの影響といった、各国に共通した問題もありますが、どういった点で問題視されているかが文化や歴史によっても違うという話ができました。あとは、一人ずつ違うワークショップにアサインされました。SARMの参加したワークショップが印象的でしたよね?
SARM:そうなんです。精神性や宗教観の話を聞いて、彼らの思想を理解しようとしても、彼らと同じように体感することが難しいと思っていた時に、「平和を伝染させるアート」というワークショップに参加しました。みんなで自分たちが思う“平和”を表現するアート作品を、並べられたペンやキラキラしたビーズで作っている最中に、ちょうど私の後ろでインドから参加された方が、インドの伝統楽器を演奏しながら歌い始めたんです。聴いたことのない音階と発声の仕方で、不思議な空気になって。でも、気がついたら身体が止まらなくなっちゃって、目の前に行って思うままに踊ったんですよね。そうしたらその方が、私のダンスにリラックス、メディテーション(瞑想)のような効果があると言ってくださって。私が「普段は歌を歌っている」と言ったら、「今すぐセッションしよう」となって、そのままセッションが始まったんです。彼女の伝統的な音・楽器の音階と、私の日本の伝統的なヨナ抜き音階が不思議とマッチして、セッションが終わった瞬間に、みんながすごく喜んでくれました。私は日本語で歌っていたんですけど、言葉が通じなくても伝わるものがあり、目に見えない何かを感じ取ってくれたんだと思います。たまたま動画を撮ってくれていた参加者の人がInstagramに投稿してくれて、現地のメディアの方や、『One Young World』のアイルランドのアカウントもストーリーズでシェアしてくれて、いろんな方から「見たよ」って声をかけてもらえて、そこからまたコミュニケーションの幅が広がりました。
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——身をもって「平和を伝染させる」ということが体感できたんですね。
SARM:「もっと知りたい」という感覚が自分の中に芽生え、完全に同じものが見えていたかはわからないですけど、彼女の音や出てくる声から流れ込んでくるものがあり、彼女の育ってきた環境や国の感覚、彼女の持っている国民性や愛、感性、自然の恵みなどを体感できた気がします。いろんな言葉でいろんな人に話を聞くことも一つですが、もっとダイレクトな体感として、言葉を超えてコミュニケーションできたことが、すごく大きな出来事でした。
——ほかに印象的な出来事や出会いはありましたか?
ベドーラ:「アートと教育」というアクションセッションに参加して、そこで「子どもへの教育だけじゃなく、大人にとっても新しいことを学ぶためにはアートとエンターテインメントがすごく役に立つし、大事だ」ということを話しました。
言語だけじゃなく、アート・エンタメによって、楽しい気分で様々なことを吸収する大事さについて話し、ある中央アフリカ共和国からの参加者は、アフリカの伝統的な文化が消えつつある中で、伝統的な文化を復活させようとスポーツやストーリーのゲームを作っているとのことです。アートやエンタメの大事さを感じる出来事でした。
南光:ベルファストに住んでいるアジア出身の方々と日本の社会課題、自分の課題領域である福祉の問題などについて話しました。日本の現状を問われて、イノベーティブな取り組みがなかなか生まれず、変化を避ける傾向がある、リスクを取って新しいことをしづらいと話したら、本気で不思議そうな顔をして「なぜなの?」と。「リスクを取ってでも変化を起こさないと。現状維持だったら今より悪くなることはないかもしれないけど、良くなることはない。今より良くしようと思ったら変化を恐れていてはだめだよね」と言われて。本当にその通りなんですけど、その意識が抜けている人も多いだろうなと感じて、帰国してから自分が通う大学の環境改革をしたいと企画書を作って提案しようと思いました。総長と直接話すことは叶いませんでしたが、何事もやる前から諦めてしまうのはもったいないと改めて感じています。