ZEROTOKYO、好きを極める場への取り組み カルチャーが交差する複合的なエンタテインメント空間

 今年4月に開業した東急歌舞伎町タワーの地下に位置する、新基準のナイトクラブ ZEROTOKYO。ライブハウス Zepp Shinjuku (TOKYO)としての顔も持つ本施設では、工夫を凝らした演出システムや最先端のスピーカーシステムが導入されているのみならず、新宿のナイトライフ全体を盛り上げるための細やかなサービス面も充実している。安全性への配慮はもちろん、音楽にとどまらない多種多様な楽しみ方を提供するためのフロアコンセプト設定やイベントの開催など、新時代のクラブカルチャーの発展に寄与するような施策がその例だ。

 ZEROTOKYOのハード面に着目した前回に続き、今回はソフト面の取り組みに迫るべく、ZEROTOKYO統括総支配人の萩原要氏、ZEROTOKYO総支配人 兼 事業統括グループ長の内田実氏、ZEROTOKYO企画制作グループ チーフプロデューサーの乗田公平氏に話を聞いた。(編集部)

ZEROTOKYO、斬新なナイトクラブ体験の追求 ステージとフロアに驚きをもたらす演出システムとは

東急歌舞伎町タワーの地下にあるZEROTOKYOはアジアNo.1のナイトクラブを目指し、そのスピーカーシステムや舞台装置には多彩…

「多種多様な全てのお客様に価値のあるエンタテインメント」(内田)

ーーZEROTOKYOはこれまで新宿になかった大箱クラブですが、オープンの経緯を教えていただけますか?

萩原要(以下、萩原):新宿の再開発で東急歌舞伎町タワーの計画が持ち上がった時に、Zepp Shinjukuを作ろうということで計画を進めたんですけど、やっぱり新宿歌舞伎町ということでナイトエンタテインメントのニーズがあるだろうし、そもそも新宿は歴史を遡れば、ダンスホールやディスコの聖地だったということもあります。Zeppに関しても、今から10年以上前に風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)での規制が厳しくなる前はお台場にあったZepp Tokyoを中心に週末はクラブイベントが開催されていたこともありました。

 その後、風営法の関係でそういったイベントの開催はできなくなったのですが、歌舞伎町であれば風営法上もクリアできるし、我々としてももう一度そういったイベントをやってみたかったというのが、ZEROTOKYOのオープンの経緯です。

ーー先ほど、新宿のナイトエンタテインメントのお話がありましたが、実際現在も新宿にはさまざまなナイトエンタテインメントとそこに関連するナイトライフカルチャーがあります。新宿のナイトライフやエンタテインメントに、ZEROTOKYOはどのような影響を与えられるとお考えでしょうか?

内田実

内田実(以下、内田):そもそも歌舞伎町を中心に新宿のナイトライフ全体のポテンシャルは誰もが知るところだと思います。現状、東京のナイトクラブのメッカといえば渋谷ですが、そもそも新宿は過去にはディスコの聖地としても知られた場所ですので、ナイトクラブとの親和性も高いと感じております。だからZEROTOKYOとしては、当然新宿のナイトクラブシーンを盛り上げていくだけでなく、歌舞伎町という街自体を盛り上げていけたらと思っています。

 それと歌舞伎町は場所柄、新宿付近におられる方だけでなく、首都圏付近や地方から観光で来られる方、あるいは海外からのインバウンド観光客もたくさん訪れる場所なので、本当に多種多様な方々がいらっしゃいます。だからこそ、内装のカッコよさだけでなく、今回導入したサウンドシステムやメディアサーバーを活用して、さまざまなジャンルの音楽を国内外のDJが発信し、クオリティの高い演出とともに質の高いサービスも提供することで、多種多様な全てのお客様に価値のあるエンタテインメントを楽しんでいただければと考えています。

ーーZEROTOKYOでは「ENTERTAINMENT JUNCTION」というコンセプトを掲げていますが、このコンセプトを定めた理由を教えていただけますか?

内田:ZEROTOKYOを運営する我々TSTエンタテイメント(以下、TST)は、東急、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)、東急レクリエーションによる合弁会社ということもあり、それぞれが持つ強みを存分に発揮することで、アジアNo.1のナイトクラブを目指すという目標を掲げています。

 そのなかで具体的に目指しているのは、単に様々なジャンルの音楽だけでなく、DJ、空間演出、パフォーマンスなど、あらゆるコンテンツを集め、交差させることで、これまでにない新たなエンタテインメント体験を生み出し、さまざまな人の“好きを極める場”となることです。そのためのコンセプトとして「ENTERTAINMENT JUNCTION」を掲げています。

ーーこれまでにない新たなエンタテインメント体験を生み出すということですが、ZEROTOKYOとして、ライバル視しているナイトクラブはありますか?

内田:具体的にどのナイトクラブというのはありませんが、ZEROTOKYOは日本のナイトクラブの中では圧倒的な規模感を誇っています。国内でNo.1を目指すというよりは、やはりシンガポールやタイ、台湾などにある大規模な有名ナイトクラブに負けない、クオリティの高い音楽、DJ、空間演出、パフォーマンス、サービスを含めた複合的なエンタテインメント体験を提供していきたいと思っています。

ーーZEROTOKYOではサービス面にも力を入れているとのことですが、具体的にはどういった取り組みを行われているのでしょうか?

内田:現状、国内のナイトクラブに遊びに来るお客さんのほとんどは普段からクラビングを楽しんでいる方がほとんどです。しかしながら我々としてはそういった方だけでなく、普段ナイトクラブに遊びに来ない、「クラブって何となく怖い、危ない場所だ」と思っているような方にも楽しんでいただけるサービスを意識しています。そのために何かわからないことがあれば気軽に話しかけられるスタッフを配置したり、急に具合が悪くなったり、お客さん同士で何かトラブルがあった場合でも迅速に対応できるようにセキュリティスタッフをしっかりと配置するなど、安全性の確保を強く意識しています。

 また、安全性という意味では、入店時のIDチェックを徹底して行うことで身元をしっかりと証明できる方のみご入店いただいています。それと深夜帯の営業である点、さらには入店後は全てのお客様にお酒を楽しんでいただける環境を提供しているため、未成年の入店は固く禁じています。あとは入店時のボディチェックと手荷物検査を入念に行うことで危険物を持ち込めない体制を整えていますし、不測の事態に備えて、近隣の警察や消防とも連携するなどして、安全性の強化に努めています。

ーー現在のナイトクラブシーンでは世界的にあらゆる差別やハラスメント、暴力を禁止する動きが顕著に見られます。そういった点に関してはどういった体制を整えられているのでしょうか?

内田:当然ZEROTOKYOでも差別やハラスメント、暴力は絶対に容認できるものではありません。ダメなものはダメという認識で運営しています。そういったトラブルを防ぐためにセキュリティ面を強化していますし、さっきも言ったように何かトラブルがあった場合はすぐに近くのスタッフに声をかけていただけたらと思います。

「親和性が高い方々を巻き込みながら、カルチャーが混ざり合う場所へ」(乗田)

ーーどのようなブッキングポリシーで出演者をブッキングされているのでしょうか?

乗田公平(以下、乗田):ダンスミュージックは歴史的にマイノリティが支えてきたカルチャーであるということに加えて、新宿はいろいろなルーツを持つ方が集まる場所でもあります。また、ZEROTOKYOとしても「ENTERTAINMENT JUNCTION」というコンセプトを掲げている以上、多様性のある開けた場に適したラインナップを組むことを意識しています。

 ただ、もちろん出演していただくDJさんの能力と音楽性も重要視しています。例えば、評判の良いDJさんがいたとしたら、スタッフが実際にその現場まで足を運び、DJプレイやお客さんの盛り上がりも含めて体感する中で、何か惹きつけられるところがあれば出演をお願いするようにしています。やっぱり、自分たちで実際にプレイを観たり聴いたりしないとその良し悪しはわからないと思うので、そこはちゃんと確認するようにしています。

乗田公平

ーー次世代アーティスト発信をテーマにした『GOLD DISC』、音楽とカルチャーの分野で活躍する世界中のクリエイティブな才能にスポットライトを当てる『BUDXUNCOVERED CURATED BY VERDY』といった音楽やクリエイティブ分野のカルチャーシーンとリンクするイベントも開催されています。ZEROTOKYOとしては、どういった形でそれらのシーンの発展に貢献できるとお考えでしょうか?

乗田:ZEROTOKYOは、3フロア構成のナイトクラブということもあり、元々音楽に限らずさまざまなカルチャーをここに持ち込んでいくことを意識していました。そのため、いわゆる音楽の専門性が高いDJさんに限らず、デザイナーさんやイラストレーターさんなどクラブカルチャーとも親和性が高い方々も実際にブッキングしていますし、そういった方々を巻き込んでいきながら、多様なカルチャーが混ざり合う場所を作っていきたいと考えています。

 特に現在の新宿には、渋谷のような確立されたクラブカルチャーがあるかと言われるとそうではありません。だからこそ、アンダーグラウンドやオーバーグラウンド問わず、クラブカルチャーと親和性が高い方と一緒に取り組んでいくことで、ZEROTOKYOを起点にひとりでも多くの人に新宿のクラブカルチャーの魅力が伝わっていけば嬉しいですね。

ーー国内最大級の規模感を誇るZEROTOKYOだからこそ実現できるナイトエンタテインメント体験を、どのようなものとして捉えていますか?

内田:ZEROTOKYOの基本的なコンセプトは先ほどお話しした「ENTERTAINMENT JUNCTION」ですが、実は各フロアごとにコンセプトを設けています。例えば、“ノルタルジア"というコンセプトを設けたB2フロアのバーエリアは、お客様にくつろいでいただける空間としてご提供しています。また、その一環としてビンテージスピーカーを設置するなどして、雰囲気作りにもこだわっています。

バーエリア

 それと同フロアのBoxというエリアは、言葉通り小さな箱のような空間になっていて、より音楽に没入できる場所として機能しています。あとナイトクラブとしては珍しいと思いますが、ZEROTOKYOではアートも取り入れており、B2フロアには淺井裕介さんによる歌舞伎町をはじめとする新宿の様々なエリアの土を使った泥絵を展示しています。この泥絵には、新宿の街をコンセプトに多様性を表現した生物や植物が描かれているんです。それとバーカウンターには岐阜県の多治見焼のタイルを使うなどして、単純なナイトクラブというだけでなく、アーティスティックな部分も楽しんでいただけるようにしています。

Box

 一方、B2フロアよりも活動的な“エモーショナル”というコンセプトのB3フロアは、よりアクティブな空間として楽しんでいただけます。ここにはミラーボールの素材を使った“ミラーリング”を導入していて、その内側にはLEDビジョンが埋め込まれており、ミラーリングの光の演出とともに音楽とLEDビジョンの映像を楽しんでいただけます。またB3フロアのZ-LOUNGEは、メインホールであるB4フロアを見下ろすことが可能なバルコニーになっているため、メインホールの音楽や演出を楽しみながら、メインホールで踊っているお客様とともに楽しむこともできます。

Z-LOUNGE

 最後にB4フロアは、“ダイナミズム”というコンセプトになっており、圧倒的な広さのダンスフロアと正面の大型LEDスクリーンを含む360度LEDスクリーンやAdamson Systems Engineeringのスピーカーによる迫力のある音響を楽しんでいただけるほか、映像と照明を連動させたメディアサーバーによる演出を提供させていただいています。

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