岡田奈々「私は本音で生きる」――AKB48卒業からソロデビューまでの激動 “本当の自分”と決意を語る

 AKB48を卒業してから半年。岡田奈々が、自身の誕生日でもある11月7日にフルアルバム『Asymmetry』をリリースした。もともと歌唱力に定評のあった彼女だが、今作では全曲で作詞も手掛ける“表現者”として、ソロアーティストデビューを華々しく飾る。

 リード曲の「裏切りの優等生」にはじまり、「この世から僕だけが消えることが出来たら」、「ネット弁慶の皆様へ」など、強烈なタイトルが並ぶ本作は、歌詞もストレートで過激な部分もある。だが、岡田本人は「これが素直な気持ちなんです」「歌詞で嘘がつけなくて」とあっけらかんと語ってくれた。

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私は「みんなが思っているようないい子じゃない」と伝えたかったんです

――岡田さんは、作詞初挑戦ながら今回のフルアルバムに収録されている13曲(ボーナストラック含む)すべての作詞を手掛けています。制作順にお話を聞いていきたいのですが、まず最初に作詞したのはどの曲ですか?

岡田奈々(以下、岡田):最初に書いたのは、「この世から僕だけが消えることが出来たら」ですね。今から1年前には、すでに書き終えていました。

――比較的抽象的な表現で、何かを失った寂しさが伝わってくる歌詞です。その時期の思いを書いたのでしょうか?

岡田:これは1年前歌詞を書いた当時よりも、さらに1年くらい前の出来事ですね。その時期に大恋愛があって、そこで感じた自分の葛藤を歌詞に込めました。あと、〈歪んだ〉とか〈脆い〉のような、ある意味で中二病っぽい言葉をわざと入れたのが特徴で。かなりリアルな内容ではあるんですけど、抽象的な表現になったぶん、意味深というか。深堀りしがいのある曲になりました。

――大恋愛があったとのことですが、失ったものというと?

岡田:失ったのは――人ですね。ただ失くなったわけではなくて、自分の手元から離れていってしまったという寂しさです。その人を手放すぐらいなら、自分が消えたいなと思ったのをきっかけに、この曲を書きました。

――その思いをずっと溜めていた。

岡田:はい。当時、携帯のメモにびっしりと自分の思いを書き留めていたので、そこから歌詞を。初めての作詞でしたけど、結構さらさら書けました。キャッチーにしたくてサビを同じ歌詞にしたのもあって、作りやすかったんだと思います。その次に書いたのが『「ありがとう、幸せになってね。」』でした。これは、完全に失ったあとの話ですね。「この世から僕だけが消えることが出来たら」は失いそうになっている最中の思いだったんですけど、この曲はそれを失ってからの心境を書いています。

――なるほど。この2曲は、対象が一緒なんですね。歌詞も、後半にいくにつれて過去形が目立って、終わってしまったことがわかります。

岡田:そうなんですよね。「君と幸せになりたかったけど、君は離れていくんだね」っていう。タイトルにもなっている「ありがとう、幸せになってね。」は、相手から言われた言葉ですね。だから、この2曲で書いた出来事というものは時期的にもあまり離れていないんです。半年くらいのあいだに起きているのかな。

――冒頭のセリフがとてもかわいらしくて、印象的です。

岡田:「もしもし」から始まる部分ですね。これもリアルな世界観を表現するうえで、入れたかったんです。この時の気持ちを表現するには、電話音が必要だなと思ったので入れました。

――この時期の岡田さんと言えば、当然現役アイドルでしたよね。そんな時期に起きた出来事もこうやってまっすぐ曲に反映するのが岡田さんらしいです。過去のインタビューを読んでも、本当に嘘がつけないんだなと感じますし。

岡田:そうなんですよ。いつも本音で話していますし、歌詞にも本当のことしか書いていないです。

――その次に書いた曲は?

岡田:次は、リード曲になっている「裏切りの優等生」です。去年、週刊誌で報道が出た時期に、すでにベースになるものは書き始めていて、今年の1月に完成させました。ファンの方たちには、ズシッと、グサッとくるような内容なんじゃないかなと思います。ただ、これは“岡田奈々”だから伝えられるメッセージだなとも感じているんですよ。アイドルだったからこそ生まれたあの感情を、アイドルを辞めた今書くしかないと。

――“裏切りの優等生”とは、岡田さん自身を言っていると想像がつきます。ただ、これまで「優等生ではない」という発言はいろんな場でしていたなと。なぜ、あえて自分を“優等生”と?

岡田:AKB48に在籍していた10年間、ずっと「真面目な優等生」と言われ続けてきたから、ですね。

――イメージ、ですね。

岡田:2017年の総選挙(『AKB48 49thシングル 選抜総選挙〜まずは戦おう!話はそれからだ〜』)のスピーチで、「(グループの)風紀委員長を目指します」と言ったことがあるんです。だから、“優等生”という印象が強く残っているんですよね。でも、人間の考え方って月日が経つにつれて変わるものじゃないですか。実際、2017年の自分と今の自分の考え方はまったくの別物。その変化を早い段階で自分から提示できなかったのがいけなかったんです。報道があった時も、自分で説明をしっかりできなかったこともいけなかった。本当に、自業自得だと思っています。そういう自分への戒めも込めた曲ですね。

――作詞にあたって軸にしたのもそのあたり?

岡田:それもあるんですけど、軸にしたのは“本当の自分”です。私は、「みんなが思っているようないい子じゃない」「本当は劣等生だったんだ」と伝えたかったんです。もともと人を愛することや誰かに尽くすことがすごく好きで、それを通して幸せを感じるタイプなので、歌詞の最後に〈I want to live for love/I want to die for love/This is the real me〉(愛に生きて/愛に死にたい/これが本当の私)という言葉を入れました。

――そういう偽りのない歌詞にすることが岡田さんのポリシーだと思うんですが、さらけ出すのは怖くなかったですか?

岡田:全然怖くなかったです。私は、自分のセクシャリティや好きな人を公表することは全然怖くないんです。だって、自分の愛おしいものを恥ずかしがる必要なんてないから。ただ、私は当時アイドルだったから、それは許されないことで。でも、もし自分がアイドルではなくひとりの人間として生きていいならば、いつでも言いたかったです。

――「裏切りの優等生」の次は、どの曲の歌詞を書きましたか?

岡田:「TAKOYAKI ROCK」です。『AKBINGO!』(日本テレビ系)の企画で、デザート部とオムライス部とコロッケ部とたこ焼き部がオリジナル曲を懸けてバチバチに戦っていた時期があって。私はたこ焼き部だったんですけど、最終的にデザート部に負けてしまったんです。それが悔しくて!(笑)。「誰も曲を書いてくれないなら私が書こう!」と思って。

――なるほど。その時の悔しい気持ちを、たこ焼きになぞらえて巧みに歌詞にしていますね。

岡田:〈火傷したっていいじゃない〉とか〈熱く 熱く〉とか(笑)。あと、〈甘ったるいパフェを顔面に投げて〉とデザート部を煽ったりもしています。もともと勝負事は燃えるタイプなので、どうしてもアツい歌詞になりますね。

 あと、これはきっとなかなか気づかないと思うんですけど、たこ焼き部だったメンバー全員の名前を歌詞に散りばめているんですよ。〈麟としてる〉は武藤小麟ちゃんを表していたり、藤の花の花言葉で藤園麗ちゃんを表していたりするので、そういうところも聴いてもらえたら嬉しいですね。

――全部の仕掛けに気がつく人が現れるのかも気になりますね。

岡田:その次に書いたのが「サラン」でした。サランは、私が実家で飼っている15歳のトイプードルちゃんの名前です。15歳の誕生日にプレゼントとして歌を届けたくて書きました。今、命が危なくて点滴を3日に一度打ちながら生きている状態なので、生きているあいだに歌を聴かせてあげたかったんです。一緒に過ごしてきた15年間を振り返った曲を作りました。

――長いあいだ寄り添ってくれているんですね。

岡田:小学校3年生の頃からずっと一緒にいますからね。愛しい存在です。ワンちゃんって、無条件に愛してくれるし、サポートしてくれるじゃないですか。私、それに何度も救われてきたんです。今はもう耳が聞こえなくなっちゃったので、こうして歌ったけれど、きっと聞こえてはいないと思うんですけどね。そのぶん、お母さんが大号泣してくれました。

 で、次に書いた曲が「生きる理由」でした。この曲は、幅広い方々に向けて書いた曲で、友人、家族、ファンの人に向けて、私の生きる理由をそのまま書きました。

――「サラン」に続き、身近にいる人たちに向けた優しい思いが歌詞になっていますね。

岡田:そうですね。生きているのはしんどいし、仕事したくないし、いっそ全部投げ出したいと弱音を吐いてしまうこともあるけれど、なんで頑張って生きているのかというと、「あなたに喜んでほしいからだよ」「だから毎日頑張れるんだよ」という思いを込めた、珍しく明るい曲です(笑)。

――それだけ、支えてもらえるありがたみを感じた瞬間があった?

岡田:ありました。去年あの報道が世に出てからは、「私が存在している意味なんてないんじゃないか」と生きる意味を失いそうになって。実際、「全部投げ出したい」とメモに書いていたんですよ。だけど、ふと「今投げ出したらきっと後悔する」「命をなげうつ価値なんてきっと今はない」と思えて。そこから、周りで支えてくれる人たちへの前向きな言葉が出てきました。

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