澤田 空海理、新たな時代が求める“良い歌”を紡ぐ音楽家 メジャーデビュー曲「遺書」に刻む宣言
宝物のような“良い歌”と出会った。自らと向き合うことで生まれた、共感性の高い傷だらけのポップソング。それは、たったひとりの人へ向けられたドラマティックな独白だ。シンガーソングライター・澤田 空海理の生み出す音楽は唯一無二の輝きを解き放つ。
鬼才、澤田 空海理が作曲をはじめたきっかけは偶然だった。オーストラリアへ留学した高校時代、暇を持て余してギターを手にしたからだという。憧れのアーティストがいるわけでもなく、ただ音楽家として、自分が生み出したいイメージを具現化することにこだわった。
これまで、ボカロ文化圏での活躍や、作編曲家として『アイドルマスター』シリーズ、TVアニメ『五等分の花嫁∬』のキャラクターソングを手掛け、當山みれい、森七菜、ナナヲアカリ、三月のパンタシア、足立佳奈、いゔどっとなどへの楽曲提供。さらに、代表曲となった自身のナンバー「またねがあれば」は、シンガーの當山みれいからバーチャルシンガーの花譜まで、さまざまな表現者がカバー。総再生数は、1,000万回を超えている。
そんな澤田 空海理が、12月6日に配信シングル「遺書」でメジャーデビューした。本作は、たったひとりの女性に向けて書いた初めてのラブソングだ。もともと澤田 空海理は、とあるひとりのために向けた楽曲をいくつも発表してきた。今回彼が宛てたのは、日常を通じて創作の源を教わった人だという。しかしながら、すべて書き尽くしたとして目的は終止符を打つことになる。だが、最後に感情を振り絞って書いたのが本作だ。
〈良い曲ってなんだろうか。/多分、あなたが褒めてくれたものが全部そうだ。〉――そんな歌い出しから、タイトルとは裏腹な煌びやかなピアノによるサウンドが高揚するグッドメロディ。言うならば、澤田 空海理自身の芸術家としての独立宣言のような歌が生まれたのだ。
〈天才にはなれなかった。/でも、あなたが信じてくれたから凡才にはなれなかったよ。〉、創作の本質を教えてくれたあなたへ向けて、揺れ動く創作理由を自問自答しながら作品を構築していく。そんな様子が、まるでミュージカルのようにドラマティックなサウンドによって展開される。耳が喜ぶ、華やかなアレンジがいい。傷だらけの生々しい言葉に届けたいと言う気持ちが勝った、6分間の奇跡の歌だ。
〈良い曲ってなんだろうか。/多分、あなたが好きじゃない曲がそれになっていくんだ。/振り返っても、書き直しても、何も変われないから。〉。こうして、求める楽曲の定義に変化が起きていく。
ラスト、君がいないと寂しいという。“あなた”の不在へと至る歌が、澤田 空海理のメジャーデビュー曲となった。依存からの脱却なのだろうか。歌詞で言うところの〈歩幅を広げて〉いくための開かれた歌、それが「遺書」となった。