chelmicoの“今の気分”は日常の中にあるダンス バナナマン、ダウ90000への愛とリスペクトが詰まった書き下ろしエピソードも

chelmicoの2人の今の気分

バナナマン、ダウ90000……Mamikoのお笑い&ラジオ愛が楽曲に

──「H」と「BLUE」、そして「flash」はそれぞれどんな経緯で作られたのでしょうか。

Mamiko:「H」は2022年、「BLUE」は今年のバナナマンさんの単独ライブのオープニング曲、「flash」はダウ90000が今年2月に開催した単独公演のエンディング曲として書き下ろしたものです。「H」に関しては、今回バナナマンさんが「S」「H」そして今年は「O」という名前でライブをやっていて、それぞれ設楽(統)さん、日村(勇紀)さん、作家のオークラさんがテーマでした。

 私たちが作った「H」という曲は、日村さんのキャラソンというか。その年、初めてバナナマンさんのオープニング曲を担当することになったし、コロナ以降久しぶりの単独公演だったので、バナナマンさんとファンの皆さんの上がる気持ちを汲み取りたいなと思いました。

──お二人にとって、バナナマンの魅力とは?

Mamiko:私、ほんっとうにバナナマンが大好きなんです。あれだけスターなのに、ずっとくだらなくて下品なことを言い続けているじゃないですか(笑)。おぎやはぎさん、さまぁ~ずさんもそうですが、スタンスが変わらないのにスター性があるところもいいなと思います。表舞台に立つ自覚を持ちながらもくだらないことを言う、そのアンバランスさも魅力的ですね。

Rachel:私はMamikoほどお笑いに詳しくないので、バナナマンさんはもちろん知っているけどラジオとかは聴いたことがなかったんです。でもMamikoに教えてもらって『バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)を聴くようになり、知れば知るほど面白いし大好きになりました。すごく安心感があるというか、何か出来事があってこの二人ならこう言ってくれるだろうというところをちゃんと突いてくれる快感みたいなものがある。スター性もすごいんですよ。オーラがあって、これまで会った人の中で一番緊張したかもしれない。そのくらい光り輝いていました。

──オープニング曲を手がけるとなったときは緊張しました?

Mamiko:ハンパなかったっすね(笑)。でもプレッシャーは意外となくて。というのは、設楽さんが私たちのこと「好き」と言ってくれていたから、いつものchelmicoでいけばきっと大丈夫だろうと思えたから。むしろ、私たちの好きなようにやった方が気に入ってもらえるんじゃないかなって。

 「H」はとにかくカッコよくしたかったんです。ここ最近はちゃんとトップラインがあるようなフックを作っていたので、今回は〈This is H〉というところを、バチっと前面に打ち出すためにメロディには乗せないようにしました。内容も、〈かなりやばいね バ帽かぶる僕 どこまでも夢中〉は、これからバナナマンのライブを見るんだ、というファン目線のワクワクした気持ちを入れて。〈やってみれば全部やれちゃうし おまけに才能もバレちゃうし〉のところは、スターであるバナナマンさんの、自信満々な感じを出したかったんです。

──「BLUE」はどうですか?

Mamiko:さっきも言ったように、今年の単独ライブは作家のオークラさんがテーマだったので、楽曲もそれを意識しました。オークラさんって大の音楽好きで、特にお気に入りがVulfpeckだったのでそれっぽい感じにしたいなと。あと、たまにTBSラジオの放送中にオークラさんがThe Beatles「Blackbird」をギターで弾くくだりがあったから、「Blackbird」のリフを隠し味的に入れています。

──そうだったんですね! 気づかなかった……もう一度聴いてみます。

Mamiko:タイトルは、今年の単独公演の衣装が青かったので「BLUE」にしました。この曲を作り始めた時は、まだバタバタしていて決まっていたのが「青」ということだけだったんです。どれだけ売れて、テレビでレギュラーを持つようになっても、コントは毎年作るというそのストイックさを表現したくて、そこから〈いつまでも青くいたい〉というフレーズに込めています。

Rachel:フックの〈愛に溢れてる〉というフレーズとか、「言っちゃった!」と思いました(笑)。ここはもうMamikoの気持ちが溢れてるなあって。すごく感動しましたね。聴いていて、本当に涙腺が刺激されるというか。「本当に好きなんだな」って。実際、Mamikoは泣きながら書いたらしく、そのくらい本気で取り組んだ曲なんだなと。

Mamiko:確かに、この〈愛に溢れてる〉は私の気持ちもあるんですけど、オークラさんのバナナマンさんへの愛にも毎回感動していて、その意味も込めていますね。

Rachel:メロディも、ずっと歌いっぱなしじゃなくて追いかけるフレーズが入ったり、コーラスが入ったり。そこも今までなかった感じで新鮮でした。デモをもらった時から「楽しいな」と思ったし、すごくお気に入りの曲になりました。

Mamiko:あざっす!(笑) 私もVulfpeckが好きでよくライブ映像を見るんですけど、その時にベースラインをお客さんが一緒に口ずさんでいる瞬間があって。ベースラインを口ずさむんだ! って感動したんです(笑)。それで「合唱もいいな」と思い、〈BLUE まだまだ〉のところとかみんなで歌えるように「間」もすごく意識しました。

──「flash」は、ちょっと切ないムードの曲ですよね。ジャジーなイントロもかっこいい。

Rachel:かっこいいですよね。

Mamiko:実はダウ90000さんのライブでは、このエンディング曲だけじゃなくてオープニング曲も作っているんです。どっちも頼んでくれるということで、バナナマンさんと同じくすごく信頼されている状態から入ったので気合も十分でした。曲を作る前に台本のタタキを見せてもらったら、その内容が「寂れたゲームセンター」が舞台になっていて。そこで久しぶりに会う友人たちの恋や友情を描いていたので、ちょっと切ないイメージがあったんですよね。

──なるほど。

Mamiko:それに、今回のライブはいつもより恋愛要素が多めで、演劇っぽい雰囲気にしたいというのを主宰の蓮見翔くんから聞いていたので、明るくふざけた感じの曲ではないなと。ダウ90000の単独ライブは、いつも2時間くらいの尺でドラマっぽいんですよ。笑いももちろんあるけど、最終的な落としどころは「おお!」ってなるような。ちなみに公演名が『また点滅に戻るだけ』だったので、それをそのままリリックにも使わせてもらいました。

 ゲームセンターを舞台にした内容なので、歌詞を読んでいくと、ゲーセンの中でもプリ機がモチーフだったので、そういうフレーズをちりばめているし、なおかつ公演を見た人は「あ、これってあのシーンのことかも」みたいに、リンクして楽しんでもらえると思います。

Rachel:蓮見くんから聞いたのですが、今回の台本は私たちの「flash」を聴いた後に仕上げてくれたらしくて。お互いの作品に影響し合うことができたのもすごく嬉しかったです。Mamikoが書いたリリックもすごく好きですね。もちろんダウ90000の公演のためのアテ書きだけど、変わっていく物事をテーマにした普遍的な内容になっている。(取材時は)まだリリース前ですが、すでに聴いてくれた身内からもすごく人気のある曲になりました。特に大人の人たちに刺さっているみたいです。

──「H」「BLUE」そして「flash」は、サウンドプロデュースがryo takahashiさん。Mamikoさんのソロアルバム『ms』のプロデュースも手がけ、chelmicoの昨年のアルバム『gokigen』では初めて全体のディレクションを担当されたryoさんの魅力についても聞かせてもらえますか?

Mamiko:ryoくんはもう、なんでも作れる人。

Rachel:変幻自在だよね(笑)。

Mamiko:もともとドラマーなので、ドラムの動きがすごく特徴的なんです。最初にざっくりとしたデモトラックがryoくんから送られてきて、それにラップを入れて送り返すと、ラップに合わせてドラムを抜いたり足したりすることで、フレーズを組み直してくれるんです。そういうドラマー的な発想が、他のトラックメイカーと違うなと思います。

 アレンジのアイデアもたくさん持っていて。私は声を重ねるのがすごく好きで、プリプロの段階でハモりとかコーラスとかいろいろ入れてるんですけど、それをryoくんが違う楽器に差し替えてみたりしてくれる。そういう、私の中になかったアイデアをたくさん持っているところも魅力ですね。

Rachel:引き出しの数も多いけど、その種類が他の人と全然違う感じがするよね。今回の3曲も、それぞれ全然曲調が違うのに、ちゃんとryoくんのスタイルがある。しかも、ラップがすごくカッコよく聴こえるようにアレンジして戻してくれるから、すごく信頼していますね。

──今作を通して改めて思ったのは、chelmicoの作るトップラインの魅力です。すごくキャッチーで、らしさもあって。それはいつもどこから生まれているのでしょうか。

Mamiko:えー、どこからだろう。

Rachel:Mamikoはいつも鼻歌で歌って作ってるよね。

Mamiko:そうかも。

Rachel:なんか、いっつも歌ってるんですよ普段から(笑)。謎の歌を歌ってて「なにそれ?」って聞いたら「今テキトーに作った」と言うからすごいなと思うんですけど。

Mamiko:あははは。

Rachel:それに、普段からいろんなアーティストの曲をずっと聴いて、ずっと歌っているんです。それがアイデアの素になっているんじゃないかな。今回のEPは、ほぼMamikoがトップラインを書いてくれていて、Mamikoっぽいなと思うのは、そういうところがあるからかも。

Mamiko:私は、特に好きな作曲家がいるわけではないし、嫌いなジャンルもなくて音楽は全部好きだし、趣味だから聴くんですけど(笑)、それは確かに自分の曲作りに活きている気がしますね。「あ、ここでこういうメロディになるんだ」とかは、確かに考えることがあるし。

──では最後に、10月からスタートする『chelmicoワンマン「一緒に踊ろうよTOUR」』に向けての意気込みを聞かせてください。

Rachel:最近の私たちは、「今までやれなかったことをやりたい」というモードなんです。例えば、普段のライブでやれていない楽曲を入れてみたり、いつもだったら「Love Is Over」で終わるところを、別の楽曲で終わらせてみたり。チャレンジをすごくやっている期間なので、そのチャレンジ精神がツアーにも出るんじゃないかと思っています。ずっと観てくれている人ほど「おお!」とびっくりしてくれるんじゃないかな。

Mamiko:チャレンジ精神のあるツアーになるし、今までで回る箇所が一番多いので、まだ回ったことのない場所で「初めまして」の人たちとも仲良くなりやすい、それでいてチャレンジ精神もある欲張りなセットリストで臨むつもりなので、楽しみにしていてほしいです。

■リリース情報
NEW EP 『I just wanna dance with you- period』(digital only)
2023年10月4日(水)各種配信サービスにてリリース
<Tracklist>
M1: I just wanna dance with you- period
M2: JUNEJULY♡2023
M3: H
M4: BLUE
M5: flash

■ツアー情報
『chelmico一緒に踊ろうよTOUR』
10月21日(土)神奈川 SUPERNOVA KAWASAKI
OPEN18:15/START19:00
11月3日(金・祝)広島 Live space Reed
OPEN16:15/START17:00
11月4日(土)静岡 LIVE ROXY SHIZUOKA
OPEN17:15/START18:00
11月11日(土)愛知・名古屋 ReNY limited
OPEN17:15/START18:00
11月12日(日)大阪・心斎橋 BIGCAT
OPEN16:00/START17:00
11月18日(土)宮城・仙台 darwin
OPEN17:15/START18:00
11月26日(日)北海道 Sound lab mole
OPEN16:15/START17:00
12月2日(土)熊本 B.9 V2
OPEN17:15/START18:00
12月3日(日)福岡 DRUM LOGOS
OPEN16:15/START17:00
12月22日(金)東京 EX THEATER ROPPONGI
OPEN18:00/START19:00
TICKET料金:1Fスタンディング ¥4,500/2F 指定 ¥5,000(1D代別途)

Website : http://chelmico.com/
X(旧Twitter) : https://twitter.com/chelmico_offi
Instagram : https://www.instagram.com/chelmico/
TikTok : https://www.tiktok.com/@chelmico_official
YouTube: https://www.youtube.com/chelmico

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