さだまさし、普遍的な名曲に吹き込まれた新たな息吹 コンセプトの異なる4公演で楽しませるデビュー50周年ツアーレポ

 森鴎外の同名小説をモチーフにした「舞姫」では、エキゾチックなリズムと音像を背景に、さだがバイオリンを演奏。恋人を一途に待ち続ける女性を描いた歌詞の世界をしっかりと際立たせる。クラシック、フォーク、ワルツなどが織り交ざったこの曲は、さだの独創的な音楽観を端的に示す楽曲の一つ。この日のライブではクラシカルな要素が色濃かったが、彼の音楽性はきわめてハイブリッドなのだと思う。

 さだまさしのライブのもう一つの魅力は、MCだ。「とにかくトークが長い」という話を聞いたことがある方も多いと思うが、その最大の聴きどころは「ひとネタ、25分」(さだ)という、まるで落語のようなネタ。この日は「親父の一番長い日 誕生秘話」「エレクトーン『ハイ!』事件」などを披露。『さだまさしトークベスト』(CD)にも収録されている定番ネタだが、観客は笑い声を発しながら、楽しそうに聴き入っている。その様子はまるで、演芸場に通い「お、今日は『芝浜』か。いいねえ」とつぶやいている落語ファンのよう。言うまでもなく、こんな話芸を持った“音楽家”は他にいない。

 ニューアルバム『なつかしい未来』の楽曲も、心に残った。特に印象的だったのは、「私の小さな歌」。この日、客席に来ていたギタリスト・石川鷹彦のギターを弾きながら、さだは故郷の長崎の風景、様々な思いを抱えながら歌い続けてきた人生を描き出す。デビュー50周年を記念したツアーで〈未来へ届く歌を尋ね尋ねて/明日も生きようと思う〉というフレーズを聴けたことは、ファンにとって、そして、さだ自身にとっても大きな意味があったと思う。

 アンコールの「虹 〜ヒーロー〜」で〈Yes, I'm a singer〉と力強く歌い上げたさだ。9月からも同ツアーは続き、来春には今回の“一夜”〜“四夜”の再演も決定。「今回のツアーの良くなかった部分を入れ替えて、みなさんに楽しんでもらえるステージを目指します」(さだ)と飽くなき向上心と追求心を持ち、さだはステージに立ち続ける。50年を迎えても、まだ旅の途中。その姿勢こそが、さだまさしの凄さなのだと改めて思い知らされた。

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