男闘呼組、35年の歴史に幕 燃え尽きるまでのエネルギーで感謝と愛を伝えた『男闘呼組 LAST FOREVER』

 昨年7月から29年ぶりとなる期間限定での活動を再開した男闘呼組が、4月から開催してきた『2023 THE LAST LIVE』と題したコンサートツアーの集大成となる、東京・日本武道館4Days公演『男闘呼組 LAST FOREVER』が、8月25日にファイナルを迎えた。

 男闘呼組を代表するナンバーの一つで、3rdシングル表題曲「TIME ZONE」で幕を開けると、骨太のサウンドに乗せて〈WOW WOW WOW WOW〉とコーラスを歌う声が会場に響き渡った。「行くぞ武道館!」という高橋和也(Vo/Ba)の声に続けて、ハードなロックサウンドでありながらメランコリックなメロディが胸を締め付ける4thシングル曲「CROSS TO YOU」、そしてワイルドなボーカルと共に息の合ったハーモニーも聴かせる5thシングル曲「DON'T SLEEP」と、立ち上がりはお馴染みのシングル表題ナンバーを立て続けに演奏。グルーヴを増した演奏と渋みを増したボーカルが30年以上の月日を感じさせた。

 「ついにラストです。最後は一緒に燃え尽きよう!」と高橋。ここからはアルバムに収録された曲でメンバーの個性を発揮するなどで、古くからのファンを楽しませた。ラバースーツを着たダンサー4人が妖艶に動き回りながらフラッグをはためかせた「PARTY」。歌詞がユーモアたっぷりの「YO-YO」では、観客が〈バッチ・コイ・コイ〉とコーラスを叫んだ。また、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」をモチーフにした「REIKO」は、リードボーカルの前田耕陽(Vo/Key)がショルダーキーボードを提げてステージの前に出て歌い、最前列の観客を指して〈レイコ〉と呼びかけた。「KIDS」では、岡本健一(Vo/Gt)がミディアムロックに乗せてエモーショナルなボーカルを聴かせ、サビでは観客とのかけ合いで会場が一体となった。また高橋が作詞、作曲を成田昭次(Vo/Gt)と共作した「自分勝手」は、「社会にはルールがある。しかし、それが誰かのためのものだとしたら、俺は従わない。何故なら俺は、自分勝手だからだ!」と、まずは高橋による熱いアジーテションで会場を鼓舞した。往年のブリティッシュハードロックを思わせる熱いサウンドで、間奏のギターソロでは「ギター岡本健一」「ギター成田昭次」と、2人のギタープレイを紹介した。

 中盤のMCでは、男闘呼組の最後のライブにたくさんの友人や仲間も駆けつけてくれたことに触れ、「昨日はデビュー映画『ロックよ、静かに流れよ』の長崎俊一監督が来てくれていて、大人になった男闘呼組にむせび泣いていました」とコメントし、ここからは男闘呼組が初主演した映画『ロックよ、静かに流れよ』(1988年公開)の楽曲を立て続けに披露した。

 映画『ロックよ、静かに流れよ』は、4人の不良少年がバンド活動を通して友情を深め合い、成長していくストーリー。中でも「LONELY...」はシンプルだが熱い魂が込められた楽曲で、劇中では不慮の事故でこの世を去った仲間を思いながら涙を堪えて歌うシーンが印象的だった一曲だ。歌詞の端々に彼ら自身と重なる部分もあり、約30年それぞれの道を歩んでいた4人が今またこうして肩を並べてステージに立っていることを思うと、決して独りではなかったのだと胸が熱くなった。また、このパートのラストに歌った「不良」は、映画公開と同年にリリースされた1stアルバム『男闘呼組』のラストに収録されたロックバラードで、成田昭次のソロライブでも度々歌われてきた。男闘呼組と共に青春時代を過ごしたファンにとって、涙なくして聴くことはできなかっただろう。

 前田の美しいピアノソロにワッと湧き上がった会場。ライブ後半戦は、「みはり」でスタート。作詞のシメ中島と作曲の大矢正浩が参加したTHE HEADSというバンドの楽曲が原曲で、シメ中島は闘病を経て昨年亡くなったとのこと。メンバーは生前のシメ中島と交流があったそうで、数ある楽曲の中からこの曲をセレクトした意味を深く感じさせた。

 高橋の「目で見えるものに惑わされそうになったら、ここ(胸)で見るんだ」というメッセージと共に、高橋作詞の「目で見ちゃだめさ」へ。ノリのいいギターリフが印象的な痛快ロックチューンで、成田と岡本は目と目で合図を送って動きを合わせ、そのギタープレイはまるで遊ぶかのよう。会場には観客の大合唱が巻き起こった。ハイスピードのハードロック「Burn it」では、特効のファイヤーボールが噴き上がり、「翼なき疾走」は胸の奥で静かに炎を燃やすように、4人が歌声をつないだ。そして本編ラストを飾ったのは1988年のデビュー曲「DAYBREAK」。「オーライ!武道館。最後の『DAYBREAK』を一緒に歌ってくれ!」と叫んだ高橋、成田、岡本が集まって頭を揺らしながら演奏し、名残惜しむかのようにエンドレスで音を鳴らし続ける姿が印象に残った。

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