『音楽の日』から『FNS歌謡祭』まで……音楽特番のダンスコラボ企画が盛り上がる理由
事務所の垣根を越えて、音楽特番でさまざまなダンス&ボーカルグループやアイドルグループがダンスカバーなどでコラボレーションする企画が大きな盛り上がりをみせている。
『音楽の日2023』(7月15日放送/TBS系)、『ベストヒット歌謡祭2023』(11月16日放送/読売テレビ・日本テレビ系)、『ベストアーティスト2023』(12月2日放送/日本テレビ系)、『2023 FNS歌謡祭』第1夜(12月6日放送/フジテレビ系)などはいずれも話題となった。この動きは今後も続くと思われることから、2023年は“ボーダレス化元年”と言ってもいいのではないか。
起点となった『音楽の日』、全員集結できたのは放送当日
コラボ企画を通して、各事務所のグループやメンバーは、これまでとは異なるポテンシャルや表情を見せるようになった。たとえばINI、なにわ男子、BE:FIRSTが共演した『ベストヒット歌謡祭2023』でもMCコーナーでは、同期3組とあり「実はこのメンバーとこのメンバーは仲が良くて」といった裏話が聞けた。些細なことかもしれないが、事務所間の垣根がなくなったことでこういったエピソードを聞けるようになった。
音楽特番におけるコラボ企画の起点となったのは、『音楽の日2023』だ。s**t kingz、DA PUMP、三代目J SOUL BROTHERS、GENERATIONS、JO1、INI、BE:FIRST、Travis Japan、&TEAM、郷ひろみ、PSYCHIC FEVER、DXTEEN、MAZZELら総勢90名が同じステージに立ち、それぞれのグループの楽曲を歌い、踊った。各グループの選抜メンバーたちによる“シャッフルユニット”も実現するなど、夢のような時間となった。
筆者は、同企画の演出・構成・振付を担当したs**t kingzからOguriに番組放送後、インタビューをおこなった。特に印象に残っているOguriのコメントは「全員が集まることができたのは当日」ということだった(※1)。
これだけのグループやメンバーが集まった企画なので、事前に一緒にレッスンなどを行なうことは不可能に近い。そのため、番組で披露する振付やフォーメーションをまずアシスタントのダンサーに覚えてもらったのだそうだ。その構成案を各グループに送って練習してもらったり、アシスタントが直接振り渡しへ行ったりしたのだという。
Oguriのこの言葉は、他の音楽特番においても同様のことが言える。コラボ企画が増えてはいるものの、その分、演者たち、各事務所や番組などスタッフサイドには多大な労力と企画運営力がのしかかってくる。特にスケジュール面での課題は常についてまわることだろう。なにより「人気グループのコラボゆえに事前に全員で集まって練習することができない」というのは、大勢の視聴者が注目する音楽特番においてリスクも大きい。各グループのメンバーは「自分たちの活動」が中心にあるが、コラボ企画が増加すると、そちらの比重もかなりのものとなるはず。
コラボ企画は見た目には華やかではあるが、決してイージーなものではないのだ。多忙なスケジュールの合間を縫って各自で練習し、本番当日にようやく全員で集まって合わせることを考えると、各番組で披露されているコラボ企画の完成度がいかに驚異的な高さであるかが分かる。しかもいろいろな難題があることを観る側に一切抱かせないところがプロフェッショナル。コラボ企画を通して私たちに夢や娯楽をきっちり与えてくれる。その点で、それぞれのグループやメンバーの“凄み”を感じとることができる。