SPECIAL OTHERS、新しい届け方への手応え 豊かなアイデアを形にした『Journey』制作を語る
「スタジオができてから“エンジニア”としてのスキルが生きている」(宮原)
──「Falcon」は、芹澤さんのスペイシーなソロがまるで滑空するハヤブサ(ファルコン)のようだなと思ったんですけど、宮原さんは「Falcon」の意味を知らなかったそうですね。
宮原:これも適当につけたタイトルですね(笑)。クリス・デイヴがアフロビートにアプローチしている曲があって、それがカッコよかったので「僕らも取り入れてみよう」と。
芹澤:ハヤブサだという意識は1ミリもなく演奏していました(笑)。ちなみにあのエレピソロは、ビブラートのDepthをめちゃくちゃ深くかけて、Rateをいじりまくって作った音色です。最近、僕の中で空前のビブラートブームが巻き起こっているんですよ。僕の中というか、ローファイヒップホップの界隈でもすごく流行っているんですけど。それで最近ビブラートのエフェクターを買い漁っていて。その中の一つを使って演奏しました。曲の雰囲気にもすごく合っていると思いますね。
──ギターの音色もちょっと変わっていますよね。アンビエンスマイクを立てているような感じというか。
柳下:テープエコーを少しかけています。あと、エレピがビブラートを深くかけていたので、ギターはそれとコントラストをつけようと思って人力で弦をウニョウニョさせてあのサウンドを作りました。
──野音ライブ(8月27日に開催された『SPECIAL OTHERS TOUR 2023』日比谷公園大音楽堂公演)の1曲目に演奏された「Feel So Good」は、疾走感あふれる8ビートが印象的な楽曲です。
宮原:「めちゃくちゃ速いのにジャジーな曲」というのが作りたくて。結果的に全然ジャジーにはならなかったんですけど(笑)、シンプルながらメインテーマも含めてカッコいい楽曲になったなと自負しています。しかもすごくシンプルなところもあって、4人でユニゾンする気持ちよさは別格ですね。
──この曲と、続く「Point Nemo」のMVはプライベートスタジオ「SPE STUDIO JAPAN」で生演奏していますが、このスタジオはこれが初公開だそうですね。
宮原:コメント録りなどではちょいちょい使っていたんですけどね。「別に、人様に見せるほどのものでもないだろう」とメンバーは思っていたんですけど、担当ディレクターが「ここ、めちゃめちゃカッコいいですよ!」と言ってきて。「そうなの?」「じゃあ、やってみようか」という感じでやってみました(笑)。予算的にも節約になりますからね。
──(笑)。まるでマンションの一室のようなコンパクトな空間で驚きました。
宮原:そうですね、14畳くらいかな。2018年に設立して以降、ここがスペアザの拠点といっても過言じゃないですね。
芹澤:防音設備も最高なんですよ。野音の制限音量も超えるくらい。自分たちのスタジオがあれば複数のアンプの聴き比べとか自由にできるので本当に重宝しています。我々の「遊び場」ですね。ここで培ったもので音楽をやっていると言ってもいいほどです。
宮原:このスタジオができてから、ミュージシャンとしてのスキルがめちゃくちゃ上がりました。特にコロナ禍で暇だった時は、もう毎晩通ってドラムの音作りなどを実験していたんです。そこで培った“エンジニア”としてのスキルは「Point Nemo」で生きています。この曲のMVでは、自分で音を録っているんですけど、その音質をエンジニアにめちゃくちゃ褒めてもらえました。次の職はエンジニアに決定ですね(笑)。
「いつも通り気張らず、自然体でできたらいい」(又吉)
──そんな「Point Nemo」はギターが引っ張っていくマイナー調のナンバーです。
宮原:この辺りから、ギターで曲を作るのにハマっていました。レゲエのようでレゲエじゃないような、ロックのようでロックじゃないような(笑)、すごくカッコいい曲になったと自負しています。
芹澤:この曲、デモの段階からギターで完成されていたんですよ。曲のイメージもギターリフで決定づけられているので、鍵盤でのアプローチは結構大変でした。最終的に、キューバン・リンクとかあの辺の切ないヒップホップの雰囲気がハマるなと思って、そういうイメージのフレージングを心がけました。
──「辿り着けない場所」を意味するタイトルもロマンティックです。
宮原:YouTubeを観ていたら、「Point Nemo」なる場所が地球上には存在することを知って。ちょうどこの曲を作っている時で「めちゃくちゃハマってるな!」と思ってタイトルに拝借しました。
──そしてアルバム『Journey』には残りの未発表曲「Journey」と「Thank You」が入ったわけですね。
宮原:「Journey」もギターから作ってどんどん肉づけして、展開も増やしていきました。ベースフレーズも、シンコペーションを多用する若いロックバンドみたいなアレンジになっているんですけど、その部分とか我ながらすごく気に入っています。
芹澤:僕は、随所に和モノなフレーズを散りばめました。海外のリスナーに「日本っぽい!」と言われたいという下心ですね(笑)。
宮原:「Thank You」は、メロディに歌詞がついていると想定して譜割を考えました。というのも、メロディがついていないと大胆な譜割って思いつきづらいというか。歌詞があるからこそ譜割が生まれることって結構多いので、それを逆手に取って作った楽曲ですね。そういう主旋律が一つあると、各々のソロも盛り上がるんですよね。
芹澤:こなしている感じのソロにするとイージーリスニングみたいな曲になってしまうので、僕は「テーマの応酬みたいなソロ」を目指しました。このセクションではこんな景色、このセクションではこんな景色……という具合に、いろんな景色を見せるアトラクションみたいな、まるでディズニーランドの中を移動しているような気分を味わってもらえたら嬉しいです。
──さて、11月からはツアー『Journey to SPE「SPECIAL OTHERS Journey Release Tour 2023」】』が始まります。最後に皆さんの意気込みを聞かせてください。
又吉:ツアーは1年ぶりだし、今回は地方を久しぶりに回るので楽しみです。ここ最近、イベントとかでも1泊して帰ることが多かったのに、それどころかコロナ禍で帰りの準備話ばかりになってしまって。時に寂しいと思うこともあるので、今回は久しぶりに泊まりで地方へ行って、みんなでご飯を食べられるのも楽しみですね。演奏に関しては、いつも通り気張らず、自然体でできたらいいなと思っています。
──確かに、ライブの時の皆さんの自然体っぷりにはいつも驚かされます。野音でステージに登場する時も、まるでトイレからふらっと部屋に戻ってきたみたいな感じですよね、いつも(笑)。
柳下:昔のインタビューで言ったことがあるんですけど、『ドラゴンボール』みたいなアクション漫画ではなくて、僕らは『サザエさん』みたいなファミリー漫画なんですよね。僕らがステージに行く時は、カツオくんが居間に行くような感じなんです。
又吉:なんなのその例え話(笑)?
芹澤:でも、確かにうちらのライブは大型ショッピングモールみたいなんです(笑)。おしゃれな人もそうじゃない人も、家族連れも一人の人も、老若男女どんな人も受け入れる空間というか。
宮原:「音がめちゃくちゃいい」ってみんなに言われるんですよ。しかも演奏がすごくやりやすい。きっと「モテたい」みたいな気持ちがすごく減って、めちゃめちゃ真摯に音楽に向き合っているんですよね。今のスペアザはすごく面白いと思うので、ぜひ来てほしいです。
芹澤:誰も着地点が見えないままセッションしていくスリリングな感じとか、成功するかどうかわからないのに仕掛けるなど、生々しいやり取りが楽しめるバンドに今年はさらに成長しているので、そこもぜひ見てもらえたら嬉しいですね。
■リリース情報
SPECIAL OTHERS
9th ALBUM 『Journey』
2023年10月25日(水)リリース
配信URL:https://jvcmusic.lnk.to/Journey
・初回盤(2CD+DVD)
価格:¥6,930税込
収録内容:CD(10曲)+特典DVD(10曲)+特典CD(10曲)
<CD収録楽曲>
01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
<特典DVD>
『2023年 ニコニコの日全集「252510」』(Music Video LIVE映像)
01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
<特典CD収録>
『2023年 ニコニコの日全集「252510」』(Music Video LIVE音源)
01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
・通常盤(CD ONLY)
価格:¥3,300税込
収録内容:CD(10曲) ※初回盤のCDと同内容
初回盤/通常盤いずれも初回生産分には「ジャケットステッカーシート」封入
■ツアー情報
『Journey to SPE「SPECIAL OTHERS Journey Release Tour 2023」』
11月3日(金・祝) 仙台darwin
OPEN 15:30 / START 16:00
Info. ノースロードミュージック仙台
https://www.north-road.co.jp/
11月5日(日) 札幌cube garden
OPEN 15:30 / START 16:00
Info. ウエス https://wess.jp/
11月11日(土) 富山MAIRO
OPEN 16:30 / START 17:00
Info. キョードー北陸チケットセンター
https://www.kyodo-hokuriku.co.jp/
11月12日(日) 長野CLUB JUNK BOX
OPEN 15:30 / START 16:00
Info. キョードー北陸チケットセンター
https://www.kyodo-hokuriku.co.jp/
11月18日(土) 名古屋クラブクアトロ
OPEN 16:15 / START 17:00
Info. JAILHOUSE
https://www.jailhouse.jp
11月19日(日) 浜松窓枠
OPEN 15:30 / START 16:00
Info. JAILHOUSE
https://www.jailhouse.jp
11月23日(木・祝) 福岡BEAT STATION
OPEN 15:30 / START 16:00
Info. BEA
https://www.bea-net.com
11月25日(土) 岡山YEBISU YA PRO
OPEN 16:30 / START 17:00
Info. YUMEBANCHI(岡山)
https://www.yumebanchi.jp/
11月26日(日) 梅田クラブクアトロ
OPEN 15:15 / START 16:00
Info. YUMEBANCHI
https://www.yumebanchi.jp/
12月9日(土) 那覇桜坂セントラル
OPEN 16:30 / START 17:00
Info.ピーエムエージェンシー
https://www.pmnet.co.jp/home/
チケット発売中:スタンディング¥5,000(税込、整理番号付、ドリンク代別)
■ライブ情報
『SPECIAL OTHERS 毎年恒例SPE納め2023 公演概要』
日程:12月16日(土)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:横浜Bay Hall
チケット:
前売スタンディング¥5,000(税込、整理番号付、ドリンク代別)
当日スタンディング¥5,500(税込、整理番号付、ドリンク代別)
チケット発売日:10月28日(土)