クボタカイ、『返事はいらない』リリースツアーレポート 最終公演で届けた19の“手紙”

 ライブは後半戦へ。「ここからはもっとぶち上がっていきたいと思います!」と宣言したクボタは、「Youth love」でクラップを促し、「ナイトイーター」でオーディエンスを跳ねさせ、フロアの熱気を高めていく。「TWICE」ではイントロで「手挙げな、手挙げな、千秋楽!」とラップ調で語りかけ、「いろいろな場所をまわってきたけど、東京はどうかな?」と煽りつつ、〈TWICE in boys TWICE in girls〉のシンガロングで会場をひとつにした。

 「恋愛は呪いと裏表のように思う」と語ったクボタ。深く誰かを愛するほど、いつか深く傷つくんじゃないかと不安になってしまう。それで相手に優しくできなくなってしまうのはもったいないと感じているという。そう語ったあとは、「自分の傷も相手の傷も受け入れて一歩踏み出す」、そんな意味を込めたという「ふたりぼっち」を披露し、明るくポップなサウンドで会場を彩った。そこから、恋人を忘れられない主人公の切ない心情が綴られた「夢で逢えたら」、〈愛している〉という冒頭の直球フレーズが印象的な「ロマンスでした」と、切ないラブソングが続く。

 本編ラストに届けられたのは、アルバムでも最後に収録されている「蝶つがい」。誰かを想う愛おしさや苦しさが、クボタの強くも儚げな歌声によって丁寧に紡がれていく。こうしてライブで聴くとよくわかるが、クボタの曲の歌詞は〈ひら ひら ひらと空へ逝く〉〈つた つた つたと落ちていく〉といった語感のよさもありながら、難しい言葉があまり使われていない。だからこそ心にすっと入ってくるし、聴き手自身の体験と重ねて多くの共感を呼ぶのだと思う。

 アンコールでは1曲目に「MENOU」を披露。次でラストの曲と紹介したところで、残念がるオーディエンスに向けて「僕も寂しい」と笑いかけた。「心に穴が空いた時にそれを埋められるような、彩ることのできるような音楽をまた作りたいと思います」と語り、「ピアス」を披露。サビではクラップも湧き起こり、温かいムードでライブは幕を閉じた。

 アンコールも含めて、19の“手紙”を届けたクボタカイ。この日、彼はMCで「コロナ禍では思うようにリアクションを受け取ることができなくて悔しかった」と発言していたのも印象的だった。フロアからの声援やシンガロング、それらの一つひとつを噛み締めていたのだろう。曲がアーティストからリスナーへ届けられる手紙なのだとしたら、その返事(リアクション)を直接もらえるのがライブなのかもしれない。ステージとフロアでの相互のコミュニケーションが感じられた一夜でもあった。

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