『バンドリ!』発のCeVIO AI『夢ノ結唱』は感情豊かで楽曲制作時間も大幅に削減 r-906が「POPY」「ROSE」体験談を語る

「怪電話」はサカナクションのライブでの展開を意識

r-906「怪電話」

ーーなるほど。めちゃくちゃ贅沢な作り方をしているなと、最初に聴いたときに驚きました。ちなみに、普段から1曲の中に複数のVOCALOIDやCeVIO AIを使用することはあるんですか?

r-906:あります。合いの手や掛け声で、アクセント的に使うことが多いですね。

ーーでは、ここまで色の強い声が2つ折り重なるような形は、この「怪電話」が初めてなんですね。「怪電話」という楽曲において、これまでr-906さんが制作してきた楽曲と比べて新たな面を見せられたとか、そういうポイントってありますか?

r-906:曲を作っているときに意識していたことが2点ほどあって。まず、「ノウナイディスコ」っぽい曲だけど“「ノウナイディスコ」パート2”にはしたくないということ。これは常に思っていることですし、きっとほかの作曲家の皆さんも同じ意見だと思うんですけど、過去の作品の焼き直しだけは絶対に作りたくないんです。そう考えたときに……これは2点目に意識していたことにつながるんですけど、どういう要素を加えようかなと考えたときに、昔やっていた無機質でちょっと仄暗い特徴の、「パノプティコン」的な楽曲を最近やっていなかったので、久しぶりにやってみようかなと思って、「ノウナイディスコ」っぽい曲のサビと「パノプティコン」っぽいダークなサウンドを組み合わせて作ったのが、今回の「怪電話」なんです。

ーーなるほど。イントロのSEパートの時点で曲の世界に引き込まれてしまいますが、そのへんにおいてこだわりはありましたか?

r-906:「こうしたらみんな注目してくれるだろう」みたいな計算はあまりしていなくて、「こうしたらカッコいいだろうな」と思ったことをやっているだけなんです。曲の中で伝えたいストーリーを考えたときに、「登場人物はどういう行動を取るだろうか?」ということを考えて、あの冒頭の展開になりました。

ーーr-906さんの中では曲全体を通してこういうことを伝えたいから、この要素が必要だったと。あと、楽曲全体を通して、いわゆるポピュラーミュージック的な構造とは異なる印象も受けました。楽曲制作をする上で、自身の中でのルールや心がけていることはあるんでしょうか?

r-906:よくある「Aメロ、Bメロ、サビ、Aメロ、Bメロ、サビ」みたいな展開はあまりやりたくない、という意識はあります。もちろん、かつてはそういったフォーマットに興味を持っていた時期もありましたが、今は同じものを2回繰り返す必要があんまりないと思っていて。そう考えるようになると、全体を通してひとまとまりにしたいという意識が強まっていったんです。なので、「怪電話」はドラムンベースのドロップパートがあり、間奏というか1サビっぽいものがあり、またドロップがあってサビっぽいものがあって、最後に大サビが来るという、大サビに向けて徐々に盛り上げていく大きな流れを大切にしたんです。最近はメロディよりも先に伝えたいメッセージや伝えたい世界観を大切にして、その外観を伝えるために全体を見通した展開を作ることが増えています。

ーー今、ドラムンベースというワードが出てきましたが、この楽曲からも伝わるクラブミュージック的なテイストというのは、もともとr-906さんのルーツにあるものなんでしょうか?

r-906:それはあると思います。今回はドラムンベースというジャンルと、EDMっていうんですかね……もっと厳密に言うと、サカナクションというバンドの楽曲なんですけれども、その2つをかなり意識しています。サビ前のドロップはドラムンベースの音作りを意識していて、全体を通しての展開は……すごくマニアックな話になるんですけど、サカナクションが2014年のライブだけでやった楽曲の展開を意識しているんです。

ーー言われて、確かにサカナクションとの共通点も見つけられるサウンドやアレンジだと感じました。

r-906:僕自身、かなり強く影響を受けていると思います。

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