Negiccoはなぜこんなにも愛される存在となったのか? 結婚、出産……“添加物ゼロ”の強さで独自の道を切り開いた理由
祝福された要因はなんなのか。そのひとつは、活動初期の“ねぎを持って歌い、踊るアイドル”という素朴なイメージに始まり、年齢を重ねるにつれて音楽性やグループとしての表現や形を少しずつ変化させるなかで、ファンも一緒にその成長物語を味わうような一体感が出来上がっていた点にある。グループとファンが家族同然に歩んでこれたからこそ、強い信頼や絆が芽生えた。それが祝福に結びついた。Negiccoは、何か/誰かと競い合ったり、それこそ過度な課金イベントなどに参加したりせずやってきたところも大きい。自分たち自身にも、ファンにも、負担を強いることをせず活動してきた部分も信頼を得た理由だ。
ちなみに、書籍『Interview File Cast vol.54』(2016年/ジョイフルタウン)のインタビューで、Kaedeが「ただいまの魔法」を提供をした和田唱が所属しているバンド TRICERATOPSが当時結成20周年間近だったことに触れ、「あの3人のバランスもいいな、と思って」「…でも、ホント、20年なんてすごいなって思いますよね。しかも、長く続けているけど変わらない感じとかあるじゃないですか」「デビュー時から観ているわけじゃないんですけど。何か、あのホワァーとした雰囲気とか、(Negiccoに)近いものを勝手に感じてます」と笑って話していた。そこから歳月を経て、まさにNegicco自身も3人が“ホワァー”とした雰囲気で活動20周年を迎えたのは、偶然の一致ではない気がする。
Negiccoが愛される理由には、楽曲の素晴らしさが前提としてある。小西康陽、田島貴男、西寺郷太、堂島孝平などといった錚々たるミュージシャンがNegiccoの音楽作品には参加しているが、グループの音楽プロデューサーとして重要な役割を果たしているのがconnieである。
先述のラジオ番組でもconnieは「奇抜なものではなくポップスとして楽しめるものを作る」がコンセプトとしてあると語っていた。たしかに、connieが手がけたNegiccoの多くの楽曲は、一度聴いたらついつい口ずさんでしまうような、印象的かつ馴染みやすいワードとメロディが特徴だ。何より、どの時代にもフィットする普遍性を持っている。それは、connie自身が“ひとりの純粋なアイドルファン”であることが影響している。いろいろなアイドルへの愛情と、ファン目線で「聴きたい」と思える楽曲が、作品作りにも表れている。アイドルポップスのあり方について自分なりに解釈を深めていることが、良質な作品に結びついているのではないだろうか。
3rdアルバム『ティー・フォー・スリー』についてKaedeが「街中で聴いても違和感のないところもちゃんとあるので――。Negiccoのアルバムって、アイドルアイドルした感じでアイドルを押し出しているアルバムではないからこそ、一般の方も、ちょっと気になったら聴いて欲しいなって思いますし」(書籍『Interview File Cast vol.54』)とコメントしていたが、まさにあらゆる音楽リスナーのセンサーに引っ掛かるような間口の広さがある。そういったことを踏まえたうえで、あらためて1stシングル『恋するねぎっ娘』や、2012年リリースのベストアルバム『Negicco 2003~2012 -BEST-』など、諸作品を年代順に曲を聴いていくと、その時々の彼女たちの等身大の姿や成長が感じられ、アーティストとしての進化もはっきり実感できる。
結婚、出産を経験したことで、歌うことや表現方法もまた変わってくるかもしれない。もしかすると、子どもの成長が楽曲に影響するかもしれない。そうなれば、Negiccoはますます、ほかのアイドルとはまったく違う存在として歩み続けていくことになるだろう。
※1:https://eradiosncc.shiga-saku.net/d2016-06.html
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