Creepy Nuts、『生業』ツアーで見せた初期衝動と新章 「ビリケン」を語るライブ後インタビューも

Creepy Nuts「ビリケン」の原点と新章

 Creepy Nutsのライブツアー『Creepy Nuts TWO MAN LIVE「生業」』。2019年から毎年行われている(2021年と2022年は年を跨いでの開催)、ツーマン形式でのライブシリーズが、今年は10月から11月にかけて全国8カ所、8アーティストを迎えた形で行われた。本稿では11月8日に行われたZepp Nagoyaでの緑黄色社会との対バンライブについてレポートする。また、10月11日に配信リリースされた新曲「ビリケン」についての筆者の分析とメンバーのショートインタビューは、ライブレポートの後編に付記したい。

対バンならではのリスペクトとコントラスト

 ツアーの全日程がソールドアウトとなった今回の『生業』シリーズ。Creepy Nuts×緑黄色社会の会場となったZepp Nagoya前には、開場前からライブを楽しみにする互いのファンが集い、この日への高い期待を感じさせる。

 まず、ゲストである緑黄色社会は「キャラクター」を皮切りに「Shout Baby」「Mela!」、新曲「花になって」など全12曲を披露。愛知出身ということもあり、ホームならではのリラックスした空気感と、カラフルなライブで会場を大いに盛り上げた。

R-指定

 そしてホストであるCreepy Nutsは、R-指定、DJ松永の二人ともに黒をトーンとした衣装で、白のライトを背にして逆光に映し出されるように登場。そのモノクロームなビジュアルは、緑黄色社会とは対照的であり、対バン形式ならではのコントラストを感じさせられた。

 ライブは「よふかしのうた」からスタート。そのまま「合法的トビ方ノススメ」「2way nice guy」と初っ端からトップスピードで盛り上げ、それに対してオーディエンスは会場が波打つようなジャンプと声援、手の振りで応える。続く「堕天」でのコール&レスポンスや 〈yeah〉パートでの大合唱など、ライブならではのコミュニケーションで会場の一体感は強まっていき、その盛り上がりに対して「完璧です、名古屋!」とR-指定はマイクを通して呼びかける。また「堕天」の複雑なベースラインの“泳ぎ”は、緑黄色社会の楽曲が持つファンクネスとも通じる部分を感じさせ、そういった発見が分かりやすい形で打ち出されるのも、対バンだからこそだろう。

 MCでは緑黄色社会のライブについて「思いっきり気合が入りました。バンドにフィジカルと腕力を感じました」(松永)、「俺たちもライブの腕力を見せたいと思います」(R-指定)と語り、リスペクトを言葉にする二人。緑黄色社会もMCの中でCreepy Nutsの魅力を語っており、非常に健康的な関係性を感じさせられた。

DJ松永

 そして「俺の体には俺の踏んできた韻やパンチラインが、言葉が刻まれているわけですよ」と丁寧に解説してからの「耳無し芳一Style」に続き、新曲となる「ビリケン」へ。トラップ系のビートに対して聴き取りやすく言葉を乗せた「耳無し芳一Style」から、ジャージークラブ系ビートに対してフリーキーなラップを乗せる「ビリケン」への展開は、Creepy Nutsが常に現在進行形であること、そして最新トレンドへの対抗心とシンパシーを変わらずに持ち続けていることを感じさせられた。また新曲にも関わらずオーディエンスが合唱とジャンプでこの曲にノる姿からは、この奇抜な楽曲がすでにファンには受け入れられている事実を認識させられ、オーディエンスの耳の鋭さも印象に残った。

 そういった最新形から2018年リリースの「紙様」へ。オーセンティックなビートとラップ、そして妬み嫉みのようなメッセージ性を持つこの曲が「ビリケン」から繋がることで強調される、その「構造的な落差」には驚かされるのだが、現在もCreepy Nutsに存在する「紙様」時代の“精神的な残り香”や、“その後の物語”としての「ビリケン」への展開を考えると、この流れに意味があることは理解できるだろう。そしてこのパートを、Creepy Nutsの持つメロディ力と歌力で表現する「Bad Orangez」で終わらせることで、彼らの持つスキルをこの一連の流れに落とし込もうとする意志を感じさせられた。

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