tuki.「晩餐歌」バイラル1位 15歳シンガーソングライターが放つ楽曲の特別な輝き

tuki.『晩餐歌』弾き語りver.

 そして、今回最も注目したいのは、初登場にして見事に首位を獲得したtuki.「晩餐歌」。tuki.は、15歳・中学3年生のシンガーソングライターだ。そんな彼女が自身で作詞作曲し、父親にお金を借りてレコーディングしたこの楽曲。シンプルでアコースティックなギターサウンドの導入部分からバンドアレンジセクションへ移行するなかで、映し出される景色が壮大に転換していくドラマチックで力強いロックバラードである。そして、この力強さに通底するのは、アレンジはさることながら、tuki.の歌声と楽曲そのもののが持つ芯の強さである。それを証明するように本人による「晩餐歌」の弾き語り動画がYouTubeで人気を集めており、その大きな反響を受け、「晩餐歌 弾き語りVer.」も配信リリースされている。ボーカリストとしての資質と楽曲の強度が露骨にあらわれる弾き語りで多くのリスナーの耳を掴んでいることは、特筆すべき現象だろう。

 そして、自身で作詞を手掛ける歌詞にも、15歳とは思えない独自の詞世界が広がっている。歌い出しの〈君を泣かすから だから一緒には居れないな〉〈君を泣かすから 早く忘れて欲しいんだ〉というラインから感じる不器用な愛の予感。そんな不安定で不器用な中から捻り出されたストレートな愛の言葉こそが、全編を通じて積み上げられていく〈何万回夜を過ごしたって忘れぬような 最高のフルコースを頂戴〉の一節なのではなかろうか。荒削りではあるが説得力のある歌詞の運びと独特な言葉選びに、初リリース作品にしてすでに“tuki.らしさ”のようなものを見いだしてしまう。楽曲、アレンジ、歌詞、どれをとっても特別な輝きを放つ「晩餐歌」。「15歳の」という枕詞をつけることがはばかられるほど、ひとりのアーティストとして魅力を持ち合わせているtuki.の今後の活動に期待が膨らむ。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2023-10-18

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