『呪術廻戦』『【推しの子】』『鬼滅の刃』…2023年、楽曲の妙が注目されたアニメEDテーマ

 ここ数年かけて、いわゆる“アニメ主題歌”の価値観は大きく変化した。アニメそのものが子どもやコア層に向けたものから幅広い世代が楽しめるコンテンツになったことで、物語を彩る主題歌もより大衆的な音楽へと変化を遂げている。注目アニメ作品のOP・EDを手掛けるメジャーアーティストも続々と増え、時にはその年を代表するムーブメントを巻き起こすことも。音楽とアニメは“カルチャー”として大なり小なり関連性があったが、その繋がりは近年より一層深まっているようにも感じられる。

 そんな中、作品の真髄に触れるほどいぶし銀の魅力が光るEDに魅了されるのは、アニメ・音楽好きにとって“あるある”な現象かもしれない。そこで今回は2023年にシーンを席巻した様々なアニメ主題歌の中から、楽曲の妙が特に話題を集めたEDにスポットを当て、その魅力をそれぞれに紹介していこうと思う。

 まず今年のシーンを語る上で外せないのは、初回90分の衝撃の展開で大勢の心を掴んだ『【推しの子】』だろう。OPのYOASOBI「アイドル」は文字通り世界的な一大ブームを巻き起こしたが、展開が進むにつれ不穏さを纏い始める物語を見事に反映したED、女王蜂「メフィスト」も必聴の1曲だ。「アイドル」との光の闇の対比も見事でありつつ、毎回先の展開が気になる絶妙な引きでエンドを迎える各話の、余韻に浸るBGMとしても秀逸なムードを纏う楽曲だ。

女王蜂『メフィスト(Mephisto)』Official MV

 アニメ主題歌のOPが作品の“顔”であるならば、EDは先述のように作品の余韻を司る存在と言って過言ない。作品によっては『【推しの子】』のようにOPとの対比性を持たせ、ストーリーの魅力をより多角的に表現するファクターとなることもある。その一つの例とも言えるのが、『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」に起用された崎山蒼志「燈」だ。

崎山蒼志 Soushi Sakiyama / 燈 Akari [Official Music Video]

 本筋の物語からは時系列を一度過去に移し、主役を作中のキーマンである五条悟・夏油傑の二人として展開した今作。OPのキタニタツヤ「青のすみか」は五条を主題とした一方、崎山蒼志はEDで夏油を主題とし、色相図でも対となる「燈」をタイトルに冠した。互いに背を向け、道を違えた男たち。彼らの戻らない、けれど彩り鮮やかな過去に優しく寄り添う、そんな穏やかな音像の中で物語の余韻を噛み締めた視聴者も多かったに違いない。

 この「燈」に顕著であるように、作品の余韻に大きく関与する故か、アニメEDにはミドル~ローテンポの優しく穏やかなバラード調の楽曲が起用されるケースも多い。2023年のアニメ作品で言えば『地獄楽』のUru「紙一重」、『ヴィンランド・サガ SEASON2』のhaju:harmonics「Ember」。また『機動戦士ガンダム 水星の魔女』2期のアイナ・ジ・エンド「Red:birthmark」や、『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』のmilet×MAN WITH A MISSION「コイコガレ」のように、ロック調かつ壮大なサウンドで物語の終幕を飾る楽曲も、EDとしてはまま見られる曲調だ。

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